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第四話 仲間

この作品はフィクションです。実在の人物や団体とは関係ありません。


深夜何時くらいだろうか。


「おい、起きろ」


暗闇の中の小さな声、俺は突然何者かに起こされた。


「お前馬鹿だなー。あの設定でやり切れるわけないじゃん。」


起きたばかりだし、暗闇でよく分からなかった。設定?一体何のことだ?


しばらくして顔が見えた。


あ、この人は。


傷の男だった。


「な、なんで?!」


思わず声を上げた。


「しーっ、静かに。今助けてやってるだろ。」


彼は口に人差し指を当てた。


「二人して捕まっちゃうなんて。俺らついてないなー。」


さっきからこの人は何を言ってるんだ?俺を助けてくれるのか?


「俺を助けてくれるんですか?」


「ああ、そうだ。俺って優しいだろ。」


こんな時に冗談を言ってきた。まだ聞きたいことが沢山ある。


「設定って何のことですか?」


「は?」


彼は心底びっくりした顔をした。


「さっきは兵士の前だから集合場所の話は避けたんだろ?」


「何のことですか?集合場所ってなんですか?」


彼はまたびっくりしていた。


「あれ、人違いかな。」


彼は頭を掻いて悩んでいた。


「おふざけなしに本当に何にも知らないの?」


「はい、何のことやら。」


この人は何を話しているんだ?


「じゃあ、説明するね。」


ため息をついた。


「俺はここに潜入調査に来たの。現地にお前と似たような日本人がいるから。赤い扉の地下室がある建物で待ち合わせだった。待ってたのに来ないから外を見に行ったら兵士に捕まって...今に至る。」


潜入調査?つまりこの人はスパイなのか?


「そしてお前を見た時に、なるほど捕まってたから集合場所に来なかったんだって思ったんだが」


「お前は何にも知らないんだな。」


ようやくわかった。設定ってここにワープしたっていうことか。まあ、本当のことなんだが。


「俺は兵士たちに旅行で来たけど内戦で帰れなくなったっていう設定で話したんだが....お前頭でも打ったか?なんでここに来たんだよ?」


この人はスパイなんだ。俺はスパイに仲間だと思われてたんだ。


「俺は何にも知らずにここに来てしまって。信じてもらえないと思うんですけど、本当に目が覚めたらここにいて。」


必死に説明した。


そのとき。


扉の外から走る足音がした。


傷の男が慌てて立ち上がった。


「しーっ、とりあえずお前はベッドに戻って寝たふりしてろ」


俺も慌ててベッドに戻った。


彼は俺のベッドの下に隠れた。


しばらくして兵士が二人ほど入ってきた。


何かを叫んでいる。


多分脱走がバレたんだろうな。


兵士が俺に銃を向けてきた。


「Stand up!(立て!)」


俺は急いでベッドから立ち上がった。


もう一人の兵士が部屋中を探している。


そして、ベッドの下。


まずい、そこを見られたらバレる。


バレたら俺も同罪?殺されるんじゃないか?


しかし兵士はもう覗き込もうとしていた。


あと少し。


あと少し。


バシッ!


殴る音。


ベッドの下の男が兵士を殴ったのだ。


兵士は呻き声を上げ、倒れた。


俺に銃を向けていた兵士が気づいて、彼に銃を向けた。


しかし男は銃を向けるよりも速く動いていた。銃を奪い、兵士を思いっきり銃で殴った。兵士はすぐに倒れた。


俺はその様子をただ呆然として眺めることしか出来なかった。


「着替えろ。」


男は倒れた兵士の服を脱がせながら言った。


「わ、わかりました。」


映画でよく見るやつだ。気絶した敵の服を着て敵に紛れ込むやつだ。実際にスパイもやるんだな。


しばらくして着替え終わった。


「流石に顔でバレるからな。」


そう言い彼は布団を兵士のナイフで切り裂き始めた。そして切れ端を俺に渡した。


「これ顔に巻け。」


確かに。中東の兵士ってそういう格好の人多いかも。


気絶した兵士2人をベッドの下に詰め込んだ。賢太と傷の男は扉を開け、廊下に出た。


外は兵士たちが忙しなく走り回っていた。


男は黙って一直線に歩き出した。俺はそれに着いて行った。


騒ぎの中を通り過ぎ、建物の外に出ることが出来た。


しかし外にも兵士は沢山いた。なんなら、建物の中よりも沢山いた。


それでも傷の男は平気な顔で歩く。俺は彼に小声で聞いた。


「本当に逃げられるんですか?」


男は小声で言い返した。


「コソコソするから怪しまれんだよ。黙ってついてこい。」


スパイが言うならそうなんだろうな。俺は妙に納得してそのまま歩いた。


しばらく歩いた後、人がいない路地裏に着いた。すると、彼は軍服を脱いだ。


「とりあえずこの服は脱いでいいぞ。ここからは逆に怪しまれる。」


男に言われた通り俺も脱いだ。


「はあ、これからどうしよう。」


男がため息をつきながら言った。


「あ、あなた分からないんですか?」


「わかるわけねぇじゃん。車乗せられてから場所わかんねぇよ。」


そりゃそうか。スパイでも流石に分からないよな。


「でも俺たちは北に向かえばいい。」


「北?」


「お前世界地図覚えてる?」


「いや、シリアの北になんかありましたっけ」


思い出せない。シリアって地中海らへんにあるのは知ってる。北ってことは上だよな。


「正解はトルコだよ」


へー、そうなんだ。改めて自分の教養の無さを思い知った。男は続けて言った。


「今トルコでは多くの難民を受け入れてるんだ。国外に逃亡するならトルコが1番かな。」


俺は口を開いた。


「でも北には反体制派の領土がある。つまり、北に行くにつれて前線に近づくことになる...ですよね。」


今日、尋問官から聞いた話だった。反体制派と政府での内戦。彼は驚いた顔をした。


「なんだ、知ってんじゃん。その通りだよ。」


ちょっと照れくさいな。


「よし、わかったな。俺たちの目的地はトルコ。」



夜の路地裏で俺たちの脱出劇は幕を上げた。


第四話 完


やっと物語が始まってきましたね。

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