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神の子  作者: 櫻塚森
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これからの戦略

白妙を覗く7人が静香と言う街で再び出会った。

僅か数ヶ月の間であったにも関わらず、皆が大人びて見えた。

「雷紋、どういうことだ?」

この街で聞いた情報と、可燐や紅蓮が聞いた黒尽くめの女の言葉がまるで違うのだ。

龍綺も慈音も不思議でたまらない。

「もし、敵が芳崖じゃないなら、やっぱり敵は国王なのか?」

考え込んでいる雷紋が言葉を発した。

「龍綺…、白澤が言ってるんだけど、龍神の巫女…お妃と話をしてみてはどうかって…。」

キョトンとする龍綺。

「そうだね、龍綺くんは、龍の御子だから、龍神の巫女であるお妃様とは離れててもお話できるかも!!」

龍綺は内なる獣に問いかけた。

(黄龍?できるのかそんなこと…。)

神の子同士なら、声にしなくても話が出来る。

(龍綺が八龍の玉をすべて集めていないと無理だな…。)

がくりと頭を垂れる姿に龍綺の返事を理解した一同であった。

「龍神の玉って、あと何個集まればいいの?」

月凪が尋ねる。

龍綺の元には、黄龍・青龍・白龍・緑龍の4つの玉があった。

「はっきり言って、玉のこと忘れてた…。」

龍綺は改めて落ち込んだ。

「あと4つか…今、この国がどういう方向に進んでいるのか分からないからなぁ…。」

「あー、りゅーの捜す!!」

皆が暁の方を見る。

「暁は、黙ってなさい。」

龍綺の言葉に暁はぷーっと頬を膨らます。

「だって、ソレないとりゅー強くならない。龍神の巫女?さまとお話できないでしょ?」

「まあ、まあちょっと落ち着いて…。兎に角、龍綺がしなきゃいけないことの1つ、龍の玉集めは達成してないんだ。あと、父さんにも会えてない。王都にくれば慈音も父さんに逢えると思ってたけど、凱漸皇子は囚われてしまったし…。」

「王都には、なんか特別な結界が張られてて…たぶんかなりの力を使わないと入れないと思うの。」

今回の旅で月凪が結界関係の情報を察知する能力に優れていることが分かった。

「何かを仕掛けるために結界を張っているんだと考えているんだけど、奴らが何を考えているのか分からないんだ。この街で流れている噂も何処まで本当なのか…連れていかれた子供達がどうなっているのか、中の様子を知る人と連絡が取れるのが一番なんだ。」

そこで、と雷紋は前置きをして、今後の方向性について話し始めた。

「大きな賭けになるかもしれないんだけど…。」

皆を見る。

「流刑島に行って、親達を助け出す組と…龍の玉を捜索する組。そして、この街から王都を見張る組に分かれてみてはどうかと思うんだ。」

皆がざわつく。

「今、各地域の社にいる人達が、神の子について、間違った考えを正すために動いてくれている。それに、いろんな力が王都に集まっているせいか、各祠の結界の修正とかもしやすいみたいだし。」

