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第16話:【訪問者】

 轟く哄笑に、僕たちは導かれるように視線を向けた。

 協会の上層に続く階段から、一歩ずつ下ってくる二つの影。

 体感時間が伸びる中、突然姿を現した二人組に空気は一転し、沈黙を打ち破るロバーナさんの驚嘆が協会内に響き渡った。


「……ローレンツ様に、モネフィラ様っ!? どうしてここに!?」


 それまで崩していた口調は敬語に戻り、二人の下へ赴くロバーナさんの修道服が激しく揺れる。

 突然の訪問者。

 受付嬢の役割を放棄してまで駆け寄れねばならない存在とは、一体何者なのか。

 呆然としてしまう僕の隣で、


「……『神獣候補』……っ」

「……え?」


 アカリだけが小さく呟いた。


「そう、怯えた顔をするな。悪さをしようって訳じゃないんだから。ガハハハッッッ!!」


 聞いたばかりの野太い哄笑が、再び協会内を埋め尽くす。

 布一枚纏わず、半裸を顕にする巨漢。

 緑色の短髪から生える角をみるだけで、彼が獣人なのは察しが付く。

 そして何よりも、…………デカい!!

 昨夜の暴君も、見上げるほどの体躯の持ち主だったけど、目の前の男性は違う……!

 全身装備(フルアーマー)なしで威圧感を与えてくる。

 『神獣候補』。

 そう口にしたアカリの言葉に、疑う余地がなかった。


「バカ笑い。……うるさくてしょうがない」


 すぐ横で嘆息を吐く女性は、……モネフィラさん、って呼ばれていただろうか?

 アーモンド型の瞳を細め、肩まで伸びた茶髪をいじりだす。

 上下ともに丈の短い服装からは、褐色のお腹や太腿が晒されている。

 スラっとした体型と軽装からは、女盗賊を彷彿とさせられた。

 身体に特徴はない。

 ならば彼女が僕と同じヒューマン、…………『(むす)び人』なのだろう。


「あの人たちが噂の『神獣候補』なのか」

「噂……?」

「う、うん……。昨日、ロバーナさんが言ってたんだよ。もうすぐこのウィネーブルの神獣候補が決まるって……」

「嘘でしょ? その噂って本当っ!?」

「えっ、……いや、ごめん……。僕も昨日聞いたばかりだから、詳しくは分からない……」


 ロバーナさんを含め、接卓(カウンター)の奥で始まった三人の話合いを眺める傍ら、僕は昨夜の記憶を掘り返す。

 偶然知っただけで、真偽は定かではない。

 驚嘆を上げたアカリには申しわけないが……。

 だけど街の賑わいからして、頷けるものは感じた。

 街に住む者なら誰でも知っているのかと思ったけど、どうやら初耳みたいで。

 顎に指を置いたまま「ムムムーっ!」と唸り声を繰り返すアカリは、次の瞬間にはぱっと顔を上げた。


「うーん、やっぱりおかしいよ……」

「え? 何が?」

「だってあの人たちは、別の(・・・・・)の神獣候補だもん」

「っ!?」


 確信めいて告げてくるアカリに、僕は瞠目した。


「ローレンツ……、モネフィラ……。……名前だけは聞いたことがありますが、確かに隣国である『ハイサンド』の神獣候補だったはずです」


 接卓(カウンター)の奥を背伸びして覗くサレンも、アカリの意見に同意する。

 怪訝に染まる二人の説明を聞いて、ようやく一点腑に落ちた。

 ロバーナさんからすれば、『他国の神獣候補』が『自国の神獣候補』の都市にいることになるのだから驚きもする。

 使者として赴くとしても、トップの不在のこの都市になんの用があるというのか。

 そんなことを思考していると、僕たちに影が差した。


「よお! お前らセイバートゥースになりたいんだってな。どうだ? 俺が出す試験で良ければ見てやるぞ!」

「……え、あぁ、ぁっ」


 いつの間に話合いを終えたのか、半裸の男性……ローレンツさんが満面の笑みを向けてきた。


(ほんと……、デカすぎるでしょ、この人……っ!)


