第29話 吾輩はポチである。
ミルフィの処遇について、副委員長は殺すことを俺に提案する。
こう言うタイプは後腐れないように息の根を止める必要があるらしい。
流石にそこまでやらないわ。俺は懸命に副委員長を止めた。
この世界で前科持ちにはなりなくないし。
副委員長がぷくっと顔を膨らませて不服そうにする。
「だって西宮君のお顔をボコボコにしたんですよ。やっぱり許せないです」
俺が珍しく怒ってる彼女の頬を突いてみる。
ぷいっとそっぽを向けられる。
「まあまあ。俺にもっといい方法があるからさ。」
俺は副委員長を宥めて、邪悪な笑みを浮かべて耳打ちする。
副委員長は目を輝かせて天才を見る目で俺を見る。
「すごいです!西宮君。これで精神的なトラウマのを植え付けてじっくり長く苦しめると言うことですね!」
ふははは。
ミルフィよ。社会の厳しさを教えてやろう。
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「んっ?!?! んんんんんっ?!」
どうやらミルフィは目を覚ましたらしい。
俺は公園で木の上に縛られたメスガキゴリラを見上げる。
夏のセミ 鳴かずに縛る 新種かな
俺は感心してそれぽっく俳句を書く。
新種のメスガキセミは塞がれた口と身動きが取れず木の上でジタバタしている。
ガムテープでぐるぐる巻きに固定したからな。
俺は副委員長に拘束技術のい・ろ・はを教えてもらったのだ。
胸元にも俺の廃棄した段ボールで『私はざこざこセミです♡』と書いておいた。
我ながら素晴らしい作品である。
俺は満足げにうなづく。
新種のセミは羞恥心からかミンミン泣きながら暴れている。
俺を殴りたいらしい。
俺は副委員長のスマホでミルフィのセミコスプレをしっかり撮影保存していると、副委員長が2人分のミルクティーを買って帰ってくる。
ミルフィは怯えて恐怖でガタガタ揺れる。
セミにも天敵がいるらしい。
「どうかしましたか?♡」
副委員長は木の上の彼女に威圧を飛ばす。
新種のセミは口から泡を吹いて昇天した。
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「ねえ、ママ見てみて、あのお姉ちゃんセミになってるよ!」
「見ちゃダメ。あれはただの変態です。早く行きましょ。」
「バイバイ!変態セミのお姉ちゃん!」
毒舌親子に耐えかねてミルフィは燃え上がるような怒りに震えた。
誰が変態セミだよ!こうなったのも全員あのクソジジイのせい。
今度あったら覚えてろ!!
絶対絶対ミンチにして豚の餌にするからああああああ!クソジジイいいぃいい!
今日も、どこかの公園で新種のセミの鳴き声が聞こえたとか聞こえなかったとかしたそうです。
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吾輩はポチである。
名前はもうある。
どこで暮らしているかというと寝室である。
吾輩はここに閉じ込められている。
ミルフィ戦以降トイレも監視付きになったのである。
吾輩実にぴえんであり、ぱおんである。
今はペットのように副委員長に甘えるのが日課である。
副委員長は愛が重いのである。ずっと吾輩の腕を抱いて離さないのである。
某日
あー。やーめた。やめた。
俺は某口調での日記を書き終える。
俺は今、脱獄した罰で猫耳をつけている。
一日のうちで監視が外れる時間が少しだけある。副委員長がご飯を作ってくれる時だ。その時だけは俺のプライバシーが守られる。
俺はその時間を日記に当てている。最近できた趣味なんだ。書き始めて三日ぐらいかな。
ずっと俺に付き添ってくれるのはありがたいが、もうちょっと自由が欲しい。
俺はため息をついて。
副委員長が用意してくれた棒状のスナックを口に咥えてタバコみたいにふかしてみせる。
ふうー。男はつらいぜ。
脱獄した罪悪感は一ミリぐらいはある。あとは、彼女を下手に刺激しないためだ。
俺はここ1週間ちょっとの付き合いでよく知っているのだ。
「ご飯できました♡ 西宮君!はい。あーん。♡」
「わん!」
「よしよし。西宮君。いい子ですよ。うふふふ。」
飼い主が俺の頭を撫ででくれる。
俺は彼女の胸元に頬ずりする。
「くすぐったいです。ふふふ。」
俺の新性癖の扉は開かれていくのだった。
ポチはとても幸せなのである。
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「そういえば、副委員長てずっと呼んでたけど。俺まだ副委員長の本当の名前知らねーぞ。」
俺は真剣になって彼女と向き合う。
彼女の手と恋人繋ぎしてると、その繊細な指がまるですぐにでも壊れそうな芸術品に思える。
窓から見えた満ちた赤い月と青の月は交差して絶景を形成している。
妖艶な光が彼女横顔を照らした。
「私は繧コ%縺ソ/@と言います。」
なぜかノイズが入っててうまく聞き取れない。
なんて言ってるんだ?
「もう一回言ってくれないか?さっきは聞こえなかったぜ、副委員長。」
「?ええと励※菴、繧コ%縺ソ/@です。聞こえましたか?西宮君」
???俺は試してみたがやはり聞き取れなかった。
まるでシステムがわざと妨害しているようで彼女の名前の部分だけノイズに変換される。
俺は慌てて彼女を止める。嫌な予感がする。まるで何か大きな意思から彼女の名前をここで聞くことを拒絶されている気がする。
このままこのやり取りを続けるのはまずい。
俺はフォローを飛ばす。
「ごめんごめん。聞こえたわ。やっぱ副委員長の方が呼び慣れてるから。俺しばらく心の準備ができるまで副委員長て呼び続けていいか?」
彼女は月を見るのをやめて俺の方を振り返る。
サラサラの髪が、窓から流れ込んでくる新鮮な空気の中で風に流れる。
怪しいハートマークが瞳の中で煌めいた。
「いいですよ。西宮君。」
組んだ指の力強い絡みに俺は心の底から恐怖を覚える。
さっきまでよく知っていた少女がまるで得体のしれない化け物になったかのようだ。
今まで目の中のハートマークは時々チカチカついたり消えたりしたことはあったが、つけっぱなしになることはなかった。
あったとすればそれはもうかつての彼女ではない。俺は理由をつけて指を解こうとした。
「副委員長、俺ちょっとトイレに行って来たいかも。今大がジェット噴出しそうなんだ。ちょっとだけ鎖外してもらってもいい?」
悪魔は俺に早く戻るように諭して外す。
俺は命拾いしたと思い、急いでトイレの個室中に閉じ篭もる。
数分もしないうちに
外からは水色の悪魔の静かな声が消えて来た。
「大丈夫ですか?西宮君。お腹を壊したんですか?」
いつもの副委員長の純粋な優しい音色に聞こえない。
わざとらしい不気味な猫撫で声で悪魔は囁く。
俺の全身の皮膚が鳥肌を立てるのだった。




