第39話 海鮮グルメ探訪
新しい依頼も受けたし、持ってきたものも買い取りに出したところで2週間ほど暇になったので、まずは宿屋を決めることにする。
別に町の外でテントで寝ても全く構わないのだけど、せっかく新しい町に来たらそこでの暮らしを楽しみたい。
さっき食べたアジの串焼きが物凄く美味しかったので、買い込みがてらお勧めの宿を聞いてみることにしよう。
「おじさ~ん、さっきの串焼きもっと買うからどんどん焼いて。」
「おお、おじょうちゃん。どんどんって一体何本食べられるんだい?」
「お土産にするからあるだけ焼いてくれたら全部買い取るわ。」
「おお、そういうことなら分かった。アジだけでいいのかい?」
「ううん、色々食べたいから全部お願い。」
「全部って・・・・アジにタイにサバにホタテにって・・・どんだけあると思ってるんだ?」
「大丈夫!ちゃんと保存できるから。先にお金払うからジャンジャン焼いて、焼き上がったら私に頂戴ね。」
そこからおじちゃんと私の焼き魚(貝もあった)リレーが始まった。
おじちゃんはただひたすら焼いては私に渡し、私は受け取ったらとにかくサドルバッグと巾着袋に分けて入れる。
美味しそうで食べたことのないものが出てきたらその場で食べてしまうこともある。
そんなことを繰り返してたらすっかりと日が暮れてしまった。
「はぁ、はぁ、おじょうちゃん降参だ。もうこれ以上は焼けねぇよ。」
「どれもすっごく美味しかった。ありがとうございました。ところで、私食べるのに夢中で今夜の宿を取ってないんだけど、いい宿を教えてくれる?」
「ああ、女の子でも安心して泊まれる宿なら領主の館の隣の『海賊亭』がお勧めだ。名前とは裏腹に結構高級だから評判がいいな。」
重労働を課した上に良い情報を頂いたので追加のお礼に金貨を1枚お渡しして宿に向かう。
大量に仕入れた焼き魚がいつでも食べられると思うと思わず顔が綻びてしまう。
宿を取ってブルブルを馬小屋に預けて部屋でくつろぐ。
正直大した部屋じゃないけど、清潔感があって気持ち良い部屋だ。
今日は大量の串焼きの仕入れと試食で終わったので、明日は港に行ってみたりしよう。
チルチルと少し雑談をしながら、心地よい眠りに就いた。
翌朝、目を覚まして朝食を頂きに食堂へと向かう。
朝ご飯は塩漬けにされた小魚にパンとスープ。
塩漬けにされた魚は臭みと塩気が強く、パンにとてもよくあって美味しかった。
スープも味が濃くて美味しい。
腹ごしらえが終わった私は、ブルブルを迎えに行って3人(1人と1頭と1羽)で改めてポートガスの町をうろつき始めた。
まだ時間が早いのかお店は閉まっているが、港の方にはそれなりに人がいそうだったので足を向ける。
どうやら漁に出る準備をしているらしく、網や銛なんかを用意している。
船長らしいちょっと偉そうな人が指示を飛ばしているので、合間を見て声をかけてみる。
「おはようございます。」
「ん、なんだ見かけないお嬢ちゃんだな。旅をしてるのか?」
「いえ、この町にはフリーランスの仕事で来ました。」
「へーあんたみたいなちっこいのがねぇ。どんな仕事だい?」
「今度王子殿下か成人の儀式で赤竜島に向かう時に治癒・回復の役目で同乗することになっています。」
「驚れぇたな。今町はその話で持ち切りだぜ。王子殿下に万が一のことがあっちゃいけねえし、竜の討伐何てもし成功したら本当に偉業だからな。そうかそうか、あんたが噂の回復役か。町を上げてお嬢ちゃんを支援するぜ。」
「ありがとうございます!私、海を見るのも船を見るのも初めてなので、どんな感じなのか凄く楽しみなんですけど不安でもあるんです。もし良かったら、今日の船に一緒に乗せてもらえませんか?」
「おう、構わんぞ。その馬も一緒に乗るのか?」
「はい、慣れてもらう必要があるのでお願いします。」
『ブル!ミ、ミコト様・・・私も乗るのですか?』
『当たり前じゃない。本番では一緒に赤竜島に渡って向こうで活躍してもらう必要があるんだから、今から慣れておいてもらわないと。』
『ううう、前回の瞬間移動での悪夢が・・・・』
『大変ねぇ、地面についてないと落ち着かない馬は。』
『うるさいわね!ちょっと飛べるからっていい気になって!』
『まあまあ、落ち着いて。私も初めてで不安なんだから、一緒に頑張りましょう。』
『ミコト様がそう言われるのなら、頑張ります!』
「ああ、もちろんタダで乗せる訳にはいかんぞ。船員同様しっかりと働いてもらうからそのつもりでな。」
「はい!」
こうして、幸運にも割と大きい船に乗っての漁体験が始まった。
なんだか成人後の研修を思い出す。
ただ、あの時とは違って鞭で脅す人はいない。
初めての航海に胸を躍らせながらブルブルを曳いて乗船させてもらった。




