第十二話 終結
森へ逃げたヴァニエ人を追いかけたシビル兵は罠に気をつけて進軍したが、結局姿を見失ってしまった。
「どこに消えやがったんだ、罠まみれで歩きにくいし最悪だ」
「どうするんだ? もうそろそろ時間だ。早く本隊に合流しに行かないと」
「分かってるんだよそんなことは! けど仕方ねぇだろ! このまま本隊に合流してなんて言うんだ!? ヴァニエの農民追っかけてたら味方が負傷しました。ついでに農民は見失いましたなんて言うつもりか!?」
森に逃げたヴァニエ人達は見つからない。土地勘もないシビル兵達はどこに何があるのかも分かっておらず、途方に暮れた。
「けど見つからねぇもんは仕方ねぇだろ! これからこっちの攻勢が始まるってのに遅参なんぞしたらそれこそ事だ!」
「ああクソッタレ! 仕方ない一旦退くぞ! 洞窟にいった奴らも呼び戻せ!」
何の成果も挙げられず、彼等は撤退した。この時点で湖に来たシビル兵達は約半数が死亡、4名が罠により負傷した。
湖の近くにある森、そこで棍棒を持って待機していたオーレルは撤退していくシビル兵達を見て胸を撫で下ろした。
「やったな。賭けに勝った」
小躍りしそうになるオーレル。それを見て隣にいたアルヴィは呆れたような表情を浮かべる。
「運が良かったぞオーレル。洞窟にそのまま全員来てたら不味いことになってた」
「多分それはしなかったと思うよ」
「なんでだ?」
この作戦の立案者はオーレルだったが、アルヴィも詳しいところまでは聞けていなかった。
「森の中でチマチマ挑発して、奴等は頭に血がのぼった状態、目の前には敵がいてしかも逃げてる。どっちも追いかけて戦果をあげたいと思うだろ?」
「本当にそんだけであの作戦をやらせたのか……運が良かったとしか言えんな。まぁなんにせよ良かった。俺も森の中で死にものぐるいになって矢を射った甲斐がある」
毒づくアルヴィ。彼は森の中に留まって矢を射ることで敵を挑発してもらった。猟師というだけあって獲物に姿を見せることなく射るその技術にはオーレルも驚かされた。
「で。オーレル。おまえの方は大丈夫だったのか?」
「……2人死んだ」
「そうか……だが全滅はしなかったんだな。今はそれでいい」
アルヴィに森を任せたあと、オーレルは洞窟に残った村人を指揮した。人数が少ないのが幸いしてことのほか上手くいった。
洞窟の入り口付近にはいくつか岩があり、そのうちのいくつかは数人で動かせるようになっていて、それが洞窟を塞ぎ、シビル兵を閉じ込めるのに役にたった。
途中後ろにいたシビル兵に気が付かれ村人達に死人の犠牲は出たが、十分な戦果と言える。
「これからどうする?」
「呼び戻しに来る奴等がいくらかいるはずだからそいつらを倒す。アルヴィにも手伝ってもらうよ。それからアイツらが使ってた武器や防具を回収して使おう。出来たら生き残りがいてくれると助かるけど」
「生き残り? ああ確かにな。色々やってくれたお礼に皮剥いでそこらの木にでも吊るしてやりたいしな」
「情報が欲しいんだよ。とりあえず今はシビル兵が完全にいなくなるまで待ってよう」
オーレルがそう言って間もなく、伝令に来たであろうシビル兵が現れた。
アルヴィの持つ弓の弦が震える。




