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レモン

短い文章です、

「そんなことあったっけ?」

 舞香はつくしのように細い指先でレモンを摘んだ。

「かけてよかったっけ?」

 僕が頷くと彼女はレモンを搾って軟骨の唐揚げにかけた。

 高校時代から、時々会う最近でもいつだってイニシアチブは舞香の方にあった。

 殺風景な居酒屋だった。飾り気のない、色気もない、何もない。着物がはだけた女優のビールのポスターと、お品書きが定規で測ったように整然と並べられた、ザ・居酒屋、って感じの雰囲気の店だった。流れる有線も懐かしい歌謡曲で最近の曲は一切流れてこない。

「すいません、ここ、枝豆ひとつ」

 舞香は手を挙げて店員にそう伝えると、

「ねえ、知ってる? 川上くん、捕まった、ってね」

 と唐突に僕にそう言い放った。(了)

ありがとうございました

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