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無銘の世界~personaluniverse~  作者: ネツアッハ=ソフ
世界会談編
51/168

1、世界会談

 ある日の昼下がり、オーフィスの王城にて・・・。国王、イリオ=ネロ=オーフィスが執務室で書類の整理をしていた頃の事・・・。何時もより多めの書類に頭を(なや)ませていたその頃・・・。


 ———ちなみに、書類の内容は魔物の大量発生と活発化に関する物だ。


 突如、ドアをノックする音が響いた。かなり(あせ)っているのか、荒々しいノックだ。その音に、流石の国王も驚いて思わず書類をばさりと机から落とす。山になっていた書類が机から崩れ落ちた。


 ・・・ごほんっと気を取り直す。


「・・・入れ」


「はっ!!!」


 入ってきたのは、まだ年若い少年の騎士だった。少年の騎士はその手に一通の封筒(ふうとう)を持っている。その封筒に視線を()りながら、イリオは少年騎士に問う。


「して、何の用だ?その封筒が関係する事か?」


「はっ‼神王からの緊急の封書にございます!!!」


「っ、何だと⁉」


 神王から緊急の封書———その言葉に、イリオは(わず)かに腰を浮かす。神王・・・神大陸の神々の王。


 その神王からの緊急の封書だというのだ。只事では無い。


 封筒を受け取ると、その封蝋(ふうろう)に刻まれた印を確認した。・・・確かに、間違いなく神王を示す印だ。


 封書を開封し、中を確認する。中は一通の手紙だった。・・・その手紙の内容を読み、やがてイリオは目を大きく見開いた。その表情は目一杯の驚愕に満ちている。


 イリオは少年騎士の方を見ると、焦燥を(にじ)ませた表情で告げる。


「シリウス=エルピスに王城に来るよう告げろ‼今、すぐにだ!!!」


「は、はっ!!!」


 少年騎士は執務室から慌てて出ていく。イリオは目元を指でほぐしながら、深く溜息を吐いた。


「・・・・・・シリウス=エルピス、あやつは一体・・・」


 イリオのその顔には重度の疲労が浮かんでいた。再び、執務室に深い深い溜息が響く。


          ・・・・・・・・・


 穏やかな昼下がり。屋敷のテラスに僕とリーナは居た。


 ・・・さて、今日は特に用事もなく、僕はリーナと共にのんびりと紅茶を飲んでいた。偶にはこんな風にのんびりと過ごすのも悪くない。そう思っていたのだが・・・・・・。


 こんっこんっとドアをノックする音が響く。入室を促すと、メイドのマーキュリーが入ってきた。


 まあ、今この屋敷には僕とリーナの他に、マーキュリー以外誰も居ないんだが。父さんは現在、エルピス伯爵領の屋敷に帰っている。何でも、領民が魔物の群れに襲撃を受けたらしい。


 ・・・本来、魔物が滅多に寄り付かない土地での襲撃だったとか。その為、討伐と調査の為に現在騎士団を率いて伯爵領の一角にある鉱山(こうざん)に向かっている。・・・まあ、それはともかく。


 マーキュリーは洗練された一礼をすると、用件を告げた。


「王城から使者(ししゃ)の方がいらっしゃっています。お通ししても?」


「・・・・・・使者?来て貰ってくれ」


「はい」


 ・・・やがて、その使者が僕達の前に姿を現した。年若い、少年の騎士だった。僕よりも二~三歳ほどは若いだろうか?童顔が目立つ幼い顔の騎士だ。恐らくは、騎士団の中でも新参だろう。


 緊張の為か、やたら表情が(かた)い。僕は思わず苦笑した。


 相手の緊張をほぐす為、僕は微笑みを浮かべて柔らかい口調で問い掛けた。


「・・・えっと、何の用事で来られたのでしょうか?」


「はい、陛下からの緊急の用事です。シリウス=エルピスに今すぐ王城に来るよう(おお)せつかってます」


「国王陛下から?」


「・・・はい」


 少年騎士は緊張した面持ちで頷いた。その表情は、相変わらず硬い。どうやら、こういう状況に全く慣れていないらしい。緊張で胃に穴が開きそうな顔をしている。大丈夫だろうか、この少年?


