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領土拡大①

 途端。

 ゴウメイは蝕まれる。

 目に見えぬ病原菌と、細菌。

 その温床となって。


「グギァァァ!!」


 体の至るところから噴き出す、鮮血。

 そして、臓器が細菌によって侵食されていく。


 次第に黒ずんでいく、ゴウメイの身体。

 つんざく絶叫。

 それを魔物たちと人間たちは、息を飲み見つめる。


 勇者の加護。

 それがもたらす、影響。

 それは自分たち魔物が思っている以上に凄まじく、そして残酷であること。

 それをその胸に刻みながら。


 ふらふらと。


 糸が切れた操り人形のようにふらつきながら、天を仰ぐゴウメイ。


 そして。


「アレンッ、あれん!! 俺はッ、ぜってぇにてめぇを許さない!! いつか生まれ変わったらッ、てめぇの全てを奪ってやる!! は、ははは!! 世界に仇なすッ、悪魔アレン!! 人間を裏切った偽勇者!!」


 虚しく響く、ゴウメイの叫び。


 血飛沫を散らし、皮膚が剥がれ落ち。

 およそ人の最期とは思えないゴウメイの死に際。

 だが、ゴウメイの叫びは収まらない。


「それにしても聖女マリアはいい女だったぜ!! はッ、ははは!!」


 刹那。


 アレンが駆け出すより、はやく。

 ガレアが魔法を発動するより、はやく。


 クリスの剣。

 それが、ゴウメイの首を刎ねる。


 縮地。

 それを使い、一瞬のうちにゴウメイとの距離を詰めて。

 まさしく一閃。

 風を置き去りにし放たれたそれは、クリスの静かな怒りに彩られていた。


 ぽたり。

 と落ちる、ゴウメイの狂笑に満ちた首。

 その首と身体。

 それを有無を言わさず、食らい尽くすケルベロス。


 誰の命があったわけでもない。

 ただケルベロスは、純粋にこの人間ゴウメイがアレンたちの敵であることを認識し行動に移したに過ぎなかった。


 響く、咀嚼音。

 それを聞きながら、アレンはその身を反転。


「……」


 ただその瞳に闇を灯して。


 揺らぐことのない、アレンの闇。

 それに、ガレアもまた同じように闇をたぎらせた。


 世界を闇に。

 ガレアの胸はその思いで埋め尽くされる。


 そして。


「皆の者。必ず、この世界を我らの手に」


 そう声を響かせ、ガレアはアレンの後を追う。

 自らもまた、その目に闇をたぎらせて。


 〜〜〜


 剣聖の宮殿。

 そこでは、魔物たちが人々に薬草を配布していた。

 世界を支配した後の人の統治。

 それの障害を少しでも抑える為に。


「スライムさん。この薬草ひとつちょうだい」


「きゅっ」


 少女。

 その人間にスライムは薬草を渡す。

 器用にその頭に薬草を載せて。


「わぁ、ありがとう」


「きゅっきゅっ」


 少女に抱きしめられ、喜ぶスライム。


「押さないでっ、押さないで!! 魔王様は素晴らしいお方です!! この世界を統治した後ッ、貴方たち人間のこともよく考えてくれていますから!!」


「「魔王様万歳!!」」


 ウンディーネの声。

 それに人々は歓喜。

 それは、少なからず人々も今の世界に不満を抱いている証拠だった。


 そしてその光景を見つめるのはリリス。


「〜〜♪」


 鼻歌。

 それを歌い、賢さ0のリリスは魔物たちに馴染んでいた。


 その魔物たちと人間の様。

 それは、着々と魔物たちの領土が広がっているのを示していた。


 〜〜〜

少しだけ表現を変えました。アレンとガレアが涙を流すという行為に違和感があったので

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― 新着の感想 ―
[一言] こらこら、ケルちゃん、そんな汚いもの食べたらおなか壊すからお止めなさい!
[良い点] 自分には害が少ない自然界に普通に存在するウィルス等によるものとは言え、 「病死して腐敗した物を躊躇なく食べるケルベロス」(知能等アップ中)というシーンから見えてくる物が有りますね。 [気…
[良い点] あの状況でも悪態をつけるゴウメイ。 復活するも良し、勇者と魔王の子供として転生するも良し、次回の活躍に期待しています。 [気になる点] 勇者というシステムがあるとしたら、その加護を与えてい…
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