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バドミントン ~2人の神童~  作者: ルーファス
共通ルート最終章:県予選大会決勝編
84/136

第84話:そんなに須藤君とシたいんですか?

 いよいよ共通ルートの最終章です。

 「17-17!!」


 彩花と静香。互いに黒衣に呑まれた者同士の、互いに天賦の才を宿す者同士の、両者互角の壮絶な死闘。

 どれだけ彩花が突き放そうとしても、静香は決してそれを許さない。

 

 「18-18!!」


 何度リードを奪われようとも、静香は何度だって彩花に食らいついていく。


 「19-19!!」


 この永遠に終わる事のないのではないかと、15000人もの観客たちが…そしてテレビで観戦している東海地方の人々が、思わず錯覚してしまう程の、壮絶な死闘だったのだが。


 「20-19!!」


 それでもスポーツである以上は、いつか必ず決着の時が訪れるのだ。

 彩花の維綱が静香のコートに突き刺さり、遂に彩花がマッチポイントを迎えたのである。

 互いに息を切らしながら、彩花が放った渾身の一撃は…。


 「ロケットサーブ!?朝比奈に散々攻略されたばかりだろう!?何で今更!?」

 「藤崎の奴、ヤケになったのか!?」


 雄二と力也が驚愕の表情で、バンテリンドームナゴヤの天井ギリギリまで突き刺さろうかというシャトルを見つめていたのだった。

 彩花が平野中学校にいた頃に麗奈との試合でラーニングした、必殺のロケットサーブだ。

 それが急降下し、強烈なきりもみ回転が掛かりながら、静香のネットギリギリに突き刺さろうとしている。

 雄二が言っていたように、既にこの試合で静香に完全攻略されたばかりだというのに。

 そのロケットサーブを迎撃しようと、天照の構えを見せる静香だったのだが。


 「…んなっ!?」


 その瞬間、絶妙なタイミングで静香の目に入った、バンテリンドームナゴヤの照明の光。

 それでも静香は天照でロケットサーブを迎撃するも…シャトルは彩花のコートのラインギリギリの、無情にも外側へと突き刺さった。


 「アウト!!ゲーム、聖ルミナス女学園1年、藤崎彩花!!21-19!!チェンジコート!!」


 照明の光が静香の目に一瞬入った事で、天照の精度が落ちてしまったのだ。

 あまりにも呆気無い幕切れだったが、それでも観客たちは2人に大歓声を浴びせる。

 両者互角の壮絶な死闘だったが、それでもファーストゲームを制したのは彩花の方だった。


 「成程な、照明の光を目くらましに利用したのか。試合巧者だな、藤崎彩花。だがこれで終わる朝比奈静香ではあるまい。」


 とても感心した笑顔で、2人のファーストゲームを見届けたダクネス。

 2人共、今すぐに欧米諸国でプロ入りしたとしても、間違いなく通用する程の選手だ。

 それ程の死闘を、この2人はダクネスに見せてくれたのだ。

 パリオリンピックの開会式が来週に迫る忙しい中で、わざわざ日本まで足を運んだ甲斐があったという物だ。

 これは是非とも2人を、大会終了後にシュバルツハーケンにスカウトしなければ。


 「最初に唾を付けたのは私だからな?(´・ω・`)」

 「私まだ何も言ってないよ?」


 ダクネスと亜弥乃がしょーもない言い争いをする最中、互いに息を切らしながら、彩花と静香は互いに真剣な表情で見つめ合っていた。

 まさか自力で五感を取り戻されるとは思ってもみなかったが、それでも彩花は何とか静香からファーストゲームをもぎ取る事が出来た。

 続くセカンドゲームも、この調子で…。

 