「自由に動くんやったら、今しかないかもしれんへんな…。」

「だったら、俺は流刑島に行く。母さんを助けたいし…。親父って人も見てみてたい。」

慈音の言葉。

「やったら、俺も行くわ。」


可燐がえっという声を出した。

「なんや、えらいメーワクな女も捕まってしもうとるみたいやし。」

紅蓮は、母の美麗が捕らえられていることを感じていたが可燐には言っていなかった。

「何?親がいないのって、私と暁だけなわけ?」

可燐が暁と自分を見て言う。

「親だと思ったコトないけどな?」

紅蓮は月凪を見る。彼女も苦笑してそれに頷く。

可燐は、両親と言うものは子供のコトを一番に考える、どんな時も味方でいてくれる存在なのだと思っていたため、紅蓮の言う言葉が信じられなかった。

「そ、そんなコトないよ、絶対、お母さんは紅蓮や月凪のこと思っているよ。」

力説する。可燐は決して自由ではなかったが家族から貰った愛情は確かに存在していたと胸を張って言えることだった。

「親にだって色々あるんやで?ココにはおらへんけど白妙の親は、自分等の生活の為に白妙を山に捨てたんや。」

呆れたという顔で可燐をみる。

可燐は自分がそんなにも世間知らずなのかと恥ずかしくなっってしまった。

「紅蓮、あんまり可燐を責めないように。」

自分を庇ってくれる雷紋にぱっと視線を向ける可燐。

「雷紋…雷紋は、私と同じだよね?子供のコトを思わない親なんていないよね?」

縋るような瞳。

「…まぁ…人間に色んな人がいるのと同じで、俺は、親も千差万別っ思うけど?」

いつも通りの表情であっさりいう雷紋に可燐は味方を失ったようにしゅんとしてしまった。

「可燐のおかんとおとんは、ええ親やったんやろ?それでええやん。俺と月凪や白妙は、そういう縁がなかったんやって。」

紅蓮が可燐の頭をくしゃっと撫でる。

可燐を落ち込ませてしまったことを悔やんでいるような紅蓮の顔に可燐はまたしゅんと落ち込んでしまった。

出会った時から、太陽のような明るさで自分に接してきた紅蓮。

2人でいる時も自分ばかりが両親のコト、兄のコトを話し、自慢にしてきた。

紅蓮の父親が化け物に殺されたということは彼から少しだけ聞いたが、母親のコトは聞いていなかった。

彼は自分のコトを多く語らなかったのだ。

「私も、流刑島に行く!」

可燐は涙を溜めた目で訴えた。

その言葉にはみな愕然とした。

雷紋の計画では、この街に残るのは月凪と可燐だとしていたからであった。

「えっ?」

「私は、誰が何と言おうと行くから!決めたから!!」

彼女は、紅蓮と月凪の母親に問い詰めてやろうと考えたのであった。

言い出したら聞かない性格である彼女のことを紅蓮は理解しており、ため息を吐いた。

「あかん、もう可燐を止められへんで。」

「言っておくけど、俺は玉を捜すから。」

「あーも!」

雷紋はちらっと月凪を見る。

「まさか、君まで行くとか言わないよね?」

念押しをしてくる雷紋に月凪は何も言えなくなった。

「俺は、雷紋は残るべきだと思う。」

「えっ?」

「雷紋は、イズナを使って離れた場所でも俺達に状況を伝えることが出来るだろ?それに、分析もしてくれるし、」

結局、流刑島には、慈音、紅蓮、可燐。龍の玉を捜すのは、龍綺、暁。居残りは、雷紋と月凪となった。

「情報は逐一流す。それと、」

雷紋は自分の荷物から小さな袋を取り出した。

「コレは、俺が作った薬。白澤が持ってきた『神通丸』の成分が入ってる。ピンチに陥ってるのに体力の限界って時に使ってみて。」

密かに副作用のコトを考える一同。

「コレ飲んだら、何が起きる?」

「人間と言うのは、普段はその力を半分も使っていないんだよ。その力を8割以上引き出せるんだ。つまり、馬車馬の如く身体を酷使できるって代物。」

「…副作用は?」

雷紋は少し黙った後尋ねた。

「知りたいの?」

皆が声を揃えた。

「当たり前だ!!」

雷紋がため息を吐く。

おいおい、ため息吐くところじゃねーだろ…と心の中で突っ込む。

「…危険なものじゃないよ。飲んだ後、2週間は、色気倍増ってだけ。」

「色気?」

「モテモテになるだけだから、危険じゃないでしょ?(性別問わずだけど…。)」

龍綺、慈音、紅蓮の3人は互いに納得しかねるといった顔であったが、使わないですむことを祈りながらその薬を受け取った。


「また、寝ないつもりか?」

宿屋のベランダで長いすに凭れている慈音に龍綺は声をかけた。

振り向いた慈音は苦笑を浮かべている。

「んー、白妙はどうしてるかなって…何時帰ってくれるのかなって。」

今度は照れた笑いだった。

「龍綺…。」

「んっ?」

隣の長いすに腰を掛けた龍綺に慈音は呟いた。

「人を好きになるって辛いことが多いなーって…俺が、もっと木蓮姐さんに目を向けていれば…こんなことにはならなかったのかな…?白妙への気持ちを隠してでも、木蓮姐さんの気持ちに答えていれば…白妙を傷付けなかったのかな…。」

月を見上げる。

「人を好きになることが全て辛いことだとは思わない。だってさお前、白妙に逢えて嬉しそうな顔してたじゃん。初対面の時から、バレバレの顔してさ。だから、木蓮太夫は、焦ったんだろうな全くの負け試合に。だから、自分のことばかりでお前の気持ちや白妙の気持ちを無視しすぎだ。お前は悪くない。好きになったからって、何をしても構わないなんてコトない。好きな人を悲しませていることに気付かない太夫は、その時には既にお前の好きだった太夫じゃないってことだ。」

「うん、あんな…人を傷付けられるような人じゃなかったんだ…。でもこれ以上皆を苦しめるのなら…。」

新たな決意。それは、少年を大人に変えるには十分なものであった。


つづく

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