アラフォー男が宇宙(そら)を征く 2話(完結)
――それから、女の子が食事を持ってくるたびに少し会話をした。
彼女の名前はココ、やっぱり海賊たちに囚われて雑用をさせられているらしい。
そんな彼女との交流を数日繰り返したあと、船は海賊の本拠地に到着した。
そのとき俺は初めて外を見た。
海賊たちの本拠地は、宇宙を漂っていた巨大な小惑星そのものをくり抜き、内部を改造して築き上げた“巣”だった。
表面には無数の掘削跡が走り、岩肌は削られて不自然なほど滑らかに整えられている。
その一部は黒光りする装甲板で覆われ、ところどころに露出した配管やアンテナが、まるで生き物の血管や触角のように宇宙空間へ伸びていた。
小惑星本来の荒々しさと、人工的な構造物が不気味に融合している。
外縁部には複数のドックが設けられており、そこには数隻の宇宙船が静かに停泊していた。
大小さまざまな船体はどれも統一感がなく、奪ったものを改造した寄せ集めだと一目でわかる。
結構多くの人が見えるので、かなりの大所帯らしい。
そのまま俺は、小惑星の居住区にある部屋に押し込まれた。
ここは独房らしいが、船にあった営倉というやつと、ほぼ作りは同じ。
要は同じユニットを使いまわしているのだろう。
あの女の子も一緒に降ろされたらしく、俺に飯を持って来てくれた。
「しかし、ここから逃げ出さないと、奴隷として売られちまうぞ……」
逃げ出す? どうやって?
相手は、武装もしているし。
なんの特技もないオッサンが、大立ち回りをできるはずもない。
不貞腐れてベッドに横になっていると――。
『……』
「ん?」
なにか聞こえるような。
『……聞こえ……』
「なんだ?」
『きこえますか……あなたの脳に直接呼びかけています』
「マジで?」
俺はベッドから飛び起きた。
女の声だが、あまり感情がこもっていない機械のような感じがする。
『マジの意味が不明ですが、「本当か?」という意味であれば、本当です』
「マジか……」
方法は不明だが、俺の脳みそと直接交信できるやつがいるらしい。
『お願いがあります』
「願い? こんな囚われのオッサンにできることなんてないぞ?」
『私をここから連れ出してください』
「連れ出す?! どうやって」
『私の所まで来てくだされば、その方法がわかります』
「しかし、ここから出られないし……どうする?」
「ピー」
俺がそう言った瞬間、ドアのほうから音がした。
「まさか……」
ドアまで行って、そっと手をかけてみると――開いた!
『私の所まで案内いたします』
「――ということは、俺の今の状況も見えているのか?」
『はい、施設内の監視カメラを使っています』
ハッキングってやつか?
俺はそっとドアを開くと廊下に出た。
「監視カメラで見ているってことは、どこに敵がいるとか全部解るのか?」
『はい』
「それじゃ、毎日俺に飯を運んできてくれた女の子の部屋は?」
『それが必要でしょうか?』
「お前の所まで行く、それが条件だ」
『承知いたしました』
まるで迷路のような基地内を彼女の案内で、一つの部屋にたどり着いた。
距離的にはそんなに遠くなかったが、初見ではまず無理だろう。
「周りに人は?」
『いません』
「開けてくれ」
『かしこまりました』
電子音とロックが外れた音がしたので、俺は素早くドアを少しだけ開け、その隙間に身体を滑り込ませた。
「!!」
突然の侵入者にココは驚いたようである。
いや、女の子の部屋に突然入るのは、社会的に抹殺されそうな事案だとは思うが――今は非常時だ。
「ココ、俺だ! 俺はここから逃げ出す! 一緒に来ないか?」
「行く!」
彼女は即断すると、ベッドの下にあった小さなカバンだけ肩からかけた。
「持ち物はそれだけかい?」
「うん」
ドアを少し開けて、辺りを確認する。
『そんなことをしなくても、私が確認してますよ』
「そりゃそうか」
俺はココの手を引いた。
『子どもが一緒だと機動力が落ちますよ』
「ええい、うるさいやつだ。こうすりゃいいだろう」
俺は女の子を背中に背負った。
