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り・くりーげりん 童話少女戦記  作者: 蒲生たかし
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第12話 カエルの王子様と世界を満たす悪意

第12話 カエルの王子様と世界を満たす悪意


赤ずきんのメイジー、マッチ売りのアンネ・マリー、武器商人のヘンゼルに鍛冶屋のグレーテル、髪長姫ラプンツェル、親指姫のサンベリーナ、そしていばら姫のラリーナ。


七人はカエルの王子が住むという沼地へと進んだ。


これといった妨害もなく、カエルの拠点と思しき砦に辿り着いた。



「これは、これは大勢のおこしで」


砦の主が現れた。


人間ほどの大きさになったカエルだ。


「今日は、お客がたくさん来る日らしい、さっきもネコのお相手をしてね」


カエルは長靴を皆の前に放った。


「長靴をはいたネコを」


カエルをよく見ると手には一冊の本を携えていた。


その本を開くなり何かを書き始めた。


すると、本から巨大なドラゴンが現れた。


「カエルが大きなヘビを出すだなんてありえないっす! カエルはヘビの餌でしょうが!」


「アンネ・マリー、いいからダイナマイトで援護して」


「はいはい」


アンネ・マリーは幾つかのダイナマイトに火を付けドラゴンに投げつけた。


そのダイナマイトをドラゴンは炎でなぎ払った。


「ありゃりゃ、こりゃまずいわね」


メイジーは日本刀でドラゴンを切りつけたが鱗にうっすらと線が入っただけだった。


「これなら、どう!」


ラプンツェルは髪につけた鉄球を遠心力の力を込めて叩きこんだがドラゴンには効かない。


ヘンゼルは自分の武器を全て試すもドラゴンには効果がない。


グレーテルのハンマーもタリーアのレイピアも、当然ながらサンベリーナの針の剣もドラゴンには効かない。


「打つ手無しってやつだな」


ヘンゼルが息を切らせながら言った。


「思いついたんだけど、勝てないドラゴンより、ドラゴンを呼び出したカエルを先にやってしまわない」


アンネ・マリーは提案した。


「よし、作戦だ。俺とラプンツェル、アンネ・マリーでドラゴンを引き付ける。その好きにグレーテルたちでカエルから本を奪ってほしい」


ヘンゼルが作戦を伝える。


「本? 本がどうしたの?」


グレーテルの問いにヘンゼルが答える。


「あいつが本に何かを書いたらドラゴンが現れた。鍵はあの本だ」


「なるほど、そんじゃあ派手に第2ラウンドっしょ!」


アンネ・マリーは大量のダイナマイトをドラゴンに投げつけそれが合図となった。


ダイナマイトはドラゴンの炎で爆発しあたりを煙が包んだ。


その煙に乗じてメイジーたちはドラゴンを越えカエルの元に駆ける。


「本を奪うより、殺ってしまう方が楽」


「やれるものならね」


メイジーの刀を剣で受けカエルが答えた。


タリーアが続けて切りつけるもカエルはもう一本の剣でそれをなぎ払う。


さらにタリーアがハンマーをカエルに叩きこもうとしたがそれも避けられた。


「意外だったかい? 元は王子で少々剣を嗜んでいてね」


メイジーやタリーアの剣は何度かはカエルの身体を捉えてはいたが、身体のヌメりで傷がつかない。


「あのヌメリが厄介」


「本当、全くですわ」


「ではこれを使いましょう」


ヘンゼルは二人に焦げた木片を渡した。


「これは?」


「いいから、それで奴を叩き続けて」



二人は木片でカエルを叩き続ける。


「おやおや、剣が効かずに気でも触れましたか」


「頃合にね、二人共、剣を!」


二人は居合にてカエルを切りつけた。


真っ赤な血がカエルから吹き出した。


「な、なぜ……」


「知らないの?ヌメリには炭が効くんだよ」


一瞬の隙を付き、サンベリーナがカエルの本を糸で結んだ。


「今です! メイジーさん!」


合図でメイジーは糸を引きカエルから本を奪った。


『カオスノート』と表紙に書かれた本。


メイジーが中をみると色々と書かれていた。


「魔獣となったオオカミが赤ずきんを襲う」

「巨大化した三匹の子ブタが街で暴れる」

「長靴をはいたネコが人を殺しまわる」

etc


これまで起こった様々な事件がそこに記されている。


書いた事が現実になるノート。


メイジーは最後に書かれたドラゴンのページを破りとった。


するとドラゴンはスっと消えた。



縛られたカエルが目を覚ました。


「やっと目が覚めたか。さぁ、質問の時間だ」


「本を奪われた私には何も残っていない。好きにしろ」


「この本はどこで手に入れた?」


「ハーメルンの笛吹き男だ。奴がカエルの呪いで100年苦しむ私にその本を渡した」


「この本は何なんだ?」


「悪意を込めて書くと、それが現実になる。男はそう言っていた」


「自分の呪いはとけないのか?」


「試したよ。だが無駄だった。ところで、私はどうなる」


「どうしたもんだろうかね」


「ならば、その本を燃やせ」


「燃やせば分かる」


「まさか、俺たちを騙すつもりじゃないだろうな」


「この状況で何ができる?」


「とにかく燃やしてみるっす、何か起こったらその時はその時っしょ」


アンネ・マリーはマッチで本に火をつけた。


本が燃えると、カエルが黒い炎に包まれた。


「おい、どうゆうことだ!」


「終わらせ方だ、笛吹き男が言っていた。最後は本を燃やせってな。今までばら撒いた悪意が自分に帰ってくるってな」


元凶の正体が分かった。


皆はハーメルンへと向かった。

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