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【メーナの勉強ノート15】

11/30 くもりつづけていくせいそう

せんせい:リステル


 スパイラルアークⅡチームは大きな壁に立ち向かっている。

黒い森を抜けて荒野に出ると、敵機の大きさが容赦なくなった。

とんでもないサイズのボディに大量の装甲を積み、巨大な砲も積んでいる。

先日一度戦ってみたが、アイ達の式神が持つ火器ではほとんど効果がなかった。

近接だと通るのだが、通ったから倒せるという感じはしなかった。

痛痒を感じないとはこの事かと、リステルは歯噛みする。

反撃してくる敵機の火砲もミサイルも普通に危ない火力で、母艦にまで弾が飛んできて、これはダメだと諦めた。


 メーナは今日も美味しいおやつにありついてご機嫌だ。

アイ達と共にダイニングで待機中。

リーベがホットプレートという技術を開発した。

これはダイニングのテーブルに埋め込まれ、カバーを外すとそこが調理器具になるというもの。

「この黒い部分がとても熱くなってパンケーキを焼いてくれるのよ。絶対に触らないでね」

リーベは指を立ててアイ達とメーナに告げた。

リーベはいつも優しい笑顔で、あまり怖くないので注意したり、叱る能力は低い。

メーナなどは完全に怒られないと認識しているが、言うことを聞かないと痛い思いをしたりしたので、素直に聞くほうが得だと学んでいる。

 大人6人が座れる大きなテーブルの中央に、黒い鉄製のプレートが埋め込まれていて、少しだけ予熱したリーベはパンケーキのタネをお玉で丸く落とす。

じゅぅ

「わぁあ!!」

「いいにおい!!」

人数分の丸が描かれ、アイ達もメーナも大喜びだ。

アイ03がどうしても気になってプレートの温度を手をかざして感じようとする。

「アイ03あぶないよ!」

「大丈夫だよ、触らないから」

「ダメなんだよ!」

わいわいとそれだけで賑やかになる。

眼の前で焼かれるパンケーキは甘い匂いを漏らしてきた。

少し香ばしい匂いがしてきて、子どもたちの期待感が最大になる頃、すっとフライ返しで手際よくひっくり返すリーベ。

ぱちぱちぱちぱち!!

「リーベじょうず!!」

「おいしそぉ!!」

アイ達には褒められ、拍手はメーナも一緒にしている。

子どもたちが喜んでくれて、リーベもにっこりと笑顔になる。

メーナが頬を染めてニンマリしているのは、美味しいパンケーキがもうすぐ食べられるという期待だった。

焼き終わったら乗せるのと言ってリーベが準備している、小さくカットしたフルーツとバター、シロップの琥珀のゆらめき。

全てがキラキラと見えるのだった。

きっとおいしいよと。


 楽しくて美味しかったパンケーキを平らげ終える頃、リステルとマナミが降りてきてダイニングに来た。

いままで格納庫と操縦室を行き来していろいろ働いていたようだ。

「やっぱりルニーアが言うように最適に寄せていくのが、効率がいいんだと思うよ」

マナミは小難しそうな顔で呟いた。

リステルはちゃんと聞いてて答えながら入ってきた。

「それはそうなんだけどね‥‥せっかくここまで育ててきたコアユニットを切り替えるのも悔しいよね?」

リーベも会話に参加しながら、新しく大人の分のパンケーキを焼く。

「先々を見ればどこかでは精算するロスだもの、今変えて置けばこれ以上負債を増やさないですむわ」

リーベはこういった会話では、一番論理的で計算高い。

「そうだよねえ」

「そうなんだよねえ‥‥あ!パンケーキ?おいしそ!」

アイ達が席を開けてくれたので、リステルもマナミもうなずきながら席についた。

マナミは目ざとくおやつを発見して喜ぶ。

むむバニラの気配があるな?!などとまたグルメな知識をぶつぶつとこぼす。

おさきーと言ってダイニングを出ていくアイ達。

ごちそーさまぁとちゃんとそれぞれがリーベにお礼を言う。

メーナもおいしかった!とリーベに抱きついてからアイ達を追いかけた。

子どもたちはこれからグループに分かれてお手伝いをしに行くのだ。

メーナはアイ02と二人で第2格納庫の手入れだ。

羊たちのお世話はメーナの好きな手伝いの一つだった。




 新型の機体に順次乗り換えていく。

機体の総合的制御をしているコアユニットも新型に切り替わった。

アイ達から順番にメーナ、リステルと機種転換していく。

「‥‥なんだか重いよ」

メーナは突然大きくなり重くなった機体に戸惑う。

だれよりも同調レベルの高いメーナが一番機種転換で苦しむ。

自分の体と同じレベルで掌握し操っていたので、もう第二の体として認識していたのだ。

ある日目が覚めたら大人になっていたようなものだった。

ぼひゅ

しゅばっざしゅ!

甲板から飛び出して地を蹴ってホバー移動に切り替え加速していく。

「おぉ?ぬう?はぁあん?!」

操作する度に変な声を出すメーナ。

今ではアイ達と並んでツートップのメーナなので、早く慣れて実力を発揮してもらいたいリステル達が、最初に切り替えたのだった。

今はアイ達4人とメーナの5機で索敵に出ていた。

基本的に起伏の少ない荒野は、かなり遠くまで見渡せる。

力のかぎり重力に逆らってみるメーナ。

メネシスmkⅢと名付けた黄色い機体が高々と舞い上がる。

「おぉ??」

単純に脚力が車重の増加以上に上がり、フロートと言われる反重力装置の出力も上がっている。

「なんか上手く動く‥‥ついてくる」

メーナはいい感触を得た。

慣性は増えているが、出力がそれを感じさせない。

もれなくパワーアップしていた。

ずばしゅ!

