↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/89

第63話 開戦

 「きさまら!一体何のつもりだ?とっくにお勤め開始の時間は過ぎているだろう!?」


 兵士に周りを囲まれた丸々と肥った男が怒鳴り散らす。


 手には鞭を持って地面をバシバシと叩いている。


 集落の入り口で警戒していた男たちも私も、その音に反射的に身を竦める。


 やはり私達には鞭の痛みは心の底まで染みついてしまっているのだろう。


 その様子に気を良くしたのか、ニヤリと嫌らしい笑みを浮かべながら更に捲し立てる。


 「ゴンゾ!ゴンゾはどうした?さっさと出てきてどういうことか説明しろ!」


 騒ぎを聞きつけてゴンゾが駆けつけてきた。


 私もひっそりとゴンゾの斜め後ろに立つ。


 「これはこれはお代官様、何かごようでしょうか?」


 「何かごようでしょうか、じゃないだろう!何故時刻になっても仕事に来ない?」


 「ああ、これはご説明が足りずに申し訳ありません。我々はもう皆様の奴隷として働くことは辞めました。」


 「何?何を言っている?お前らは先祖の過去の罪を濯ぐために奴隷に身を落としているのだぞ?そもそも「辞めた」と言って辞められる奴隷なんているものか!」


 「先祖が過去に何をしたかは知りませんが、我々が罪を犯したわけではないのでね。あんた達を肥え太らせるだけの存在でいることにもう誰も我慢できないのさ。」


 「黙れ!」


 男は大きく鞭を振りかぶってゴンゾめがけて振り下ろしてきた。


 考える前に体が動く。


 『神速』で一気に間合いを詰めて振り下ろそうとした右腕の肘を下から支える。


 こうすることで腕は完全に止まり、鞭の先も力を無くして地に落ちた。


 「なっ?」


 驚愕するデブ。


 「悪いけどもう誰も鞭でなんか叩かせないわよ。いや、むしろあなた達が痛みを知った方がいいかしら?」


 驚いて硬直していたデブの手から鞭を奪い取り、横蹴りでデブの腹を蹴るとブニョリと足が食い込んで気持ち悪かったけどデブを後ろにふっ飛ばして距離をとることが出来た。


 「はい。」


 鞭はゴンゾに預けておく。


 ゴンゾも目の前の展開に追い付いていなさそうだ。


 実戦経験のなさが浮き彫りになって非常に先が不安だけど、まだ決起したばかりだから仕方ない。


 オムによると、いきなり誰かが傷ついたり死んだりしてこの勢いがなくなることの方が問題らしいのでそこは私が頑張るところだ。


 「ゴホッゴホッ、き、きさまら、儂にこんなことをしてタダで済むと思うなよ。代官に手を上げるということは領主様に手を上げることと同じだ。全員反逆罪で死刑は免れんぞ!」