 「随分と小賢しいバドミントンをするんですね。彩花ちゃん。」


 そんな彩花の安堵をぶち壊すかのように、彩花に対して妖艶な笑顔を見せる静香。

 まさか照明の光を目くらましに使われるとは思っても見なかったが、それでも簡単に勝てる相手などとは最初から思ってなどいない。

 流石は『神童』彩花。今まで戦ってきた中でも最強の選手だ。

 それ程の選手を相手に、こうして公式の舞台で全力で戦える事を…静香の全力に彩花が追従してくれている事を、静香は心の底から喜んでいるのだ。


 「そんなに必死になっちゃって…そんなに須藤君とシたいんですか?」

 「当たり前だよ、静香ちゃん。」

 「私もですよ。」


 だからこそ、もう1人の『神童』である隼人とも、静香は是非とも戦いたくなってしまったのである。

 中学時代は校長の身勝手なエゴのせいで強制的にダブルスに出場させられ、シングルスの隼人とは戦う機会も、試合を観戦する機会さえも与えられなかったのだが…今は違う。

 この準決勝で彩花に勝てば、静香は決勝という大舞台で隼人と戦う事が出来るのだ。


 「俄然、須藤君ともシたくなってしまいました…!!ふひ、ふひひ、ふひひひひ…!!」

 「そんな事は…絶対にさせないんだから…!!」


 互いに息を切らしながら、ベンチへと戻る彩花と静香。


 「よくやったわね彩花。朝比奈さんからファーストゲームを取れたのは大きいわよ。」


 そんな彩花に六花が穏やかな笑顔で、レモンのハチミツ漬けが入ったプラスチックのケースとタオルを手渡したのだった。

 レモンに含まれる豊富なビタミンとクエン酸、そしてハチミツで適度に軽減されたレモンの酸っぱさが、静香との死闘によって疲弊した彩花の身体を癒してくれる。

 

 「朝比奈さんの黒衣には、びっくりしたね。私も正直びっくりしたわ。」

 「うん。びっくりした。」

 「だけど黒衣だって万能の力という訳じゃないわよ?むしろ朝比奈さんにとっては相性が悪い力だとさえ言えるわ。」


 六花は彩花の肩を優しく抱き寄せながら、自らの持論を彩花に説明したのだった。

 静香のプレースタイルは隼人と同じ、全対応型のオールラウンダーだ。

 それに加えて夢幻一刀流の一部の技を習得し、上手くバドミントンと融合させる事に成功している。

 さらに静香の強味は、どんな状況でも冷静さを見失わない心の強さと、持ち前の優れた状況判断力だ。

 それは彩花がオッサンに拉致された51話において、六花が目の前で静香に見せつけられた事でもあり、六花も正直驚かされた物だ。


 だが黒衣の暴虐的な力と、黒衣を纏う事によって静香にもたらされる強烈な破壊衝動は、静香の最大の持ち味である冷静さと状況判断力を殺してしまう。

 恐らく静香もそれは理解しているとは思うが、それでも彩花の五感剥奪から自らを守る為に、分かった上で敢えて黒衣を纏ったのだろう。

 実際に静香は黒衣を纏っている間は、一度も彩花に五感を奪われていないのだから。


 逆に彩花の最大の持ち味は、16話で隼人との試合で見せつけたような、どんな相手にもしつこくまとわりつく『ねちっこさ』だ。

 そして彩花は静香とは真逆で、いちいちあ~だこ~だ考えて試合をするようなタイプではない。言わば本能でバドミントンをしていると言っても過言ではないのだ。

 それ故に彩花独自の持ち味は、黒衣の暴虐的な力と絶妙に噛み合っている。

 つまりは互いに黒衣を纏い続けている以上は、持久戦に持ち込めば持ち込む程、彩花が有利になるという訳だ。

 

 スコア上も試合内容も、全くの互角。

 だが、この試合を支配しているのは…間違いなく彩花の方なのだ。

 

 「この試合、勝つわよ。彩花。」

 「当たり前だよ。私は決勝戦でハヤト君に勝って、ハヤト君を私たちの家族にするんだから…!!」

 「彩花…。」

 「だから私は、静香ちゃんに勝つ…!!絶対に勝たなきゃいけないんだから!!」


 目の前でベンチに座ってバナナを食べている静香を、決意に満ちた表情で見据える彩花。

 そして静香もまた、彩花と六花の事を、じっ…と見つめていたのだった。


 (いいなぁ…彩花ちゃんには、藤崎コーチが傍にいてくれて…いいなぁ…。)