オッサンの膝に負担がかかりそうだとちょっと思ったが、担ぎ上げた瞬間そんなに重さを感じなかった。
ココを背負って走っても、息切れもしない。
頭の奥深くに、澄んだ声が直接響いてくる。
『右へ。三秒後に巡回が来ます』
その指示に従い、俺は迷路のように入り組んだ通路を全速力で駆け抜ける。
金属の床を叩く靴音がやけに大きく感じられ、心臓の鼓動と重なって耳の奥で反響した。
壁は無機質で冷たく、同じような分岐が延々と続くせいで、自分がどこにいるのかという感覚はとっくに失われていた。
『減速。前方、二名』
反射的に足を緩め、角の手前で身体を滑り込ませるように止める。
背中からココを下ろし、呼吸を殺す。
次の瞬間、重い足音とともに武装した敵が通り過ぎていく。
視界の端で揺れる影――ほんの数十センチ先を、死がかすめていった。
喉の奥がひりつく。
声は出せないが、ナビゲーションの声だけが、静かに次の行動を示す。
『左の通路へ』
ココを再び背負うと、俺は影から影へと飛び移るように動く。
照明の死角を選び、監視の目をかいくぐりながら、まるで最初からこの施設の構造を知り尽くしているかのように進んでいくが――実際には、そのすべてを頼っているのは、この頭の中の声だ。
『正面にカメラ。五秒停止』
言われるがまま、俺はココと一緒に物陰に身を押し込む。
わずかな隙間に体をねじ込み、影と一体化する。
自分の存在が、この世界から切り離されたかのような感覚と一緒に息を潜め、ただ時間が過ぎるのを待つ。
――まるで、本物のスパイだ。
訓練されたわけでもない。
覚悟があるわけでもない。
ただ、生き延びるために、結果的にそうなっているだけ。
『進んでください。残り20メートル』
その先は真っ暗闇。
頭に響く言葉に背中を押されるように、俺はココを背負って漆黒に飛び込んだ。
迷路の終わりは、もうすぐそこだが同時に、背後には確実に迫りつつある気配がある。
影を縫い、音を殺し、息を殺し――
存在そのものを消すようにして、俺は闇の中を駆け抜けた。
「おっ!?」
暗闇の中の先は、倉庫のようだった。
そこにうっすらと、巨大ななにかの輪郭が見える。
大きさは、100mぐらいか?
『マーカーを出します』
その声と同調するように、うっすらと赤い光りが見える。
ココの手を引いて、光りに向かうと、ハッチらしきものが斜めに開いていた。
その斜面をココと一緒に登る。
声の主はここにいると思われる。
上に到着すると通路が左右に伸びているのだが、左側に非常灯らしきマーカーが点々と点いているので、それに従って進む。
「行き止まりだ……」
そう思っていると、ドアが左右に開いた。
中を見回すと、暗い部屋の中で一部だけが光っている。
「光っているところに手を乗せてください」
これは頭の中ではない、室内から声がした。
「ここでいいのか?」
光ってる場所に行くと、机とスクリーンが一体になっているようだ。
そこに手を乗せる。
「お名前を」
「名前? ジンリュウだ」
「登録名は、ジンリュウ様でよろしいですか?」
「あ、いや、リュウにしてくれ」
「かしこまりました――登録完了――マスター承認――メインシステム起動します」
室内が明るくなると――壁面一帯には、無数の計器や操作パネルが隙間なく並んでいた。
小さなランプが規則正しく点滅し、緑や橙の光が脈打つように明滅している。
細かな数字や波形が表示されたモニターは、それぞれが異なる情報を映し出し、低く唸るような機械音とともに、この場所がただの部屋ではないことを雄弁に物語っていた。
「すごい!」
ココも周りをぐるぐる見て、目を回している。
中央には、ひときわ存在感を放つ大きな椅子が据えられている。
重厚なフレームに包まれたそのシートは、まるで玉座のようでありながら、肘掛けには操作パネルが埋め込まれ、指先ひとつで全てを制御できるよう設計されているように見える。
その左右には、補助的な椅子が等間隔に配置されていた。