 眼前まで来て、より体感させられる体格の差。

 僕の二回り以上はある巨大さ。

 視界が悪ければ壁と見間違うかもしれないと、見上げる2長単位(メートル)越えの肉壁に喉を鳴らしていた。


「試験を受けたいって奴は、犬獣人(イヤルティー)の嬢ちゃんで間違いないな?」

「あっ、はい! アカリと言います!」

「おう、そうか! んじゃーぁ、ちゃちゃっと始めちまうか、アカリ嬢ちゃんよぉ!」

「はい! やります、やります! うぉおおおおおおおっっっ!!」


 突然声を掛けられ、背筋を伸ばしたアカリに、ローレンツさんは屈託のない笑みを作る。

 降って湧いた幸運。

 延期になるはずだった試験が目の前にぶら下がり、アカリの瞳に闘志が宿る。

 元よりそのつもりで来ていたアカリにとって、沈んだやる気を(みなぎ)らせるのに時間はいらない。

 だからこそ──、


「やりま──」

「──ちょっと待った!!」


 水を差した。


「その前にっ! …………試験の内容を、教えて貰えませんか……?」

「おん?」

「……っ!」


 虫の知らせと呼べばいいのか。

 他国の神獣候補がいる違和感に、警鐘が鳴った。


「割って入ってすみません。試験に……、ヒューマンの僕は関係ないかもしれませんが、どうか教えて欲しいんです」

「おいおい、もしかして試験の内容次第でやるやらないとか言わないよな? それはあまりにも男気がないってもんだぜ?」

「……んっ!」


 図星を言い当てられ、気まずさに顔を引きつらせる。

 豪快な笑い声。

 表裏のない笑み。

 一言交わせば、ローレンツさんが善人であると誰もが理解する。

 それほどまでに魅了された。

 この人が質の悪い試験内容を突きつけてくるなんて思えない。

 そんな未来、想像できない。

 だけど、知っておかなくてはならない。

 試験である以上、合否が存在する。

 合格であれば、当然セイバートゥースになるだろう。

 なら、不合格だったら?

 永久にセイバートゥースになることを禁じられる。

 そんなことになって悲しむのは誰だ?

 アカリだ!

 命を掛けて人を助けるアカリの夢が閉ざされる。

 それだけはさせない!

 あっちゃいけないだ!


(僕はヒューマンだ……。戦いにおいて、直接力になれることはない……)


 それでもここは譲れなかった。


「僕は、アカリの『結び人』です! 二人で決めさせてください!!」


 喉を割いて溢れる思いが、協会内に響いた。


「いいじゃない、ダル。教えてあげたら?」

「ん?」

「確かに不公平だもんね。新人には優しくしてあげなくちゃ」

「どうしたよ、イバナ? お前がそんなこというなんてめずら──」

「──っ」

「っ!」


(ん? な、なんか……、今、すごい勢いでモネフィラさんが遮った気がぁ……っ)


 大きすぎるローレンツの影から、やれやれと首を振ったモネフィラさんが一瞥向けた瞬間、時間が止まった。


「ちゃんとした挨拶もなしにごめんなさいね。ウチは、イバナ=モネフィラ。この筋肉バカの、ダニル=ローレンツの『(むす)び人』よ」


 最後に「貴方たちのことはあの子に聞いたから」と、親指を向ければ、ロバーナさんが遠くで会釈する。

 さっきのは、一体なんだったのか……。

 にこやかに笑っていても、モネフィラさんに聞く勇気がなぜか出てこなかった。


「はぁー、まぁいい……。一撃だ。一撃でいいから俺に傷を付けること。それが、俺が出す条件だ」

「一撃……?」

「あぁ、そうさ。【魔法】でも、剣でも、拳でも。何だっていいぜ?」


 一撃。

 それは酷く簡単なことに思える。

 ローレンツさんは神獣候補まで上り詰めた実力者。

 対してアカリはディスターなりたての半人前。

 提示された条件が適切なのかどうかの判断はできないが、ひとまず理不尽というほどのものではないか?


