8,『地獄の上司』モードです。
『足』が必要だね。
この場合の『足』とは、移動手段のこと。
目指す場所まで電車移動は大変だ。僕はいいけど、美弥が飽きることは必至。
飛んでいきたいものだなぁ。
よし、小梨くんを捕獲しよう。
先日、職務放棄して飛び去って以来、小梨くんは仕事場【無限ダンジョン】に来ていない。
つまり、無断欠勤です。神をも恐れぬ悪行です。
それとも?
もしかして、もう最上級国民に発見されて駆除されてしまった?
そこでこの前、オリ子さんに調べてもらった。オリ子さんの情報網は、最上級国民内にも伸びているので。
すると『巨大コウモリ』が駆除された記録はないそうだ。
ということは、誰かに匿ってもらっているに違いない。
巨大コウモリを匿うとしたら、それは家族くらいしかいないでしょう。小梨くんは実家に戻り、自分が『小梨祐一』であることを信じてもらえたのだ。
そこは家族愛のなせる業だね。
そう思うと感動で涙が出てくる。
家族っていいよね~。
じゃ、捕獲してこよう。
「美弥、僕はちょっと出かけてくるね。帰ってきたら、ピクニックに出発だ」
「オーケー」
小梨家は電車と徒歩で20分の場所にあった。2階建ての一軒家。
門扉のインターフォンを鳴らすと、応答があった。
「はい?」
女性の声、小梨くんのお母さんだね。
「南波知樹と申します。小梨祐一くんとは、一緒に働いていまして。今日はお迎えに来ました」
「祐一はいません」
「本当ですか? 僕は今、『優しい上司』モードです。しかしながら、ここで小梨祐一くんを引き渡していただけなかったら、『地獄の上司』モードに入りますよ。自分で言うのもなんですけど、『地獄の上司』モードは怖いですよ」
「祐一はいないと言っているでしょ!」
「分かりました。『地獄の上司』モードに入ります、残念です」
まず小梨家から離れ、近所を散策。
工事現場を見つけたので、《地獄神》を召喚。
「この現場の責任者の方ですか? そこの大型トラック、お借りしたいんですけど?」
現場責任者の方は、はじめは断ってきた。
そこで僕は《地獄神》を使って、近くの大岩を粉砕してみせる。
「次は、あなたの肉体を粉砕しますよ?」
と言ったら、快くトラックを貸してくれた。
もちろん僕は大型免許なんか持ってない。そもそも普通免許もないし。
まぁ頑張れば運転できるさ。
大型トラックを頑張って運転して、小梨家に戻る。
で、突っ込んだ。
「これが『地獄の上司』モードでーす」
アクセルを踏み込んで門扉を吹き飛ばし、家屋をぶち壊していく。
巨大コウモリが、お母さんを抱えながら飛び出してくる。
大型トラックのエンジンを切って、僕は外に出た。
「小梨く~ん。やっぱりいたんだね~!」
小梨くんが急降下してきた。まずお母さんを下ろしてから、僕に飛び掛かってくる。
「てめぇぇぇ、ブッ殺してやるぅぅぅぅぅ!!!」
「小梨くん。今の僕は『地獄の上司』モードだよ? いいの、そんな態度で?」
小梨くんが《拳落》を発動。
僕の身体を粉みじんにする。
僕が完全再生したのは、小梨くんのお母さんの後ろ。
「か、母さん……」
「それで小梨くん、まだ無断欠勤を続けるの?」
小梨くんは両ひざをガクンと折って、くずれおちた。
「しゅ、出勤する……」
「そう言ってくれると思っていたよ。小梨くんは今でも、僕の自慢の部下だからね」
『地獄の上司』モード、終了でーす。
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