4 あれ、ここはどこだったっけ…
「ねえ、モグラさん」
「どうした、凜」
「なんかさあ、急に思い出したような気がしたんだ」
「ん?何を思い出したんだ?さっき食った吉野家か?」
「うーん…そうだったっけ…?」
「おいおい、ボケるにはまだ早いんじゃないか?仕事前に大盛喰いたいって言ったのは凜だぞ」
「おかしいなあ、違うような気がするけど…まあいいか。ところで、なんでこんな所にいるの?」
「ん?」
「ここ、私が最初に人を殺めた場所だよ。そうか、後始末をようやく教えてくれる気になったの?」
そうか、凜はここまでか。そろそろ潮時だとは思っていたが…よりによって仕事前にか…
「なあ、凜」
「ん?なに?」
「覚えてるか?俺と初めて会った時の事」
「全く覚えてないよ?忘れろ、って言われたことだけは覚えてるけど、他はなーんにも覚えてない。覚える必要ないって言ってくれたのはモグラさんじゃん、だから私はすぐ食べられる美味しいものがあって、お酒があって、お小言ばっかりいうモグラさんの事しか覚えてないよ」
「そうか…凜、最期の仕事だ」
「さいご?…うん?どういう意味?仕事って?それと、ここはどこだろうね?山の中なのかな?木と草ばっかりで獣道さえない、初めて会った時みたい。あれかな?私は殺されちゃうのかな?口封じの為に」
…そうか、凜なりに覚悟はしていたか。なら、凜の最期を見届けよう。しっかり記憶に焼き付けてやろう、俺が絶対に忘れないように、凜を早く楽にさせてやる。左手に持った日本刀で凜の首をはねる。頭と首が離れて凜の瞼が見開いたまま、俺は凜の目を見て、決心を固めた。
「凜、最初からこうしてやるべきだった、すまなかった。俺は凜を生涯忘れない。ありがとう、凜」
凜の表情は変わらない、変わるわけがない、だが。眼は語っている、さっきの牛丼美味しかったね、ってな。最期まで牛丼の事か、凜らしい。ああ、特別に凜だけは安らかに眠ってもらおうと思った結果がこんなに速く来ちまうとはな。俺の目からなにか出ている気がするが、それを認めちゃいけない。こいつは始末対象、気を持ってはいけない相手、あくまでもただ無に帰すだけの作業をこなしているだけだ、凜に失礼だろう。
その直後、背中に痛みを感じた、しまった、心臓か…クソ、こんなところでしくじっちまった…凜の頭が俺の腕の中から離れちまう。クソ、なんて幕引きだ。なんてクソッタレな終わり方だ。クソが…
俺たちの人生に幕が下りた。殺されたので後の事はわからない。
だからこそわからない、ここはどこだ、何が起きている?山にいたはずの俺は何故雲の上のような『わけのわからないところ』にいるんだ?
左を見たら、凜がいる。俺が首をはねた凜が、しかも首は繋がっている。どういう事だ?
「おい、凜、起きろ」
頬を優しく撫でながら凜を起こしてみる。こいつは一度寝たら簡単には起きない図太い奴だから、もっとアラームを強くしないといけないなとずいぶん昔の事を思い出した。
「あれ、モグラさん…?」
「おう、お目覚めだな凜」
「え、なに?なんで裸?モグラさんのえっちー」
そうなんだよ、なんでお前は裸なんだ?俺は着てるのに。
「あれ、ここはどこだったっけ…」
「さあな、俺にもわからん」
「まあいいか、ねえモグラさん、私と下見しよ?あと服探そうよ、全裸はお風呂と殺しの時のみでしょ?」
ここが天国なのか地獄なのか、それとも違う世界なのかはわからないが、今は凜のいう事に従おう。きっとこれが走馬灯って奴なんだろうからな。最期にいい夢でも見させてくれ、唐突な最期だけどな、凜も俺も。
書いてて胸糞悪かったです。私にアンハッピーエンドは無理だ、と改めて把握できた話。




