表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

50/180

9,恐るべし『最愛の恋人』モード。

 


 小梨くんが仲間に戻った。

 めでたい!


 さっそく小梨くんに運んでもらって自宅へ。

 すると自宅前に、不吉な影がある。


「小梨くんー急上昇してー」


「あぁ?」


 小梨くんの反応が鈍い。

 結局、自宅前に降り立ってしまった。

 不吉な影こと早苗さんが、僕に気づく。


「あ、知樹くん。出かけていたんだ?」


「早苗さん。今日、出勤日だよね?」


「それがね。【無限ダンジョン】内で配置替えが行われるらしくて、とうぶん準備のため閉鎖だって。いきなり休みになったから、来ちゃった」


「ふーん。ちょっと早苗さんごめんね。小梨くん、ちょっと来て、ちょっと」


「んだよ」


 小梨くんを家の脇に呼んで、僕は小声で言った。


「『来ちゃった』って、どういうこと? どういう思考回路があったら、事前に連絡もせずに『来ちゃった』なんてできるの?」


「大型トラックで『来ちゃった』した野郎がよく言うな」


「あれは『地獄の上司』モードだったから、ノーカンだよ。けど早苗さんは? いまの早苗さんはなんのモード?」


「そりゃあ『最愛の恋人』モードだろうな」


 そんな恐ろしいモード、初めて聞いた。

 小梨くんは、『最愛の恋人』モードについて説明を続ける。


「最愛の恋人なので、何をしても許されると思っているわけだな。つーより、何をしても相手が喜ぶに違いないと思っている。今回も東浦さんの中では、『来ちゃった』でお前は喜ぶと思ってんだよ」


「うーむ。『最愛の恋人』モードとは、鬼畜だねぇ」


「てめぇのほうが100倍鬼畜だがな」


 たいていの部下は、上司のことが鬼畜に見えるものです。

 僕は早苗さんのもとに戻り、ハッキリと宣言することにした。


「早苗さん。僕はこれから美弥と出かけるからね」


 すると早苗さんが両手をグッと握って、やる気に満ちたいい表情になる。


「やった! 知樹くんの妹さんと仲良くなるチャンスだね!」


 あ、そういう解釈するのだね。『最愛の恋人』モードに勝てる気がしない。

 とりあえず、僕は前提条件を口にする。


「早苗さん。美弥と仲良くなれる人は、サイコパスだけだよ」


「知樹くんの妹さんのことだよね?」


 玄関ドアの向こう、屋内から美弥の声がした。


「兄貴? 玄関の前で何してるのよ? というか、誰かと話しているの?」


 ここで早苗さんを見つけたら、美弥は本気でりかねない。

 だけど早苗さんも戦闘力を上げてきているから、簡単には殺られないよねぇ。

 あれ、意外といい勝負しそう?


 などと考えている場合でもないのだ。


「早苗さん、僕の影の中に入って」


「了解したよ!」


 早苗さんの早脱ぎ速度は、ギネスに乗りそうだった。

 衣服は《影保管シャドウ・ストレージ》で保管してから、僕の影にダイブする早苗さん。


 ギリギリで玄関ドアを開ける美弥より早かった。


「え、兄貴ひとりなの? さっきまで聞こえてきたのは、まさか独りごと?」


「いや、そこに小梨くんがいるんだよ」


 渋々といった様子で小梨くんが顔を見せる。


「あら小梨さんじゃない。まだ五体満足なんて、無断欠勤を兄貴に許されたの?」


「あのね美弥。僕は大切な部下を罰するために、五体満足を破損させたりはしないよ。そんなことより、ピクニックに出発するよ。美弥、おしっこはいいの?」


 美弥が顔を赤らめる。


「兄貴、デリカシーがないわね!」


 しかし、トイレには行くのだった。


 僕は台所にお弁当を取りに行く。

 そのさい影の中の早苗さんに注意しておいた。


「早苗さん、今日は出て来ちゃダメだよ」


「えー、美弥ちゃんとの距離を縮めたいのに?」


「距離を縮めたかったら、余計に出て来ちゃダメだから。一緒にいることに気づかれたら、美弥との距離が離れるだけだからね」


「は~い」


 ちゃんと納得してくれたのだろうか。

 不安だなぁ。『最愛の恋人』モードの早苗さんは、僕の想定を超えていくし。


 とにかく、美弥と一緒に玄関を出る。

 すると小梨くんが指摘するわけだ。


「おい、2人も運べねぇぞ」


「あ、それなら大丈夫だよ。美弥は早苗さんと一緒に、僕の影に入るから。《影同化シャドウ・シェア》でね」


 とたん美弥が鋭い眼光を放つ。


「はぁ、早苗がいるわけ? 兄貴、約束が違うじゃない」


「……あ」


 いやぁ、ウッカリしました。

 


気に入って頂けましたら、ブクマと、この下にある[★★★★★]で応援して頂けると嬉しいです。励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 小梨くんの 「大型トラックで『来ちゃった』した野郎がよく言うな」 にワロタww
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