「ちなみに、試験に落ちたからといって、何か罰があるってことはないから安心しな」

「え?」


 僕の思考を読み取ったかのように、ローレンツさんは小さく笑って答えた。


「セイバートゥースになる条件は、既存のセイバートゥースに認めてもらうことのみ。そのやり方は各々に任されている。少年が察している通り、もっと簡単な試験を出す奴もいる。……それが良いかどうかは別だがな?」

「そういうものなんですね……。すみません、口を挟んでしまって……」


 セイバートゥースになる仕組みを語るローレンツさんは、終始辟易した様子だった。

 最後には肩をすくめて嘆息を吐くローレンツさんが、何を忌避しているのかは分から無かった……。

 だが、話しを聞いた僕はそれどころではなく、脱力感に囚われてしまう。

 罰則の否定。

 合格基準の低さ。

 神獣候補が言うのだから間違いはないだろう。

 それが分かった途端、不安が嘘のように消え、気づけば大きな息を吐いていた。


「もーぅ。心配し過ぎだよ、マコト」

「ごめん……、つい気になっちゃって……」


 だらりと垂れる僕の肩を軽く叩いて、アカリは一笑する。


「神獣候補と手合わせ出来るなんて滅多にないだろうし、一撃なんて言わないよ! 勝つつもりでやってやるんだから!!」

「ガハハハ! その豪胆さは実に俺好みだっ! 結果次第では俺らの所に『派閥入り』して欲しいものだ!!」


 むふんっと鼻を鳴らして胸を張り、不敬とも思えるアカリの態度に、ローレンツさんは腹の底から笑い声を響かせる。

 そんな中、何気なく言われた『派閥入り』に、僕はぽんっと手を叩く。


「『派閥入り』……。そういえばセイバートゥースって、どこかの『神獣』に仕えることになるんだっけ……?」

「必ずしもって訳じゃない。どこにも所属しないでセイバートゥースをやる奴もいるし、逆に『派閥入り』の誘いを断るヤツだっている。うちの派閥では、その選定を俺たちが請け負っている」

「へぇー、『神獣』がやるんじゃないんですね?」

「ガハハっ、敬称無しで神獣様を呼ぶとは! 中々お前も肝が据わった奴だな」

「っ!? し、失礼しました……っ!?」


 片目を吊り上げ、顎を擦るローレンツさんに、すかさず頭を下げれば、「気にするな!」と哄笑が降り注いだ。


「いかなる時も、一蓮托生っ! 心根の弱ぇー奴に、俺の背も、仲間の背も預けさせねぇ! 俺に一発かませるくらいの根性がなきゃ、仲間とは認められねぇって訳だ!!」

「「「っ!!」」」


 一言一句が爆音であり、分厚い胸板に剛拳が重なった瞬間、その圧に僕たちは体を反らせていた。

 男の中の『漢』。

 獣人の強みといえよう強靭さを有するこの人は、成るべくして神獣候補になった人な気がする。

 ひとまず、これで僕が試験を止める理由はない。

 このあとはアカリとローレンツさんのやり取りが続くのだろうと、蚊帳の外である僕は大人しく口を閉じることにした。

 その時だった。


「その試験についてなんだけど、ウチから一つ訂正させて欲しいんだよねぇー」


 モネフィラさんがゆったりと手を上げる。

 アーモンド型の瞳を、細く閉じて。


「ダルの試験に落ちたら、────あなたたちは、派閥(うち)に入りなさい」

「っ!」


 モネフィラさんの申し出に、ローレンツさんも困惑に染まる。

 そんなローレンツさんを気にする素振りもなく、モネフィラさんは蠱惑的に笑った。


「え……? いやでも、さっき……」

「えぇ、言ってたわねぇ。『俺に一発かませるくらいの根性がなきゃ、仲間とは認められねぇ』……だとかなんとか?」

「おいおい、真似するならもっと腹に力込めて言ってくれよ」

「別に真似する気なんてないわよ。……全く、空気の読めないやつ」


 話が進まないとばかりに辟易するモネフィラさんは、重たいため息を吐く。

 けれど落ちてなお派閥に入れと言うのは、…………僕たちに何か不都合があるのか?