どれも中央の椅子よりは一回り小さいが、同様に計器やディスプレイが組み込まれており、それぞれが独立した役割を担っていることがうかがえる。
正面には大きななスクリーン――まだ完全には起動していないのか、淡い光が揺らめくだけ。
天井はやや低く、全体的に閉鎖的な構造だが、その分、密度の高い機能性が詰め込まれている。
どこを見ても無駄な空間はなく、すべてが「操るため」に存在している。
気づけば、そこは単なる部屋ではなかった。
「こいつは宇宙船のコクピットか?」
「そうです」
「これで脱出しようと言うんだな?」
「はい」
ここまできて、俺の頭に疑問が浮かぶ。
「お前一人で脱出すればいいじゃないか?」
基地のシステムをハッキングしたり、技術もあるし。
「私にはマスターが必要なのです」
「なるほど……よくわからん」
「それでは、出港準備してよろしいですか?」
「ああ、俺にはまったく解らんから、全部任せる。早くしないと、海賊どもに気づかれるぞ?」
「大丈夫です。チェックを飛ばしてますから、すぐに終わりますよ」
「それって大丈夫なのか?」
「なにかトラブルが起きたときには、運がなかったということで」
「まぁ、奴隷に売られるよりはマシか」
俺がそう言うと、部屋に次の声が響いた。
「システム起動――主機関点火」
その声とともに、船体が身震いをして超低音の震動が足から伝わってくる。
「脱出と言っても、閉じ込められてるんだぞ? どうするんだ?」
「区画減圧――ゲート開きます」
船の前方の金属の壁が上にゆっくりと上がり始めたのだが――大きな音とともに停止してしまう。
「どうした?!」
「感づかれました」
「おいおい、どうする?!」
「ゲートを破壊します。武器の使用許可を」
「許可する! 許可する!」
「武器システムオンライン、電磁投射砲にエネルギー伝達」
「おいおい、大丈夫だろうな?」
「発射準備完了」
そのまま撃つのかと思ったら、そこで止まってしまったようだ。
「……どうした?」
「発射準備完了」
「発射! 発射!」
「発射します」
次の瞬間――。
視界を焼き尽くすような閃光が、闇を一瞬で引き裂く――白――すべてが白に塗り潰される。
網膜に焼き付くほどの強烈な光が爆ぜ、船体をを揺らした。
「きゃぁあ!」
ココの悲鳴で、反射的に彼女を抱き寄せた。
「――ッ!」
目を細め、腕で顔を庇うが間に合わない。
光は一瞬で過ぎ去るはずなのに、残像となって視界の奥に張り付き、何も見えなくなる。
破壊した金属製の扉が、破片を四方八方に飛び散らせているらしい。
細かなボルトや金属片が、船体に衝突し甲高い衝突音を連続させている。
激しい震動が終わると、正面にデカい破孔ができていた。
遥か彼方に見える強烈な恒星の光が、すべてのものに強い陰影を形作っている。
「やった! 行けぇ! 飛び出せ!」
俺は、ココを抱いてデカい椅子に座った。
「了解、発進します」
同時に身体が椅子に押し付けられる。
俺たちは、真っ暗な星の海に飛び出した。
「やったぜ! これで、こんな所はおさらばだ!」
「追撃がきます」
正面のパネルに、ゆっくりと反転してこちらに向かってくる船が映し出された。
葉巻型の銀色の船。
中央には艦橋らしきものが飛び出ている。
「海賊の船だ!」
ココが叫ぶが――そうか、俺はあれに乗ってきたのか。
「迎撃しますか?」
「いや、逃げるのが先決だが、足止めはしてくれ」
「了解、敵艦、武器を起動中――」
不吉な言葉に俺は青くなった。
「え?! ちょっと! ば、バリアとかないのか?」
「あります」
「あるなら張ってくれ」
「シールドオンライン」
その声と同時に、船体を激しい揺れが襲う。
「きゃぁぁぁぁ!」
ココの悲鳴に、彼女の身体を抱きかかえ、両足を踏ん張った。
「後部魚雷装填――目標、追撃中の敵艦」
こいつは、色々とやってくれるが、最後の決定は俺がしないと駄目らしい。
「準備完了次第、直ちに発射!」
「発射します」
発射の瞬間は、あまりにも静かだった。
次の瞬間には、すでに光弾は宇宙へと滑り出している。
