異世界パパはキレイ好き
衝撃波げっぷで家が揺れ、
爆発する野菜炒めの余韻が残る中──
オレは深くため息をついた。
「……疲れた……
風呂入ろう……」
ソルが首をかしげる。
「ふろってなぁに〜?」
「えっ……風呂知らないの……?」
ソルはニコニコしながら言う。
「パパ、いつもおみずでぬらした布で、ふきふきしてたよ〜!」
「ふきふき!?
清拭!?
それが風呂の代わり!?
そんな文明レベルなの!?!?」
ソルは胸を張る。
「みんなそうだよ〜!
ふきふきして、きれいになるの!」
「いやいやいやいや!!
ならない!!
それは“きれいになった気がする”だけ!!
オレ、天職・引きこもりだったけど、風呂だけは毎日入ってたんだぞ!?
風呂は文明!!
風呂は正義!!
風呂は人類の叡智なんだよ!!」
ソルはきょとんとする。
「パパ、ふろってそんなにすごいの〜?」
「すごいどころじゃない!!
風呂は人生の癒し!!
風呂は心の浄化!!
風呂は……風呂は……
風呂は……オレの唯一の楽しみだったんだよ!!」
ソルはケラケラ笑う。
「パパ、ふろすきなんだね〜!」
「好きどころじゃない!!
風呂がないと死ぬ!!
精神が死ぬ!!
文明が死ぬ!!
オレの尊厳が死ぬ!!」
ルナはにこにこしながらオレの服を掴む。
(……かわいい……
かわいいけど……
風呂がない世界とか……
オレ、どうやって生きてたんだ……?
絶対ババァ神が説明してないだろ……)
オレは立ち上がった。
「……よし。決めた。」
ソルが首をかしげる。
「なぁに〜?」
「風呂を作る。」
「えっ!?
ふろってつくれるの〜!?」
「作る!!
この家に!!
簡易シャワーを!!
文明を!!
清潔を!!
オレの尊厳を取り戻すために!!」
ソルは目を輝かせる。
「パパ、すごーい!!
ふろつくるの!?
パパ、なんでもできるもんね!!」
「いや、できるかどうかは知らん!!
でもやる!!
やらなきゃオレが死ぬ!!
精神的に死ぬ!!」
ルナは満足そうに手をぱたぱたさせる。
にこぉぉぉぉぉ……
(……よし……
まずは水をどうやって上から落とすかだ……
かまどの火はソルが魔法でつけられる……
なら……
温水もいける……
いける……!!)
オレは拳を握りしめた。
「ソル、パパは今から文明を作る。」
「ぶんめいってなぁに〜?」
「風呂だ。」
「ふろ〜!!」
こうして──
アウリス(オレ)は、異世界に“簡易シャワー”という文明を持ちこむ事を改めて決意するのであった。




