本当の近道
あれから睡眠時間を削って勉強するようになった。
「あんた目の下にクマできてるよ」
と中野に時々言われるが、そんなことを気にしている場合ではない
調べたら偏差値60くらいは停滞しやすいらしい
だけど60なんかで止まっている暇はない
中野から出されたプリント以外にも自分で買ってきた参考書にも手をつけるようになった。
それなのに、全然問題を解けるようにならない
まだ勉強量が足りないのか?
もっと睡眠時間も削って…
「あんた最近調子悪いよ。少し休みな」
そう言う中野の声が敵に見えてくる
なんで勉強を辞めさせようとするんだよ
前まで勉強しろって言ってたくせに
「はいそうですか」
と適当に返事する
それから授業中に寝るようになった
どうせ授業なんて進むの遅いし、家の勉強の方がよっぽど効率的だ
そんなことをしていたある日の放課後
「あんた1日どれくらい勉強してる?」
と中野に聞かれた。
「10時間くらい」
「は?あんたいつ寝てるの?」
「一時から五時半くらい」
「だからだ」
何がだからだなのだろうか。
こっちは勉強してるのに全然問題が解けない、よくわからない現象が起きているのだが。
「あんた…いや、アキラ」
中野がこっちをまっすぐ見てくる。
初めて中野が名前呼びをしてきた
「なに」
思わず顔を顰める
「勉強の効率が悪い。しっかり寝なさい」
「でも削ってでも勉強しないと間に合わないだろ。
特に60からは伸びないらしいし。」
「違う。あんたは自分の体調管理を怠ってる。それじゃ伸びない。偏差値60からなんで伸びないのか調べたの?質が必要になってくるから伸びなくなるの!」
……でも、
「なんで勉強してるのに伸びないって言い切れるんだよ」
「だって現に伸びてないじゃん」
…ぐうの音も出ない
「睡眠時間は7時間はとる。たまには遊ぶ。いい?」
「遊ぶ?」
「リフレッシュしないと勉強なんかやってらんないからね、たまには勉強から離れる方が本当の近道」
中野の表情が緩む。
「疲れただろうし、今度の休日とかどっかいく?」
初めて中野に遊びに誘われた
「まあ。」
曖昧な返事しかできない
だけど、空はさっきと変わって雲ひとつない快晴だった。
タワーの方向を見る。
今まで本体しか見てなかったけど、タワーまではずっと一本道が続いていた。




