5,やっぱり悲鳴は最上級国民。
ところで、紘さんの額には浅めの穴が開いている。
先ほどドリルビットをせっかく叩き込んだのに、完全に押し込む前に妨害を受けたので。
その穴からダラダラと血を流しながらも、紘さんは召喚獣を出してきた。
「来たれ、アブラル!」
6枚の翼を持つ天使風の異形が現れる。
前回、守谷勝好くんの召喚獣のときを思い返す。あの召喚獣は、《地獄神》に跪いていた。ならば今回も安心安全。
アブラルが突進してきたので、僕は《地獄神》を突き出した。
てっきりこれで止まるかと思ったんだけど。
「×▼□→◎×」
アブラルは意味不明な言語を発しながら、思い切り僕に衝突。
面白いことに、僕の肉体は数多の光の粒子となった。で、光粒子が弾けて飛んでいく。
うーむ。おかしいなぁ。
完全再生したら、楓さんがそばまで来た。
「天使族にモンスターが触れたら、光となって消えるんだよねぇ。ま、キミは復活できるから問題なさそうだけど」
「勝好くんの召喚獣は、《地獄神》を見るなり『陛下』と言って、跪いてくれたんですけどね?」
「ははぁ。キミ、キミ。召喚獣には3種類あるからね。天使族、悪魔族、あと精霊族ね。守谷勝好の召喚獣アドは、悪魔族。だから《地獄神》を前にして跪いた。ボクが見たところ、《地獄神》は魔王級の悪魔族を『解体』して作ったものみたいだし」
『解体』したんだね、オリ子さん。
「同じ族の上位存在だから、跪いてくれたわけですね。で、アブラルは天使族だからそうはいかないと。けどアドは、ちゃんとした言葉を話していましたよ」
「ふ~ん、アドの言葉が分かったんだぁ。通常、召喚獣の言葉を理解できるのは召喚士だけなんだけどね。キミがアドの言葉を理解できたのは、《地獄神》を使役しているからかな」
楓さん、ボクの疑問に対してちゃんと解説してくれる。
やっぱりこの人、親切さんでは?
「お姉さんは親切さんですね」
「え、親切さん? 照れちゃうなぁ」
照れる楓さん。
照れながらも《神殺し》を捻り、僕のハラワタを引きずり出した。
「あー、なんてことを!」
「だからさ、妨害もありでしょ。このゲームは」
楓さんが駆けていく。その方向には、紘さんの最後の仲間がいた。名前は青木さん。
青木さんを殺されては、僕の負け確定になってしまう。
止めなければ。
まずは完全再生してから──
ところが、そこにまたしてもアブラルが突っ込んできた。今回も僕は光の粒子にさせられて、拡散。
どうもアブラルに目を付けられてしまったらしい。《地獄神》を所持しているからかな?
そこでアブラルの背後に完全再生して、《地獄神》の一撃。
ところがドリルビットは、アブラルの皮膚に弾かれる。
あれ。こんなの初めてだ。
それを見て、紘さんが勝ち誇る。けっこう遠くにいるためか声を大にして、
「馬鹿め! 召喚獣はこの世の理の外にいるのだ! そんな通常攻撃で倒せるものか!」
通常攻撃はダメなのかぁ。
というか《地獄神》のドリルビットって、通常攻撃の扱いなの? 一応は、『物理攻撃』を極限の極限まで極めているわけだけど。
いや《地獄神》だって、召喚獣の一種なのだ。たとえ『元』だとしても。
ならば、通常攻撃ではないぞ。
《地獄神》よ、さらなる高みに上るとき。
再度、アブラルへとドリルビットを叩きこむ。
今度は皮膚を貫き、肉を貫通していく。よーし。
「な、なんだとぉぉぉ!」
驚愕する紘さんを尻目に、ガンガンとドリルビットを押し込んでいく。
アブラルは耳障りな悲鳴を上げて、死んだ。
正直、召喚獣の悲鳴は神経にこたえる。
やはり悲鳴は最上級国民に限るね。
アブラルの死体を乗り越えて、目指すは紘さん。
「クソがぁぁ! 貴様のようなモンスターごときに敗北するわけにはいかんのだ! 俺はぁぁぁ、佐伯楓を殺さねばならないのだからなぁぁぁ!」
紘さんの両腕に雷撃が纏う。そして《雷拳》を発動。
「それはモンスターを軽視しすぎですよー、紘さん!」
《雷拳》を食らう前に、《自爆》。
紘さんの背後に完全再生し──
瞬時に振り返ってくる紘さん。《雷拳》を放ちながら、
「馬鹿め! 俺の後ろを取ろうとすることは分かっていたのだぁぁぁ!」
なんか読まれていたようなので、また《自爆》。
「な、なんだとぉぉお!」
と驚愕してくれている紘さんの右側に完全再生。
その右側頭部へと、ドリルビットをねじ込んだ。ぐぉぉぉぉ。
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉ! か、家族のぉぉぉ仇ぃぃぃぃぃがぁぁああああああ…………!!!」
「ダメですよ、紘さん。Sランク冒険者なんですから、家族の仇より僕をちゃんと見てくれなきゃ」
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