反動も衝撃も感じられない。
そのまま光の弾が、銀色に鈍く輝く敵艦へと到達する。
接触の瞬間――閃光。
それは爆発というより、内部から光が溢れ出したかのようだ。
敵艦の装甲が、まるで薄い紙のように裂け、亀裂の隙間から赤や黄色の光が滲み出す。
その亀裂は一気に広がり、艦体は内側から押し広げられるように崩壊していく。
破片は四方へと飛び散っているのだが、それもまた静寂の中の出来事だった。
爆音はなく、衝撃波もない。
ばらばらに分解された金属片が、無音のまま滑るように遠ざかっていく。
巨大なスクリーンの中で再生される、無音の映画を眺めているような、不思議な現実感の薄さだが、これは現実だ。
「やったぁ!」
ココははしゃいでいるのだが、敵艦が四散した瞬間、確かに一度、こみ上げるものが俺にもあった。
喉の奥で小さく弾けるような、抑えきれない感情――「ざまぁ!」という、あまりにも単純で粗雑な歓喜。
その熱は長くは続かなかった。
数秒もしないうちに、じわりと別のものが染み出してくる。
あの艦の中にも数百人の乗組員がいたかもしれない。
自分は、そのすべてを一瞬で消し去った。
俺の号令一つの軽さで。
頭では分かっている。
相手は海賊――略奪を繰り返し、人を殺してきた連中だ。
放っておけば、次に死ぬのは自分たちだったかもしれない。
むしろ正しい判断だった、と理屈は何度でも繰り返す。
それでも――胸の奥に、黒い染みのようなものが残る。
「ふう……」
「今度のマスターは随分と頼りなさそうですね」
「俺は、こういうの初めてなんだぞ……」
そのままスクリーンを見ていると、崩壊する敵艦から、ポロポロとなにかが飛び出し始めた。
「脱出ポッド!」
それを見たココがスクリーンを指した。
「俺が入ったのは、ああいう感じのやつなのか……そうだ!」
「このままここを離れますか?」
スクリーンを見ても、追撃してくる船はない。
おそらくは、あの脱出ポッドを回収するのが優先なのだろう。
「……あの、脱出ポッドって中身を確認できるか?」
「できます」
「え? できるの?! それじゃ、俺を閉じ込めた、海賊のおかしらとかいう女のポッドは?」
「……少々お待ち下さい……確認できました」
「マジで? それって回収できる?」
「トラクタービーム発射」
こちらから伸びた細い線が、一つのポッドを捉えた。
するすると、こちらに寄ってくるのが解る。
どうやら、俺の指示が必要なのは、戦闘などの最終確認だけみたいだな。
「よっしゃ! 回収したら、そのまま逃走で」
「了解」
その声が、静かな室内にすっと溶けるように響いた、次の瞬間だった。
背後の金属の壁に、細い線が走る。
無機質で継ぎ目など存在しないはずの壁が、まるで最初からそこに境界があったかのように、滑らかに分割されていく。
「パタ、パタ――」
小さく乾いた音を立てながら、金属片が順番に折り畳まれていく。
それは単純な開閉ではなく、幾何学的に切り分けられた無数のパネルが、内側へと回転し、スライドし、折り重なり、まるで精巧なパズルが解かれていくかのように展開していく。
規則的でありながら、どこか有機的な動き。
人の手では到底追いきれない速度と正確さで、壁そのものの構造が組み替えられていく。
やがて、最後のパネルが静かに収まりきると、そこには人ひとりが通れるほどの開口部が現れた。
その奥から、影がひとつ、ゆっくりと前に出てくる。
細いシルエットが光の中に浮かび上がり、やがて輪郭を持つ。
まず足元――音を立てない軽やかな歩み。
次に身体のラインが、逆光の中でくっきりと浮かび、最後に顔が光から離れて、はっきりと視認できるようになる。
「女?」
現れたのは、ひとりの女性――そう呼ぶには、どこか現実から逸脱した存在だった。
全身を覆うスーツは、布でも革でもない。
光沢を帯びた金属質の素材で構成されており、照明を受けて鈍く銀色に輝いているのだが、硬質なはずのそれは、まるで生き物の皮膚のようにしなやかで、彼女の身体にぴたりと吸い付くように密着していた。