 言葉を選ばずに言うなら、ローレンツさんの派閥は『実力主義』。

 殺伐としているかはともかく、実力がないと入れないのは絶対だろう。

 そんな中に、あえて弱者を入れる?

 ローレンツさんとは真逆の意見に、僕たちは当惑するばかりだった。


「急にどうした? 言ってることが普段と真逆だぜ?」

「ダルのバカ……っ。話を聞いてなかったの? この子、二人の結び人になったのよ? こんな異常事態を放っておくわけにはいかないでしょ」

「うっ!?」


 僕らの言葉を代弁してくれたローレンツさんは、並び立ったモネフィラさんから肘鉄を受け、呻き声を上げる。

 思わず夫婦漫才か、と口に出しそうになるが、モネフィラさんの歪む顔に口を噤んだ。


「単純な話よ。こんな貴重な(むす)び人を易々と死なせるわけにはいかないもの。下手にセイバートゥースにさせるくらいなら、ウチらの派閥で監禁でもした方がいい」

「ガ、ガハハハ……っ! イバナは過激だな……!」

「ウチは笑いごとにするつもりは無い。むしろ、アナタのためよ」

「……僕、ですか……?」


 苦痛に染まりながら、それでも笑うローレンツさんを冷たくあしらい、モネフィラさんが僕を見る。

 セイバートゥースを目指すアカリでも、サレンでもなく、僕を。

 これまで蚊帳の外だと思って話半分で聞いていた僕は、戸惑いの声を溢した。


「考えてもみなさい? ディスターを二人従えるアナタは、『クタリア』にとっちゃ厄介極まりない存在。知られれば、殺すか、利用するか。アナタの使い道はたくさんあるのよ?」

「……『クタリア』?」

「魔法を使って悪さをする人のこと……。セイバートゥースにならないどころか、悪事に手を染める……。…………救いようがない人たちだよ」

「……アカリ?」


 モネフィラさんの言葉を補足してくれたアカリは、視線を固定したまま口だけを開ける。

 心此処に非ずというか、遠い日のことでも思い返しているかのように。

 その覇気のない姿は、これまで一度だって見たことのないものだった。


「救いようがないっていうのは同感かな。協会から与えられる保障を蹴っちまうんだから、ダル以上の大馬鹿さ」

「おい! アイツらとの比較に俺を出すなよ! いくらなんでも怒るぞ!」

「はいはい、ごめんなさいね」


 鼻を鳴らして憤るローレンツさんに、モネフィラさんは軽く手を振る。

 神獣候補の二人揃って見限ってしまうとは、一体どんな存在なのか。

 悪事に手を染める人たちが、僕を狙う?

 思考が追いつかないでいる僕は首を傾げる。

 そんな僕に、モネフィラさんは言葉を続けた。


「要は、活躍次第では名が知れる。セイバートゥースを警戒する『クタリア』になら、尚の事。アイツらにとって、厄介なのはウチらセイバートゥースだからね」

「確かに……、魔法を使える相手というのは、煩わしいでしょうね」

「そう。だから決まって奴らは同じことをする」

「えっとぉ……、一体何を……?」


 接卓(カウンター)越しに話しをしていたと思ったら、突如モネフィラさんは僕たちの下へと歩みを始める。

 接卓扉(カウンタードア)を抜け、ゆったりと。

 その動向を目で追っていた僕は、懐疑さに眉を歪める。

 そして僕の目の前に立った時、モネフィラさんはにこやか笑った。


「簡単なことよ。こんな風……、──にっ!」

「──っ!?」

「『(むす)び人』を殺すの。……【魔法】を使わせないためにね」

「……ぁ、ぁぁ」


 気付いた時には、短刀(ナイフ)が首に触れていた。

 目の前から消え、背後から褐色の腕が伸びる。

 息ができない……っ!

 唾を飲み込めない……!!

 下手に動けば、切られるっ!?

