このタワーの頂上で
3月15日。卒業式、当日
3年2組の教室に入ると黒板には黒板アートが描かれていた。この教室から見える景色と桜、虹が描かれていて。そこにはちゃんとタワーが入っていた。
「3年間、なんかあっという間だったようなすごく長かったような。」
「どっちよ……」
そう言って外を見ると、校庭の奥側の桜が満開になっていた。
「あれ?桜ってこの時期は咲かないんじゃないの?」
「あれは………河津桜だわ。アキラに前、品種によって違うけどって言ったでしょ?それ。河津桜は早咲きで、新潟でも3月中旬に咲くの」
「へぇ……美しく、咲いてるな。」
「…………私の名前意識した?」
「バレた?」
「バレた?じゃないよ。自分の名前だよ!!」
そうしていたら鷹宮と三浦も教室に入ってきた。
「おはようございます」
「おはよ!!!」
「おはよう鷹宮と三浦」
「三浦うるさい」
「なつやま〜卒業式なんだからいいじゃん」
そうして、卒業式が始まる。3年間の、集大成。
卒業証書を、しっかりと受け取る。みんなとの記憶が溢れてくる。
美咲が林間学校ではしゃいでたこと、鷹宮に2年の12月までに偏差値越してやるって言ったこと。と。美咲に生徒会に無理やり入れさせられたこと。村上がシゴデキでびっくりしたこと、美咲が3日間ぶっ続けて勉強してて慌ててベッドにぶち込んで飯を作ったこと。三浦が思ったよりも偏差値高くてビビったこと。美咲に告白したこと。
それは、苦くて、酸っぱいけど、甘い甘い思い出だった。
そんな回想をしていたら、いつのまにか卒業式は終わって、校庭で各々の写真撮影をしていた。
「じゃあ美咲。河津桜で写真撮ろ?」
「はいはい。」
桜の下、鷹宮の協力のもと二人でツーショットを撮った。
「ふふっ。いいんじゃない?」
「家に飾る?」
「ぶぶっ。みてたの!?あの写真とか」
「そうだよ?」
そう話していたら、校庭の向こう側から走ってくる影が一つ見えた。
「せんぱーーい!」
そう言って村上が走ってきた
「あれ?今日2年きてないはずじゃ?」
「生徒会は出席しますよ」
「あーはいはい。で?どうした?」
「先輩。1年間、ありがとうございました。会長も1年半ありがとうございました。」
「むしろ生徒会の内容とか教えてくれて助かったよ。ありがとう」
「ほんと、村上さんのおかげで生徒会がスムーズに回ったよ。」
「二人ともありがとうございます。あと、二人って宮大北中なんですよね?」
「そうだよ?」
「……………来年、絶対にまた、会いに行きます。」
「……宮創附属、俺が言ってもって感じかもしれないけど、きついよ?」
「承知の上です。先生にも伝えました。」
「そっか………頑張ってね。」
「はい。精一杯頑張ります。」
そう言った直後、俺は村上の手を握る。そして
「難しいけど、村上さんなら絶対に行ける。だから……待ってるよ。」
と言った。すると村上は急に頬を赤らめた。が直後には覚悟が顔に出ていた。
「はい。待っていてください。」
そう言って村上は帰っていった。
「村上さん、頑張ってるね。」
「そうだね。」
一瞬の沈黙の後、口を開く。
「じゃあ、卒業式終わったし。帰ったらすぐ着替えて準備して。行きたいところがある。」
「………?アキラ、そんなところあったんだ。じゃあ、わかった。」
駅から電車に乗って長岡駅、そこから徒歩数分である。
「ついた」
看板には長岡サウザンドタワー 入場口と書かれている。
「今日は何名様ですか?」
「サウザンドデッキ二人です。」
「わかりました。では高校生チケット2枚で6000円です。」
「はい。これで丁度です。」
そう言って5000円札と1000円札を出す。
「はい。では上空1000mの景色、ぜひ楽しんでいってください。」
そして、エレベーターに乗る
「アキラ、ここってもしかして」
「そのもしかしてだな」
小学生の頃、一回だけ親に中野と一緒に連れていってもらった
「長岡サウザンドタワー最上階、サウザンドデッキだな。」
いつも学校からも、いろんなところからみえる。象徴的なタワー。
「前登ったのって小3だから6年前かな」
「そうか…もうそんな経つのか」
中野に言われて、もうそんなに時が流れているということを実感する
「……転校直後のうちに毎日のように話しかけてきて。それで一番最初に二人一緒に出掛けたのが、タワーだったよね。」
「そうだな…あ〜懐かし、家族だけで出かける予定だったけど親に土下座して無理矢理入れてもらったな」
「そんなことしてたの!?」
「だって、ね。なんか、話したら全然旅行とかしてなさそうだったから連れて行きたくなったの。」
そういうと、美咲が少し微笑んだ
「ふふっ、やっぱ9歳の頃の私は間違ってなかったな。」
「それは……どういう意味?」
「どういう意味でしょ〜?」
「なにそれ〜」
そうして景色を見て回る
「あそこら辺が多分私たちの家あるところだよね。」
「あそこが水族館、あっちが北中の方だな」
小学生の頃より、圧倒的に知ってる場所が増えて、思い出の場所も増えた。
「本当は合格したら真っ先に行こうかなって思ってたんだけど、もう3月だね。」
「3月だから、雪が溶けて、緑が出始めてる。そうでしょ?アキラ」
「そうだわ」
俺たちも、今の季節のように、新しく芽を出し始めている。次はどんな巡り合わせがあるのだろうか。そして、どんなふうに再会するのだろうか。
「美咲。」
「何?」
「そろそろ、行こうか。」
「そうだね。」
俺たちの人生はまだ続く。