肩から胸元にかけては滑らかな曲面が強調され、余計な継ぎ目や段差はなく、一体成形されたかのような流麗さを持っている。
そのラインは、意図的に設計されたかのように、女性的な起伏を際立たせていた。
張り出した胸部から、すっと絞られるように細くなる腰、その先で再び広がる腰骨のライン――どれもが不自然なほど整っており、「完成された形」としか言いようがない均整を保っている。
髪は銀色に光っており、金属のような輝きを持ちながらも、一本一本が細く、繊細でありながら、どこか現実の物質とは異なる質感を帯びていた。
瞳は鮮やかな黄色に輝いており、人間でない存在というのを際立たせている。
呼吸の気配が希薄で、体温の存在が感じられない。
立っているだけなのに、わずかな無駄もなく、まるで最適解としてそこに配置されたかのような佇まい。
女性の形をしているのだが、それは人間の女性ではなく――人間を模して、より洗練され、余計な曖昧さを削ぎ落とした「何か」。
そう思わせる、不気味なまでの完成度。
背後では、開いたパネルが再び静かに動き出す。
「パタ……パタ……」
同じ規則的な音を立てながら、金属片は元の位置へと戻っていく。
まるでなに事もなかったかのように、壁は再び完全な一枚へと復元され、そこに扉があった痕跡すら残さない。
閉じられた無機質な壁と、目の前に立つ女性。
「君が、声の主か?」
「そうです、マスター」
「リュウでいいよ」
「承知いたしました。リュウ様」
それにしても、彼女の身体に目がいってしまう。
なんというか――圧倒的な裸!
いや、スーツは着ているのだが、明らかに裸。
目のやり場に困ってしまう。
これも、慣れなのだろうか?
「むう……」
俺の視線に気がついたのか、ココが不機嫌そうにしている。
そんなことを話している間にも、海賊たちの基地がどんどん遠ざかっていく。
「追撃は?」
「ありません」
「ふう……」
どうやら、無事に脱出できそうだ。
「海賊の首領を人質にするのはいいアイディアでした」
「まぁな」
「おそらく、懸賞金もかかってるでしょうから、換金も可能でしょう」
「なるほど、そこまでは考えてなかったな」
俺としては、俺と同じ目に遭わせてやりたいとか――漠然とそんなことを考えていただけなんだが。
「そういえば――君の名前は? なんて呼べばいい?」
「私のことはイブと呼んでください」
「それじゃ、よろしくなイブ。こっちの女の子は、ココな」
「それでは、末永くよろしくお願いいたします」
そのまましばらく進む。
「このまま飛んでいくのか?」
「恒星からの重力ゲージマイナス1――ジャンプ可能です」
「ジャンプ?! ワープとか超光速航法とかそういうのか?」
ワープキター!
「はい」
「よっしゃ! それじゃ、男の浪漫のジャンプとやらをいってみようか」
「了解、ジャンプ準備」
正面のスクリーンに航路などが表示されていく。
「目的地を設定してください」
そう言われて俺は困った。
なにも解らんし――悩んでいると、ココが目に止まった。
「ココの故郷は?」
「オクシタニア星系……」
「ここからだと、かなり遠いですね」
イブは、海賊の基地から、星系図などをダウンロード済みのようだ。
「それじゃ、最終目的地はそこにして、とりあえずは近場の人のいる場所で」
「それでは、数パーセク離れていますが、貿易コロニーにしましょう」
「よっしゃ、そこで!」
「航路設定――承認よろしくお願いいたします」
スクリーンに航路が出された――と、言ってもよくわからん。
とりあえず、彼女の示されたものに従うしかない。
「承認!」
「ジャンプ準備完了」
コレも俺が号令を出さないと駄目なやつだな。
俺は正面の椅子――おそらくはキャプテンシートにどっかと腰を下ろすと、指を2本前に差し出した。
「よし、エンゲージ!」
「ジャンプエンゲージ」
正面スクリーンに映っていた星空が、軌跡を残して放射状に広がっていく。
こうして、なぜか宇宙に飛ばされたオッサンの冒険が始まった。
END