 ・・・僕は少し考えると、やがて頷いた。


「解りました、王城に行きましょう。あと、胃薬(いぐすり)はいりますか?」


「はい、助かります・・・・・・」


 少年騎士は礼を言い、マーキュリーから胃薬を受け取る。相当胃にダメージを受けているようだ。


 やはり、王宮騎士団の中でも新参だろうな・・・。この様子から考えて。


 僕はリーナの方に向くと、心配そうに見るリーナに僅かに笑みを向けて言った。


「じゃあリーナ、僕は行ってくるよ。留守(るす)は任せられるか?」


「・・・・・・うん、気を付けて・・・ムメイ」


 僕はリーナの頬を軽く()でると、少年騎士と共に王城へ向かった。


          ・・・・・・・・・


 ・・・そして、現在僕は玉座の間の大扉の前に来ている。少年騎士が大扉をノックする。


 直後、大扉の向こうから国王の厳粛(げんしゅく)な声が聞こえた。


「入れ」


 玉座の間の大扉が、重厚な音と共にゆっくりと開く。其処には国王の他に、クルト王子や王宮騎士団の皆が全員そろって居た。全員が重々しい雰囲気だ。


 玉座に座る国王の隣に王子が立ち、玉座の間の両端に王宮騎士団がずらっと並んでいる。かなりの緊張が僕にまで伝わってくるようだ。それほど全員の表情が硬い。何か、大事だろうか?


 僕はある程度の距離まで国王に近付くと、その場で跪いた。臣下の礼だ。


「シリウス=エルピス・・・参りました」


「うむ、よくぞ来たシリウスよ。・・・今日呼んだのは他でも無い、世界会談の開催が決定した」


「・・・世界会談、ですか?」


 僕は思わず、首を傾げる。世界会談・・・名前の通りだと、世界の首脳達が一堂に会して大規模な会談でもするのだろうか?それに、一体僕が呼ばれた理由とどう繋がるのだろうか?


 怪訝な顔をする僕に、国王は僅かに苦笑した。見ると、王子も苦笑している。どうやら二人は事情を理解しているようだ。騎士団の皆は、どうやら知らなかったらしい。全員目を見開いている。


「・・・今から理由も含めて全て話す。だからそう訝しげな顔をするでない」


「・・・・・・はい」


 僕は再び、頭を深く垂れた。そして、国王の話を黙って聞いた。


「世界会談とは、ウロボロスの世界を統べる八つの王座に()く者達が集う会談だ。三人の人類の王に魔族達を統べる魔王、神々を統べる神王に幻想種を統べる竜王、そして二体の巨人の王。それ等が集い、世界の在り方や今後を話し合う・・・それが世界会談だ」


 つまり、この世界を統べる王達の集う大会議を世界会談と言うらしい。そして、王達の決定と共に世界の在り方が左右されるのである。それは、つまり文字通りの意味だ。


 世界会談により決定された事は、例え世界の根幹(こんかん)を変革するような事でも可能となる。要は文字通りの意味で世界の今後を決定する重要な会議だ。


 ・・・世界の根幹を変革する規模の力の行使は八柱の王の同意によって成される。


 それは、この世界の開闢(かいびゃく)より定められた絶対法則だ。例え、神王であっても犯す事は出来ない。


 そう、例え全知全能の神王であっても不可能なのだ・・・。


 ・・・そして、今回その世界会談の開催が神王により発表されたという。それはつまり、世界の今後を左右しかねない何かが、或いはそれもやむない何かがあったという事だろう。


