6,和気あいあい。
次なる獲物の住所へ行く前に、まずは証拠隠滅。
この豪邸に火をつけて、全て燃やしておく。
庭で業火を眺めてから、小梨くんと合流。
「美弥、彼が小梨くん」
美弥は巨大蝙蝠の異形を見ても、とくに驚くこともなかった。さすが猫娘。すでに魂からしてモンスター。ぺこりと頭を下げる。
「兄がお世話になってます」
「てめぇの兄貴を殺してやりたいんだがよ、俺は」
美弥は小首を傾げてから、僕を見る。
「ふーん。兄貴、男の友情って意味不明なのね」
僕はウムとうなずいた。
「そうだよ美弥、男の友情とは言葉では説明しにくいものなのさ」
拳を振り回して怒る小梨くん。
「何が友情だ、ふざけんじゃねぇ! こんなヤローと友達になった覚えはねぇぞ!」
ツンデレか。
ところで小梨くんが言うには、3人も運ぶのは無理だとか。
つまり、僕と早苗さんにプラスして美弥が加わるわけで。
これに激怒する美弥。
「あたしは軽いわよ!」
「体重の問題じゃねぇ。左右の脚に一人ずつというのが難しいって言ってんだよ」
なるほど。早苗さんは僕の影の中にいるので、持ち運ぶさいには『1人』とカウントできるしね。
「仕方ない。美弥はウチに帰ってな。キーたちの皮をはいで、気分もスッキリしたよね?」
「そうね。あたしはもう満足したわ。そもそも守谷勝好は兄貴の獲物だしね」
早苗さんが影から顔を出して、
「あのさ。美弥ちゃん、そんな恰好で帰ったら職質を受けるよね絶対」
「ネコ耳のこと?」
「じゃなくて、返り血で血まみれなこと」
そういえばそうだ。キー一家とお友達の返り血で、美弥は真っ赤に染まっている。当人は『血液ってポカポカしていて気持ちいいのよ』と言っていたが。さすが猫娘。
「そこで、わたしの新スキルの出番だよねっ!」
新スキルの出番も何も、早苗さんはこれまで僕の足を引っ張っていた記憶しかない。
「わたしの《影同化》なら、一人だけ一緒の影に入れることができるよ。つまり美弥ちゃんは、知樹くんの影に入れるってこと」
「それなら小梨くんに運んでもらえるね。じゃ、やっぱり計画変更~。美弥も同行しなさい」
ところが美弥が嫌そうな顔をして、
「兄貴の影に入るとか、近親相姦っぽい」
「……いやどこが?」
「影に入るって、セックスの暗喩でしょ?」
「……違うよ」
消防車と警察車両で、高級住宅街も騒がしくなってきた。さっさと出発したほうがいい。
というわけで、深読みしたがる美弥を影に押し込んで、僕自身は小梨くんの脚につかまる。
「いいよ小梨くん」
「畜生が。行くぞ」
飛翔。
次なる住所をスマホナビで確認しつつ、小梨くんに指示。
街灯の明るい通りなどは避けつつ進み、50分ほどで到着。
今回はタワーマンションだった。そこの78階。
せっかくなので、小梨くんに78階まで突撃してもらうことにしよう。
ところが小梨くん、怖気づく。
「ふざけんじゃねぇ。あんな高いところまで飛べるかよ」
「翼があるならどこまでも飛べるって!」
「んな小学生のポエムみてぇなこと言われても、飛べねぇもんは飛べねぇんだよ!」
「《飛翔》スキルを進化させるときだよ! ほら飛んで! 飛ばなきゃ処分コースだよ!」
フロアボスとして、時には部下のモンスターに厳しく当たることも大切なのだ。それこそが飛躍へとつながる。
小梨くんもまさしくそうだった。
急激に高度を上げ、一気に目当ての78階へ。
そこの窓に飛び込んで、室内へと転がった。
僕も転がっていき、壁にぶつかる。
「やればできるじゃないかっ! さすが小梨くん!」
40代の男が駆け込んできて、
「な、なんだお前らはっ!」
瞬間、僕の影から飛び出す美弥。
《闇黒の爪》を一閃。
首が切断──からの、パーンと飛ぶ頭部。
で、床を転がる。
しかしこの生首、守谷卓のものではないぞ。
そもそも守谷卓って、タワマンに住んでいるイメージじゃないけど。どちらかというと、城塞のような豪邸。
すると、この家は──別の取り巻きの住所を教えられたのか。
「この人、殺して良かったのよね、兄貴?」
「部屋を間違えてなければね」
その後、部屋は間違ってないことが判明し、一安心。
気に入って頂けましたら、ブクマと、この下にある[★★★★★]で応援して頂けると嬉しいです。励みになります。