 ようやく立ち上がったデブが凄まじい形相で捲し立てる。


 ゴンゾを始め元奴隷達は長年の習慣からか怯えた表情を見せている。


 これでは戦いになっても勝ち目は薄い気がする。


 どうしたものかとオムの方をちらりと見ると、何やら考え込んでいる様子。


 「ミコト、彼らを生かしたまま無力化して捉えて下さい。できますか?」


 「生かしたまま?分かった。やってみる。」


 私が”生かしたまま無力化”というオムの指示から連想したのは単純に手足を使いものにならなくすれば良いかなということだった。


 なので神速を発動して全員の手足をポッキリと折っていく。


 手足に残る骨の折れる感触が気持ち悪いけど、今更だ。


 殺しちゃった方が個人的には早いし楽なんだけど、オムには何か考えがあるのだろう。


 一瞬で骨を折り終わると、全員が地面に転がって痛みにうめき声をあげている。


 元奴隷達の間には驚愕と恐怖のどちらとも言える空気が漂う。


 「オム、終わったわよ。」


 「え?あ、いや、流石だね。ゴンゾさん、皆に指示してこいつらの武器を取り上げて縛り上げて下さい。」


 「あ、ああ。だが、もう何もできないだろう?」


 「ええ、痛みのあまり話もできないから骨折は治す必要があります。その際に暴れられないように今のうちに縛っておいてほしいのです。」


 「治す?」


 「ええ、色々疑問は尽きないでしょうが見ての通りミコトは尋常ならざる奇跡を多々起こせます。時間がもったいないので直ぐに動いて下さい。」


 「わ、分かった。おい、お前ら、太い縄を持ってこい!」


 ゴンゾの声に反応して男たちが荒縄を持ってきて縛り上げた。


 しっかりと縛られていることを確認して骨折を治療していく。


 生命の玉の大赤字だから、またどこかで調達しないとね。


 「オム、これで終わったよ。」


 「いかがですか皆さん。これがミコトの力です。凄いでしょう。さて、ゴンゾさんここからが大事ですよ。」


 「お、おう。どうすれば良いんだ?」


 「簡単です。こちらからの要求を伝えて飲んでもらうか、無理なら拘束するか死んでもらうだけでです。」


 「わ、分かった。おい代官!さっき言った通りだ。俺たちはもう奴隷は辞めた。正当な対価と合意がない限りお前たちのためには働かない。」


 「はん?何を寝ぼけたことを言っている。衣食住共に領主様に面倒を見て頂いている罪人が偉そうに!そんなこと聞けるわけないだろう?」


 「それは領主の言葉だと思っていいのか?」


 「当たり前だ!俺は代官だぞ!」


 「そうか。。。分かった。」

 

 ゴンゾは残念そうに少し目を伏せると起き上がってオムの方を向いた。


 「オム殿、そういうことだそうだ。」


 「そうですか。まあ、予想通りと言えば予想通りですけどね。それでは仕方ありません。代官を含めて兵士を入れて全部で5人。あなた方の手で処刑して下さい。」


 「え・・・?」


 オムの淡々とした処刑の勧めに空気が凍りつく。


 「オム、私がやってもいいのよ?丁度生命の玉も補充したかったし。」


 何とかしようと私が手を下す案を提案してみたが、オムは静かに首を横に振って却下してきた。


 「ミコト、それでは意味がないんだよ。さっきのやり取りで分かったことだけど、彼らには実戦経験がないのと、虐げられ続けたことで戦う心構えができていない。反旗を翻した時点で殺されるか、殺すかの世界に突入している。荒療治だけど、早く荒事に慣れてもらう必要があるんだ。」


 「そう、分かったわ。」


 私が引くとオムは兵士が持っていた剣を鞘から抜き放ってゴンゾに差し出した。


 「さあ、もう後には引けません。これはあなた達の戦争です。ミコトなら1人でも当千の戦いをするでしょうが、それでは誰もあなたについては来ません。あなたが理想とする国を造るならばあなた自身が動かなければなりません。」


 ゴンゾは差し出された剣の柄を握り、縛り上げられている代官の下へと歩き出す。


 「ま、待て!儂を切ろうというのか?領主の代官である儂を?奴隷のお前がそんなことをしたらどうなるか分かるだろう?今なら今日の無礼は忘れてやるから解き放ってくれ?な?」


 「そしてまた明日からこれまで通りお前らに怯える生活に戻れと言うのか?いつ鞭で打たれ、いつ連れ去られ、いつ殺されるか分からない生活に・・・・冗談じゃない。」


 ゴンゾが剣を振りかぶる。


 「ま、待て待て待て待て!待ってくれ!待ってくれ!待って下さい!待っ・・・ブガッ!」


 ゴンゾが振り下ろした剣が肩に食い込み、その衝撃で代官が口を開けなくなる。


 「結構ですよ。完全に致命傷なので放っておいてもいずれ死ぬでしょう。次の人・・・」


 こうして、オムの言われるがままに交代でゴンゾ以外に4人が剣を取って残る兵士達を切っていった。


 終わった時には最初のビクビクしていた雰囲気はなく、ゴンゾ達の顔付も変わっていた。


 「さあ、これが宣戦布告です。代官の首を持って半数はゴンゾさんと一緒に私と来て下さい。残り半数はここで非戦闘員の守りを固めます。ミコトはこちらを受け持って下さい。いざというときは応援をお願いするので、その時はよろしくお願いします。」


 オムがテキパキと指示を出していく。


 私は戦えない女性や子供、老人を守る係だ。


 単に敵を潰せばいいだけじゃない分難しそうだ。


 しかし、オムが私がこちらにいた方がいいというのだからそうなのだろう。


 オムの指示に従ってゴンゾが戦闘員を班分けして、物凄く嫌そうな顔で首を斬り取って髪を掴んで持って出ていった。


 さあ、これで向こうは任せるしかない。


 私は私にしかできないことをやろう。


 さっきオムも言っていたけど、もう後戻りはできない。


 いよいよ開戦だ。


 「」

明けましておめでとうございます。

長らく空けてしまって申し訳ございません。


年末の忘年会ラッシュと大掃除に年始回りと大忙しでした。


皆様にとっても今年が良い年でありますように。


本年も宜しくお願い申し上げます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。