第2話:女神の慈悲と、新たなる器
生と死の狭間――そこは、どこまでも白い光が満ちる静寂の世界だった。
村の襲撃によって命を落とした美紀の魂は、半透明の光となって、眼前に降臨した女神の前に跪いていた。
「哀れな子よ。本来の寿命ではないあなたを救いたいけれど……一度失われた肉体をそのまま現世に戻すことは、神の規律において不可能なのです」
女神の言葉に、美紀は胸を引き裂かれるような思いで、縋るように声を上げた。
「そんな……。では、私のお腹にいたあの子は……? まだ産まれてあげることもできなかった、あの子はどうなってしまうのですか!?」
美紀が流した魂の涙を受け止め、女神は優しく首を振る。
「その子はまだ、魂の形すら確定していない、命の源流。そのまま転生させることはできません……。けれど、一つだけ方法があります」
「方法……!?」
「あなたを、あの世界で『同時刻に命を落とした者』の肉体へ転生させます。そして、あなたが新たな身体で、もう一度、夫であるシンと巡り合い、深く結ばれることができたなら……その時、あの子の魂は再びあなたのお腹へと宿り、産まれてくるでしょう」
もう一度、シンと結ばれれば、あの子に会える。
美紀に迷いはなかった。たとえどんな姿になろうとも、愛する夫を迎えに行き、今度こそ家族3人で幸せになるのだと、固く決意した。
「……お願いします。どんな身体でも構いません。私を、シンの元へ還してください」
女神がそっと指を鳴らす。
「いってらっしゃい。……少し、器の個性が強い子だけれど、頑張るのですよ」
その言葉を最後に、美紀の意識は眩い光の中に呑まれていった。




