4,楓さんが楽しそうだ。
楓さんより一人でも多く、目の前のSランクさんたちを殺せばいいわけだ。
そうすれば、葉島彰浩さんの居所を入手できる。
美弥、お兄ちゃんは頑張るぞー。
よし。競争ならば、とりあえず相手を妨害しておこう。
《地獄神》の早撃ち。
楓さんの側頭部めがけて、一撃を放つ。
楓さんの皮膚をドリルビットが穿つ──一瞬前に、楓さんが視界から消える。
見下ろすと、姿勢を低くした楓さん。僕に向かって、正拳突きを発動。ただのパンチなのに、これが凄い破壊力。
もろに食らった僕は、バラバラの肉塊にされた。
気を取り直して、紘さんの背後に完全再生。
「なっ、貴様──どうやって!」
驚愕する紘さんが振り返るので、その眉間にドリルビットを叩き込む。
ところが脳まで達する前に、横から蹴り飛ばされた。
誰かと思ったら、楓さんだ。
「ちょっとお姉さん。これ、妨害とかありなんですか?」
「えー。先に妨害してきたのそっちだよねぇ?」
呑気におしゃべりする楓さんへ、紘さんの仲間の一人が攻撃を仕掛ける。
ちなみにその人の名前は、豊田さん。
豊田さんが作り出した巨大な氷斧。これが楓さんへと振り下ろされる。
楓さんは最小限の動きで氷斧を避けると、《神殺し》とかいうコルク抜きを捻る。
とたん豊田さんの顎下が裂けて、舌が引きずり出されてきた。
素朴な感想。舌って、こうして出してみると長いんだね。
豊田さんの舌がネクタイみたいになって揺れた。そんな露出した舌を、楓さんが素手でつかむ。
「よーし、走るよー!」
と言って、本当に走り出す楓さん。
舌を引っ張られる豊田さんも、必死に走る。
「あひゃぎゃきゃああゃぁゃぁゃぁゃぁああああ!!」
走らなきゃ、舌が引きちぎられてしまうからね。
なんか犬の散歩みたいだ。舌がリードがわりだね。
「貴様ぁぁ! 豊田から離れろ!」
と怒声を上げたのは、筒井という女性の冒険者。
全身から刃を出して、楓さんへと突撃する。
「うーん。ボクは百合っけがあるけど、キミみたいな女は好みじゃないや」
またも《神殺し》を捻る楓さん。
とたん筒井さんの後頭部から、猛スピードで脳が飛び出る。脳に繋がっている脊髄も、ずるずると出ていく。
僕はハッとした。
芋ほりに似ている!
いや、そんな感動している場合じゃなかった。
筒井さんの引きずり出された脊髄が、空中でウミヘビみたいにのたくる。さらに僕めがけて飛んできた。
「おっと、っと」
僕の首に、脊髄が巻き付いてきた。先端にある筒井さんの脳が、ぴちゃりと僕の顔に張り付いてくる。
脳脊髄液が鼻に入って、むせた。
こんなことをしている間も、楓さんは庭を駆けている。
豊田さんがこけて、リードが切れた。
つまり、豊田さんの舌がね。
「楽しい散歩だったよねぇっ!」
楓さんが豊田さんの頭を、右かかとで踏みつける。
頭部がぐしゃりと潰れて、豊田さんの目玉が転がり出てきた。
あんなふうに綺麗に頭部を潰せるとは。
やはり楓さん、ただ者ではない。
いやいや、だから感心している場合じゃないよ。
楓さんはもう2人も殺してしまった。
対して、僕はまだ0人。
残りは3人だから、楓さんはもうリーチだ。
このままでは葉島彰浩さんの居場所を突き止められない。
美弥のサプライズ企画が失敗──さらに拗ねる美弥。
これ以上、美弥を拗ねさせるわけにはいかない!
筒井さんの脳をむしりとってから、僕は駆けだす。
狙うは紘さん。
ところが側面から、また攻撃された。今度は楓さんにではなく、保坂という紘さんの仲間の一人に。
「お前たち、いい加減にしろ! このサイコパスどもがぁぁ!」
ちなみに保坂さんは、僕に向かって砲丸を放っている。
この砲丸は、保坂さんが突き出す右手から無尽蔵に射出されていた。それも機関銃なみの速度で。
僕の後ろにあった鹿田邸なんかは、砲丸の流れ弾を浴びすぎて倒壊し始めたくらい。
もちろん砲丸の直撃を受けた僕なんか、粉砕されてしまったよ。
完全再生。
保坂さんの頭上に。
「な、なにぃぃぃぃ!」
落下と同時に、保坂さんの脳天へドリルビットを叩き込む。
体重もかけて、一気に脳を破壊。
「うぎゃぁぁあああああ…………!!!」
よーし。これで僕も一人殺したぞ。
楓さんが楽しそうに笑いながら、
「イコライザー君。なかなかやるねぇ。けどボクはリーチだよ。ボクの有利は変わらずさ」
「勝負は最後まで分かりませんよー」
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