10. 罪悪感郵便局
夕方、原付で初めての郵便局のアルバイトに向かっていた。
遅刻していたのでその道すがらにポストの中身を回収しながら向かった。
各ポストの中にはフィルムで個別にラッピングされた封筒やはがきが入っていた。
フィルムにはポストごとに通し番号が降られていた。
たしかに郵便物の紛失というのは許されないので、通し番号は理にかなっている、と思った。
同時に各ポストの通し番号がすべてそろっているか気になった。
とりあえず郵便局に向かうと、そこには誰もいなかった。
当然、郵便局は夕方5時を過ぎれば閉まっている。
私は罪悪感に苛まれた。
◇
途方にくれて2階のベランダから中学校を眺めている。
中学校では夕闇の中、ネオンの明かりの元、体育祭をしていた。
「こんな時期でしたか」
と私がいった。
「そうですね」
と隣の見知らぬおじいさんが言った。
◇
外に出ると、ふと自分が行くはずだったのは、別の郵便局であった気がしてきた。
道の向こう側に別会社の郵便局があるのだ。
私のアルバイト先はそちらのだったのではないか。
だとしたら、違う郵便会社の郵便物を取ってきてしまった。
私はまたもや途方にくれた。
ひとまず先ほどまでいた郵便局に戻り、待合席で郵便物の通し番号を確認した。
「そうじゃない、そうじゃない」
と背後から声がした。
この郵便局の正規社員らしき男が帰ってきたところだった。
私を新人社員と間違えているようだ。
「ここをこう、こうして」
なにやら私の作業が間違っていたらしく、その男が教えてくれるのだが、私は戸惑うばかりである。
すると、さらに2人の社員が帰ってきた。
私を指導してきた男はその二人に歩み寄り、一言二言言葉を交わした後、私の方に戻ってきた。
「がんばれよ」
と男は言い、私の脇を抜けてフロアの奥へ消えた。
私は再度外に出た。
そういえば、アルバイトの開始時間は朝9時のはずであった。外は暗く、もう夕方6時は過ぎているだろう。
初日にひどい大遅刻をしてしまった。
いまから向かいの郵便局に行くことはできない。
逃げ出したい。
そこで、目が覚めた。