 恐らく六花は、自分と黒衣の相性が最悪だという事を、彩花に説明しているのだろう。

 そんな事は静香とて、最初から分かっていた事だ。

 分かった上で彩花の五感剥奪から自らを守る為に、敢えて黒衣を纏ったのだから。

 バナナを完食した静香は、自らのクーラーボックスの中にバナナの皮を放り込んだ。

 自分で出したゴミは、自分で処理しないといけない。

 黒衣に呑まれてもなお、静香は真面目で誠実な子だ。


 バナナはエネルギー源である糖質を多く含むだけでなく、疲労回復に絶大な効果があるビタミンやミネラルも摂る事が出来、消化吸収も良い。さらに抗酸化作用も期待出来るのだ。

 そしてバナナの食べ応えのある果肉は、小腹を満たすのにも適している。

 バドミントンのような長期戦になりやすいスポーツをする上で、特に適している食材だと言えるだろう。


 そんな静香に対して、愛美たち聖ルミナス女学園バドミントン部の部員たちは、思わず声を掛けるのを躊躇ってしまっていた。

 黒衣に呑まれてしまった今の静香に対して、何て声を掛ければいいのか…もう分からなくなってしまったからだ。

 ただただ心配そうな表情で、愛美たちは静香を見つめていたのだが。


 「…ったく、おい朝比奈!!」


 ただ1人、黒メガネだけは、そんな静香に対してズケズケと苦言を呈しにやってきたのだった。


 「このままじゃ勝てへんぞ!!分かっとるやろな!?」


 そう、互いに黒衣を纏っている以上、このままでは静香は彩花に勝てない。

 黒衣との相性が最悪な静香とは対称的に、絶妙に黒衣と噛み合っている彩花。

 それを黒メガネは、六花や静香と同様に理解しているのだ。

 伊達に世界を舞台に活躍した経験があるだけあって、『戦術眼に関しては』黒メガネは六花にも劣らない物を持っていたのだが…。

 次の瞬間、黒メガネは静香の耳元で、誰にも…特に審判にだけは絶対に聞かれないように、小声でとんでもない指示を出してしまうのである。


 「…藤崎の顔面に思い切り維綱をぶつけてやれ。」


 そう、まともに戦って勝てないのであれば、まともに戦わなければいい。

 事故を装って彩花を負傷させて、試合続行不可能にしろと…そんな愚かな指示を黒メガネは静香に下したのだ。

 だが、この黒メガネの愚かな言動が、最終的に自らの破滅を招いてしまう事になるのである…。


 「古賀監督。貴方馬鹿ですか?」

 「何やとコラァ!?」


 呆れたように深く溜め息をつきながら、静香は黒メガネを侮蔑したのだった。

 前々から馬鹿だ馬鹿だ馬鹿だ馬鹿だ馬鹿だと思ってはいたが、まさかここまで馬鹿だったとは。


 「私たちはバドミントンをやっているのですよ?バドミントンは紳士のスポーツです。彩花ちゃんを傷つけて一体どうするのですか。」

 「お前は何を甘えた事を言っとるんや!?勝つ為には相手を殺す位の覚悟で…!!」

 「それに。」


 黒衣を纏った静香が、鋭い眼光で黒メガネを威圧する。

 その静香の16歳の少女の物とは到底思えないような威圧感に、思わず黒メガネは一瞬たじろいてしまったのだが。


 「今の古賀監督の暴言…テレビ局の方に撮られてますよ。テレビカメラに取りつけられた指向性マイクでね。」

 「な、何やと!?」


 慌てて黒メガネが振り向くと、果たしてそこにいたのは、肩に抱えたテレビカメラを黒メガネに向けている、エ~テレのスタッフだ。

 今、静香は、何と言った?

 テレビカメラに、指向性マイクが取り付けられている?

