異世界
俺は、浮く感覚から、ゆくっりと落ちる感覚に変わったのを感じ、そっと目を開けた。
「おわっ……!?」
そこはまさしく異世界だったのだが、俺は何故か空中に居たのだ。
「こ、ここが異世界…」
頭上を見ると、先ほどの青い魔法陣がゆっくりと回り、まるでエレベーターのように俺を地上へと下ろしている。
(これもエルテラの力…)
俺は、今の所危険はないと判断し、空中に居る内に周囲を見渡すことにした。
「おぉぉ!!これは凄い景色だ!」
周囲には、大自然が広がっていて、大きく連なった山に、広大な森、俺の真下には湖も見えた。
地平線を見ながら、前世に見たどの景色よりも心躍る光景に、俺は思わず鳥肌がたった。
「これが俺の第二の人生か…。っとその前に…確かゲームやアニメでは街や村があるはずだけど……」
俺は、どんどん高度が下がる中、どうにか町や、人がいそうな場所は無いかと目を凝らしたが、残念ながらそれらしい所は見つけられなかった。
「まぁ、とりあえず町はゆっくりと探すとして……」
足元を見ると、すぐそばまで湖が迫って来ていた。
(薄々分かってはいたけど…転生初っ端からこの仕打ちはひどくないかエルテラ……)
「はあぁ~~」
俺が、大きなため息を吐くと同時にエルテラの魔法は解け、予想通り俺は湖に落ちたのだった。
それから岸まで泳ぎ切り、ようやく地に足をつける事が出来た。
「ったく、あの女神もしかしてわざとやってるんじゃないだろうな…」
俺は、愚痴をこぼしながら装備を外し、服を脱いで絞った。
「あーあ、びしょびしょだよ……」
(風邪とかひいても嫌だし、ここで乾くまで待つか…)
俺は、その辺に落ちていた石と、丁度いい長さの枝を3本拾って、短剣で形を整えてから2本を石で地面に打ち付け、簡易的な物干し台を作った。
「後は、この枝に俺の服をさげてっと…よし!」
(さて、服が乾く間に、色々試してみるか!)
俺は早速、女神に言われた『サーチ』について詳しく調べる事にした。
(確か唱えればいいんだよな…)
「サーチ。」
半信半疑ながらも唱えると、俺の脳内に何個かのアプリアイコンのようなものが現れた。
(この見るからに分かりやすいマークのアイコン達は、全部エルテラのオリジナルなのか…?)
そして、そのアイコンに意識を向けると、選んだり開いたりする事ができ、簡単に言えばもの凄く感覚的に使えるようになっていた。
「もうあの女神がバカなのか天才なのか分かんなくなってきた…」
操作は問題ないと判断した俺は、先にスキルを確認した。
「こ、これは……」
そこには、スキルの名前と効果、発動と解除の切り替えなど、これまた簡単に使えるようになっていた。
俺は試しに、いくつかある中から気になるスキルを発動してみることにした。
(まずは…これだな、えっとスキル名が【ドラゴンズハート】で、効果は精神及び魂への攻撃無効……そして、ドラゴンの如き冷酷無比な心となるか…)
俺は、冷酷無比と言う説明に、少し戸惑ったが、とりあえず試してみた。
「スキル【ドラゴンズハート】」
発動した瞬間、俺の心に固く冷たい鎖が巻き付いたのを感じた。
「これがドラゴンの心なのか……」
俺の心はまるで鉄のように冷たく、そこには人道の欠片すらもないような、今の状態ならどんな残酷で惨たらしい事であっても顔色一つ変えることなくやれる様な気がした。
(…………)
「解除。」
俺は【ドラゴンズハート】を解除した後、深呼吸をした。
(ドラゴンか……もしこの世界に居るのなら関わるのはよしておこう。)
俺は気を取り直して、もう一つ気になるスキルを試す事にした。
(次は…これだな【ボディオブフォートレス】効果は…身体超強化か!よし試してみよう!)
「スキル!【ボディオブフォートレス】」
発動と同時に、体中に一瞬の光が走ると体中が軽くなったのを感じた。
(体が凄く軽い…よし、軽く木でも……っと、もし痛かったら嫌だし、ジャンプで確かめてみるか!)
俺は少し膝を曲げ、跳んでみた。
「おぉー!!これは良い!」
軽く跳んだつもりだったが、予想以上の高さまで跳んでしまった。
(これは楽しい!!)
それから少しだけ遊びながらも、パンチの威力や、体の強度などを実験し、このスキルのコツはどうにか掴めたのだった。
「はぁ~、なかなか楽しかったなぁ~」
俺は草の上に寝ころびながら、しばしの満足感に浸った後、スキルを解除し体を起こした。
「さて、もうすぐ服も乾くだろうし、もう一つ試しておくか!」
そのまま立ち上がり、大きく伸びをしてからスキルを確認した。
(えぇーっと…【リジェクションウォール】効果は、発動者を中心に展開される防御結界で、伸縮自在。っと…)
「よし、スキル【リジェクションウォール】」
すると、俺が思ってた通りに、ドーム状に結界が生成された。
「これが防御結界か…次は……」
俺は伸縮をイメージしながら、どこまで広げられるか試してみた。
(けっこう広がる…っ、これ以上は無理か…)
「よし、解除!」
スキルを解除し、俺は服を乾かしている場所まで戻る事にした。