 首筋に当たるモネフィラさんの吐息と、舐めるように肌の上を滑る刃。

 二つの感触に支配された数秒。

 そして、…………雫が溢れた。


「真っ先に死ぬのよ? ……アナタ」


 まるで直接流し込まれているかのように、モネフィラさんの言葉が脳内で反芻した。

 次の瞬間。


「──させるわけないじゃん!」

「──させません!」

「……ふんっ」


 モネフィラさんとの密着が、解ける。


「かぁっ!? かはっ、かはぁっ!?」

「大丈夫、マコト!?」

「血がっ! 本当に切るなんて……っ」


 庇うようにアカリとサレンが割って入り、僕は咳き込みながら倒れた。


「ちょっと!? いきなり何するんですか!」

「えぇ、そうよ? 『(むす)び人』なんてあっけなく死ぬの。それこそいきなりね?」

「このっ!?」

「待って、アカリ……」

「マコト……!」

「大丈夫だから……。びっくりしただけ……。……大した事ないよ」


 ヒリヒリと痛む首に手を当てながら、もう一方でアカリの腕を掴む。


(目の前にいたのに、……一瞬消えたかと思った)


 獣人と、ヒューマンは身体能力に違いがある。

 それでもアカリと変わらない速さ。

 むしろモネフィラさんの方が速いように感じた。


(『神獣候補』の『(むす)び人』。それだけの実力が、モネフィラさんにもある……)


 同じヒューマンとして……、いや、『(むす)び人』として。

 今はアカリに頼っちゃいけない気がして、僕は振りほどかれないよう力を込めるのだった。


「身に染みたでしょ、いかにセイバートゥースが危険かは? ディスターに力がなきゃアナタは死ぬ。だったら派閥(ウチら)の所に来た方が安心だよ」

「……っ」


 自覚するには十分だった。

 本当に一瞬だった。

 相手が『クタリア』だったなら、僕は死んでいた。

 首を裂かれ、血が溢れ、声も発せず終わったんだ。

 手足の先の感覚がなくなり、肺が凍ったと錯覚した。

 一瞬前の僕は、声にならない吐息を吐くだけの人形と化していた。


「もう一度言うわ。ダルの試験に落ちたら、派閥(うち)に入りなさい。セイバートゥースになんてさせないわ」

「心外っ! 『(むす)び人』を守れないようなディスターだと思われたなんて!」

「同じくです……! 前言撤回……。この試験、サレンも口を挟ませて貰います……!」


 細く鋭い視線が僕から外れて、アカリとサレンに向けられる。


「っ」

「っ!!」

「……っ!」


 それは女同士の争いなのか、言葉を用いず視線だけが絡み合っていた。


「サレンちゃん、一緒に頑張ろうね!! 神獣候補なんて関係ない! 見返してやろぉ!!」

「はいっ、頑張ります! サレンも、アカリお姉ちゃんと戦います……!」


 翠光(ライトグリーン)の瞳を真っ赤に燃やし、アカリからは猛る炎の幻覚が見えた。

 そしてその隣では、覆頭(フード)を外してすっかり戦闘体勢に入っているサレンが胸の前で腕を振る。


「「うおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっっっ!!」」


 両手を掲げる二人の少女が、今日一番の大音声を轟かす。

 消えたはずの不安が蘇る。


(条件は一撃与えるだけ。……けど、……本当に出来るのか?)


(むす)び人』であるモネフィラさんですら、アカリとそう変わらない実力者。

 ならディスターであるローレンツさんの実力って……?

 半ば理性を欠いて決まった試験。

 けれどもう、僕の制止の声が届くことはないのだろうと、上げた手をダラリと降ろした。


「手解きは任せたわよ、ダル?」

「ガハハっ!! あぁ、いいぜ! いいじゃねぇーか、三人とも! これは是が非でも派閥に入ってもらおうかあああっ!!」


 そして、僕達は気づかなかった。

 調教された1匹の獣が、己の角より鋭い【緑の槍】を研ぎ澄ましていることに。



ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


初登場となる『神獣候補』の二人、そのキャラクター性を少しでも魅力的に感じてもらえていたら嬉しいです!

そして次回からはいよいよ、『第一章』の最後の山場となるセイバートゥース試験が始まります。


アカリとサレンは、果たして無事に試験を突破できるのか。

マコトと一緒に、その行く末を見届けてもらえたら幸いです。


ブックマークや応援コメントを頂けると、創作の励みになります。

これからもどうぞよろしくお願いします。

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