 黒メガネの表情が、一転して青ざめてしまったのだった。

 

 指向性マイクとは、例えどんな雑音の中においてでも、特定の方角の音声を的確に拾う事が出来るマイクの事だ。

 そしてバレーボールの国際試合をテレビでよく観るという読者の方がいるのなら、テクニカルタイムアウトの際に監督が選手たちに対して檄を飛ばすシーンを、よく御覧になっている事だろう。

 今の状況は、まさにそれだ。

 エ~テレのスタッフが番組を盛り上げる為に、こうしてインターバルでのベンチの様子を生中継しているのだ。


 黒メガネもそれは事前に知らされてはいたのだが…まさかテレビ局に撮られないように静香の耳元で小声で囁いた今の暴言までもが、指向性マイクで拾われてしまっていたとは。

 今の指向性マイクは極めて高性能に設計されており、どれだけの大騒音の中で、どれだけ小声で囁こうが、絶対に聞き逃さない。極めて精密の精度でクリアに音声を拾う事が出来るのだ。

 そしてそれによって今の黒メガネの暴言が、あっという間に東海地方のお茶の間に流れてしまったという訳だ。


 そしてインターネットというのは、本当に恐ろしい物だ。

 今回の試合が生中継されているのは東海地方のみなのだが、今の場面が東海地方の有志たちによって、パソコンで1分も掛からずに迅速的確に動画編集され、瞬く間にSNSで全国に…いいや、全世界に大拡散されてしまった。

 当然、スマホでSNSの通知を見たバンテリンドームナゴヤの客たちも、まさかの事態に大騒ぎになってしまい…。


 「え?維綱を顔面にぶつけろって…どういう事?」

 「維綱って朝比奈の、あの光るスマッシュの事だよな?」

 「それを藤崎の顔面にぶつけろって指示したのかよ!?何だあの監督!?」

 「おい!!明らかな暴力行為の強要だろうが!!審判!!早く古賀監督を退場処分にしろよ!!」

 

 当たり前の話だが、黒メガネに対しての大ブーイングが盛大に行われたのだった。

 中にはスマホで110番通報し、黒メガネを暴力行為の強要で逮捕するべきだと言い出す者たちさえも現れる始末だ。

 唖然とする彩花と六花を尻目に、慌てて審判が大会運営スタッフの元に駆け寄り、何やらSNSの画面が映し出されたスマホを手に、真剣な表情で話し合っている。

 その話し合いは即座に終了し、審判が怒りの表情で黒メガネの元に駆け寄り…そして胸元のポケットからブラックカードを掲げたのだった。

 その瞬間、バンテリンドームナゴヤが、物凄い大騒ぎになってしまう。


 「古賀監督!!朝比奈選手と藤崎選手の人権を著しく侵害する、極めて悪質な発言が確認された為、貴方を即座に退場処分とします!!」

 「な、何やと!?」


 青ざめた表情で、掲げられたブラックカードを見せつけられる黒メガネ。

 バドミントンにおいて審判は試合中にイエロー、レッド、ブラックの3種類のカードを携帯しており、その中で最も重いのがブラックカードだ。


 イエローは「注意」で、特に何のペナルティも無い。

 レッドは「フォルト」で、反則行為によるペナルティで対戦相手への1点追加。

 そしてブラックは…「即失格、一発退場」だ。


 それどころか極めて悪質だと判断された場合は、大会への永久追放や無期限の資格はく奪処分さえも有り得る、極めて重い処分なのだ。

 今回、黒メガネは、彩花の顔面に維綱をぶつける事を静香に命じるという、とんでもない爆弾発言をやらかした。

 それがお茶の間に生中継されたばかりか、SNS上で該当動画が全世界に拡散されてしまったのだ。

 ブラックカード提示は至極当然であり、最早何も言い逃れは出来ないだろう。


 「お、おい!!ふざけるなや!!維綱を顔面に当てろっていうのはな!!聖ルミナス用語で『相手の顔面の高さを目印に維綱を放て』という意味で言ったんや!?何も本気で維綱を顔面に当てろという意味で言った訳や無いんやぞ!?」