一瞬だけ接地して進行方向を変えホバーで加速するメーナ。

その全高は80mほどになる。

少し前のメネシスmkⅡ後期型で全高は40mほどだったので、いっきに倍になったのだが重さを感じたのは動き出すまでだった。

『メーナダメ!もどって!』

突然マナミの警告が入った。

『アイちゃんも戻るのよ!』

追ってリーベの通信がアイ達小隊にも帰還の指示を出した。

ドドドォオン!!

並行してホバー移動していた5機に砲撃が加えられた。

「ど、どこから?!」

アイ02が慌てて回避軌道。

アイ達4人は通信ではないべつのリンクで繋がっているので、右手に左手が当たらないように器用に編隊を変形しつつ敵弾をかわす。

とーんとメーナは高く飛んでかわした。

同時に敵機を視認する。

「みつけたよ!ひだりがわだ!」

メーナはバックパックのブースターを吹き、あっという間に間合いを詰めていく。

「でっかいやつだ!」

それは先日勝てないと逃げ出した大きさの敵機だった。

全長が1000mにもなる大型フロート戦車がすいとウェポンベイを開き砲撃する。

50cm前後の巨大な砲が大量に放たれ、メーナの至近をすり抜けて後方でどどどぉんと破裂する。

「のろまだな?」

着弾した頃にはメーナと敵機は密着するほどまで近づいていた。

ずばばぁああん!!

これも新型のショットガンを両手に持ったメーナがウェポンベイの中に同時に放った。

今までの2倍の口径を持つ重ショットガンは火力も十分で、敵機の右のウェポンベイが一つ死んだ。

くるりと頂点でターンし片側に4つあるウェポンベイをもう一つ狙うメーナ。

ずばばあぁあぁん!!

斜めに落下しながら上下逆さまのまま射撃するメーナ。

正確にウェポンベイの奥の弾薬庫を狙う。

ぼひゅ

地面に落ちる寸前にブースターを吹いてくるんと回り脚から降りるメネシスmkⅢ。

ずばっ!!

土砂を拭き上げて地面を蹴って進路を捻じ曲げる。

ドドドオォオン!!

直前の進路に偏差撃ちされた巨大な砲弾が炸裂したが、メーナには土砂すら当たらない。

きゅんっと加速して敵機から離れるメーナは完全に狙われていて、巨体のあちこちからドカドカと砲弾が降り注ぐ。

「おぉお‥‥うごくよ?!」

きゅきゅぅんと左右に進路をふり、狙いを付けさせないメーナ。

反対舷ではアイ達の小隊がいつもの連携攻撃で次々と武装を破壊していた。

それでもメーナが最初に手を出したので、ヘイトはメネシスに集まっていた。

きゅるんとUターンして敵機を狙うメーナはちりっと嫌な予感。

ウェポンベイの一つがそのまま伸びてきてシールドアタックをかけてきた。

相対速度もありメネシスmkⅢの全高を遥かに超える腕が、高速で叩き込まれる。

「っわわわ!!」

『メーナァ!!!』

「メーナよけて!!」

リーベの悲鳴にアイ達も口々に叫んでいた。

まさか腕が伸びてくると思わなかったメーナは咄嗟に回避が遅れる。

(あ‥‥いたそう)

これは避けきれないと諦めるメーナ。

切り返しに全力のブースターを使ってしまったので、今のメネシスには進路変更の手段が限られている。

地面を蹴ったくらいでは回避できないと、早々に諦めたのだ。

ズガァアアアン!!!

目も閉じてしまっていたメーナの前に青い機体。

「あきらめたらそこで終わっちゃうよ」

静かに通信してくるのはリステル。

メーナの声は明るくなる。

「りすてる!!」

メーナの後ろにはリステルの部隊の式神も4機いる。

それぞれが持つシールドが青く光っていた。

4機分のピンポイントバリアを収束し、リステルの臨場する青い新機体『ミラサネル』がシールドで敵機の腕を受け流していた。

(さすが!リステルは役に立つ!)

メーナはおもしろい本をもってくるのと同列に、そんな不遜な評価をしていた。

リステルの青い機体は動きを止めずに、そのまま左手のプラズマランスがねじ込まれプラズマを流し込む。

どぉおおん!!!

リステルの攻撃でちぎれた腕がごごんと転がってきて、メーナの側を飛んでいった。

「はわっ!」

地を蹴って避けたメーナが、やっと回復したブースターで上空に逃げた。

敵機のヘイトは一気にリステルに向かったようで、そこからはメーナは狙われずにすむのだった。


 結局リステル達は誰も被弾すらしない圧勝で敵機を屠った。

新機体で更新して火力は十二分に通じると、結果としては証明する遭遇戦となった。

それはそれとして、メーナはマナミにおしりを叩かれる公開処刑にさらされるのだった。

「ごめんなさぁぁい!もうしないからぁあ!!」

指示を守らず危ない目に有ったメーナは、マナミに思いっきりたたかれ、えーんと泣くのだった。

泣いていればマナミが手を緩めてくれると知っているから。

ちらっと見たら目があって、マナミの眉が釣り上がる。

(しまった!はやかった!)

ばしぃいん!!

「あぁあん!!」

そうしてリステル達は荒野でも勝利を重ねていくのだった。

メーナのおしりは真っ赤に腫れ上がったが。



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