1-46 旅は姦し世は無情
おまたせしました
三人でやいのやいの言いながら物色ぶらり旅が始まりました。今期の流行はなんだの、アレはないだの、実は数年前のリバイバルだのと思い思いに喋ります。
服に靴に、カバンに小物に、いろいろと目の肥やしになりますね。ゲーム内の自分の手でかなり自由に作れるので、アイデアをいっぱい拾っておきましょう。
別にやるつもりはないですが、パチモン・海賊品とかも頑張ればできそうではあるんですよね。
『あの人気ブランドと同じ見た目で性能いい装備!』とか売れそうですが……まあ怒られますよね。多方から。
布の安定供給が確立されたら染色とかもできるようになるんですかね。流石にめんどうなのでありものを買いたいですが……あ、でも水と風の祝福かけられるか……場合によっては考えますかね。
うーん、流石に一人でやるには手が足りない感じが出てきましたね。祝福特盛りの自重なし装備作るときは一人でやるにしても、助け合える同業みたいな人がいた方が良さそうです。だれかいい人が見つかるといいのですが……。
なんて、絶賛開店休業中の私が悩んでも仕方がないですよね。名が売れているわけでもなく、立地も大通りから3本ほど外れた奥地ですし。現状ただの拠点兼作業場、といった感じですし。
静かでいいのですが、現実で実質部屋に引きこもっているようなものなのに、ゲーム内でも引きこもっているのはどうなのという気がしないでもありません。しかも体感で時間が倍。
まあ暇に任せて革鎧が完成したり、コウモリ素材でローブを新調したりもできたのですが……。
まだ実戦投入はしていないので、体感としての性能を今度試しに行かないとですね。
「ヘイヘイマヒルちゃーん、ご希望の寝具店だぜー?」
「へ?ああ、ごめん、ありがとう」
いつのまにかお店の前まで来ていたようです。せっかく一緒に遊びに来ているのですから、他のことに思考を飛ばすのは失礼ですね。
その後は、買う予定もない最新モデルのベッドの展示品で代わる代わる寝っ転がってみたり、掛け布団の手触りを比べてみたりして楽しみました。
羽毛布団ってやっぱり軽くて落ち着かないですね。私的にはもっと重さを感じれる方が好みです。
ノノがふざけて布団の上から乗っかってきたのですが、正直このぐらいでもいいというか……。ただ、布団越しの体温が暑苦しいのが難点です。霊体ぐらい冷えてくれるとこれからの季節ありがたいですね。
ハルカ、流石に二人分は重い。そして暑い。
いくつか試してしっくり来た枕と、それ用のデフォルメされた羊のキャラクターがプリントされたカバーを購入して、お店を出ます。お騒がせしました。
次はフードコートに向かってお昼ご飯になりました。
ちょうどお昼の時間とあって、なかなかの人口密度ですね。空いてる席は……お、ありました。
席に二人残してローテーションで各々が好きなものを注文しに行きます。しばらく待つと完成の知らせが来ました。
ノノはきつねうどん、ハルカは厚めのハンバーガー。私はーー
「いつもながら思うんじゃが」
「……それなに?」
なにって
「パスタパフェ」
私の目の前には、生クリームとフルーツがふんだんに盛られたスパゲティのプレートが。
フードコートの端っこの方で見かけてこれは、と思いつい注文してしまいました。
「そういうの好きよなマヒー」
「……チャレンジャー」
「思ったより美味しいよ?」
こういう時って日頃食べないものを注文したくなりませんか?一風変わったのとか見つけるとついいっちゃうんですよね。たまに大ハズレを引くこともありますが、そういうリスクも含めて楽しいというか。フードコートでの出費程度なら冒険するのもアリだと思うのですが。
あとノノは早く食べないと麺が伸びますよ?
意外と美味しくいただけた昼食を終え、少し駄弁ってお腹が落ち着いてからぶらり旅を再開です。
道中のいろいろなテナントを冷やかしながら行き着いた先は、ハルカがチェックしていたペットショップ。
小さなイヌネコが幼児の遊び場のような広場でわたわたと駆け回っているのを眺めたり、ケージからこちらをじっと見つめる鳥類とにらみ合ってみたりしました。
私的ハイライトはうさぎコーナーにいたミニうさぎ(大)という特価ペット。存在が矛盾している商品名がこうなるまでの経緯を思わせるというか……。ケージの中に鎮座する黒い毛玉はボスの風格さえ感じる堂々たるものでした。
ちなみに他のうさぎより値段の桁が二つほど少なかったです。一瞬衝動買いしそうになりました。強く生きるんですよ。
お次は眼下を走る車を眺めながら、渡り廊下を通って本屋さんのある棟へ移動します。雪はまだまだ止む気配無さそうですね。
入っているお店の雰囲気もだいぶ変わりましたね。
筆記用具専門店や絵の具の材料となる粉の専門店を覗いたりしながら、お目当ての店を目指します。
絵の具屋さんの陳列棚にずらりとグラデーション様に並んだ、色の粉末は圧巻でした。
「紙とインクの匂い……」
本屋が近づいてくると、ノノがつぶやきながら足早に向かって行きました。お待ちかねですね。
店はだいぶ広く、すでにノノはずんずかとどこかへ行ってしまったので、ハルカとも別れてそれぞれ本屋の中で別行動をする流れに。
あ、これ国語の教科書に載っていた作品ですね。タイトルに見覚えがあります。
そしてこっちは模試の小説で使われていたやつ。懐かしいですね。
いつもは電子書籍で読むのですが、こういう分厚いハードカバーの本をペラリペラと一頁ずつ読み進めるのも楽しいのかもしれませんね。今度ノノの家に遊びにいった時にでも試してみましょうか。
いつの間にやら1時間ほど経過し、メッセージで本屋の入り口に集合と連絡が来たので戻ります。
何冊か購入したのでしょう、ノノのカバンの重量感が増しています。少しホクホク顔ですね。可愛いなぁ。
その後は予算決めて、お互いに似合いそうな服を一着買ってきて着せあってのコーデ対決が勃発。
日頃自分が買わないような服を渡されるのが楽しいような恥ずかしいような。
ちなみに私はハルカから服をもらい、ノノに服をあげました。
ジーパンとか普段履かないので新鮮ですね。
ノノは小柄なので似合いそうな可愛いワンピをプレゼント。麦わら帽子とかあったら完全に避暑地の御令嬢といった感じですね。
優勝はハルカに殿様カツラを買ってきたノノ。どこにあったんですかそんなの。意外としっくりくるのがシュールで、しばらく思い出しただけで笑いがこみ上げてきそうです。
突発コーデ対決も終わり、時間もちょうどいいということで、電車に乗り我らが町の最寄駅へ帰ります。
「いやーおつかれ。楽しんでくれたかな?」
「もちろん」
「優勝もできたし」
「んふっ、アレは反則に近いでしょ」
「まさかあーくるとはにゃー。持って帰るけど次いつ使うんじゃろかアレ」
「大学で自己紹介の時とか?」
「完全にヤベー奴じゃんか」
「……きっと人気者になれる」
「あたしの眼を見て言ってごらんよノノっち」
「……じゃ」
自分の家の方向へダッシュするノノ。あ、逃げたましたね。
「マヒーはどう思う?」
カツラをかぶって真顔で問いかけてくるのほんとズルい。
「じゃ」
「このはくじょーものどもー」
当然私も足早に逃げます。
帰ってアプデの情報確認しないと。
次で一章が終わり……かな