 黒メガネが悪あがきの弁明を審判に行うものの、当然そんな無茶苦茶な言い分が通じる訳が無い。

 あっという間に黒メガネは、駆けつけてきたバンテリンドームナゴヤの警備スタッフに、会場の外へと強制連行されてしまったのだった…。

 その様子を静香がベンチに座りながら、侮蔑の表情で見つめている。


 「さようなら、古賀監督。もう二度とお会いする事は無いでしょうが、どうか達者で暮らしなさいな。」

 「や、止めろ!!離せ!!だからお前らは甘いんや!!これ位で暴言だとか生温い事を言いよるから、この国のバドミントンは世界を舞台に結果を残せていないんやぞ!?相手を殺す位の覚悟で試合に臨まんで、一体どないするんやぁっ!?」


 ずるずる、ずるずると、無様な醜態を晒しながら警備員に連行される黒メガネ。

 その様子を沙也加が、怒りの形相で睨みつけていたのだった。


 「何なんだ、あの監督は!?対戦相手の顔面に維綱をぶつけろだと!?教え子の静香に対して、一体何を馬鹿な事を言ってるんだぁっ!?」

 「お、お母さん…!!」


 怒りに震える沙也加を、佐那が心配そうな表情で見つめている。

 こんな…こんな最低な監督が、今の今まで静香の事を指導していたというのか。

 こんな最低な監督を聖ルミナス女学園の学園長は、事情は分からないが今まで解任せずに雇用し続けていたというのか。

 そして憤りを感じているのは、ダクネスと亜弥乃、内香も同じだ。


 「おい、亜弥乃。」

 「何?」

 「日本のスポーツというのは、ここまで腐っている物なのか?」

 「そうだよ。」


 怒りと悲しみが入り混じった声色で、亜弥乃はダクネスに即答したのだった。


 「高校時代の監督からの暴力行為…これが私が黒衣に呑まれた元凶だよ。」

 「そうか。」

 「だから私は地元の社会人チームからの誘いを断って、お母さんに勧められて一緒にデンマークに行って、ヘリグライダーに入団したの。そしてデンマークに帰化してデンマーク人になった。日本代表として呼ばれないようにする為に。」

 「…そうか。」

 「当時の私は裏切り者の日本人だとか、ネットで散々叩かれたけどさ…!!日本のスポーツってあの頃から、全然何も変わってないじゃん!!」


 今もなお、様々な競技において暴力行為の報道が後を絶たない、愚かな日本のスポーツ。

 さらに今もこうして、静香は黒メガネから愚かな暴力行為を強要される始末だ。

 この国のスポーツというのは、どうしていつもいつも…!!

 そんな憤りを、亜弥乃はダクネスに対して顕わにしていたのだった。

 まるでダクネスに対して、助けを求めるかのように。 


 「これじゃあ彩花ちゃんも静香ちゃんも、可哀想だよ!!」


 こうして黒メガネが無様に退場してしまったバンテリンドームナゴヤではあるが、それでも時間は待ってくれない。

 彩花と静香に与えられた2分間のインターバルが終了し、高台に上がった審判が彩花と静香に「おいでおいで」をしたのだった。

 ベンチから立ち上がり、威風堂々とコートへと向かう、彩花と静香。

 ファーストゲームは彩花が奪ったが、果たしてセカンドゲームを獲るのは彩花なのか、それとも静香なのか。

 彩花がセカンドゲームも連取して、決勝進出とインターハイ出場を決めるのか。

 それとも静香がセカンドゲームを奪い、ファイナルゲームへと持ち込むのか。


 「セカンドゲーム、ラブオール!!聖ルミナス女学園1年、朝比奈静香、ツーサーブ!!」

 「さあ、彩花ちゃん…!!シましょう…!?」

 「…静香ちゃん…!!」


 その壮絶な死闘の行方を15000人もの大観衆が、固唾を飲んで見守っていたのだった。

 黒メガネは本当クズだな。

 有千夏さんよりもクズだな。

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