 僕の推論(すいろん)を裏付けるように、国王は()げた。


「・・・そして、今回の世界会談が開催される際に、神王からシリウス=エルピスを同席するよう手紙には書かれていたのだ」


「・・・・・・っ!!?」


 僕は思わず、息を呑んで愕然とした。それは王宮騎士団の全員も同じだったらしく、皆が目を見開いて愕然とした様子でざわついていた。中には、あからさまに動揺(どうよう)する者も居た。


 それを、国王は一つ柏手を打つ事で落ち着かせた。


「全員落ち着いたか?・・・してシリウスよ、そちに何か心当たりでもないか?」


「そう言われましても、特には・・・・・・・・・・・・あっ」


 少し考えて、僕の頭にある記憶が(よぎ)った。そうだ、あの時確か・・・。


「何か思い出したか?」


「・・・はい。確か僕が神山に登った際、山の神が僕を差して神王のお気に入りと言っていました」


「・・・・・・・・・・・・何だと?」


 国王が怪訝そうに顔を(ゆが)め、疑問そうな声を上げた。しんっと玉座の間が静まり返る。全員が僕の言葉の意味を理解しかねるようだ。まあ、それも当然だろう。


「神王の・・・お気に入り・・・?」


「シリウス殿が・・・?」


「あの、神王の・・・?」


 全員、口々に疑問の声を(ささや)き合っている。どうやらかなり信じがたい発言だったらしい。


 ・・・まあ、やはり当然の話だ。


「・・・・・・まあ、僕自身よく理解していない事なんですが」


「・・・と、言うと?」


 僕の発言に、国王が怪訝そうに問う。僕も良く理解していない為、僅かにためらいながら言った。


「はい、僕自身神王とは会った事すら無いのです。少なくとも、僕自身会った覚えがありません」


「・・・ふむ、そうか。しかし、主催者である神王が指名して来たのだ。何か理由があるのだろう」


 どうやら、僕も世界会談に参加する事は半ば決定しているらしい。僕はこっそり溜息を吐いた。


 どうも、僕はこの世界に転生してから奇妙(きみょう)な縁が出来やすい体質になっているようだ。この世界に転生した事自体もそうだが、この世界に転生してから奇縁に振り回されてばかりな気がする。


 古い魔女の血筋の息子として生まれ、片方の親は伯爵家の当主。その後、リーナと出会い、それが伯爵家の娘であり父の親しい友人だと言う。しかも、山賊から助けてすぐに好意を持たれる。


 ・・・その後、神山に登り山の神から修行を受け、神すらも倒すほどの力を手に入れた。


 山を下りてすぐ、リーナと再会しまたリーナを助ける事になる。更には助けてすぐに父と再会、伯爵家の息子として(むか)え入れられる。


 王都では王子にも気に入られ、ギルドでは登録していきなり金ランクだ。・・・何だこれ?


 僕は思わず、呆れ果てた。流石に出来過ぎている。ありえないくらい、合縁奇縁(あいえんきえん)だ。


「・・・・・・・・・・・・」


 憮然(ぶぜん)とした表情で黙り込む僕に、国王は苦笑した。


「まあ良い。これから一ヶ月後に世界会議が始まる故、ゆっくりと準備をするが良い」


 そう言って、国王は困ったように笑った。僕はそっと溜息を吐き、最後に国王に問う。


「・・・えっと、世界会議の場所は何処ですか?別の大陸ですか?」


「いや。此処より遥か上空、天宮(てんきゅう)と呼ばれる人造衛星だ」


 それを聞いて、僕は一瞬思考が停止した。思考が復帰するまでおよそ数秒間・・・。


 直後、僕は珍しくも大声で愕然とした声を張り上げる。


「はあっ!!!???」


 人造衛星って、いきなり世界観(せかいかん)ががらりと変わるような話だな、おいっ!!!

世界会談が始まります。場所は衛星軌道上、人造衛星”天宮”。

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