花びら
原稿用紙2枚です。
令和八年三月。春の風が耳元を駆け抜けて、桜の花びらが舞い散る校庭。いつもとは違うざわついた教室。五反田久美子は今日こそは言うと心の中で決めていた。
クラスの中心といってもいいほどの学園のヒーロー、池下俊宏。彼の周りにはいつも華やかな女子たちが取り囲み、通称「お花畑」
と呼ばれていた。
そんな「お花畑」とは程遠い距離にいた久美子は、この学校で卒業式の習わしとなっている、好きな男子にセーラー服のスカーフを渡すというのを、久美子は池下にと決めていた。でも、渡すにはハードルが高かった。なんせ池下の周りにはいつも女子がまとわりついていて、その中には憎っくき女子番長の清原がいる。清原はその名前から「清少納言」と呼ばれていて、周りからも一目置かれる存在だった。一目というよりは恐怖心からそう言わざるを得なかった。それが嫌だったから久美子は池下から遠ざかるように距離を置いた。
卒業式。校門の前の「令和八年 卒業式」と書かれた立て看板の前で記念写真を撮る親子。久美子も看板の隣に立って、母親に写真を撮ってもらった。
「あ、行かなきゃ」
久美子がそういうと、体育館の中に入っていった。
民間出身の校長。ハゲチャビンの教頭。三年生の担任たち。そして選挙の顔を売るために来たようなやる気のない市議会議員。壇上には立派な生花が生けられている。
学級の代表である学級委員がクラス分の卒業証書を受け取る。
みんなで合唱曲を歌う。
至って普通の卒業式だった。どっかの高校みたいに派手な仮装をするわけでもなく。
みんな、三年間ありがとう。(了)
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