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サディリアル・ドローアウト  作者: ジョーカーX号


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第26話 ホームレスおじさん

バーン!バーン!


壁に人の頭サイズほどの大きさの穴を掘れた。


かれこれ1週間ほどコツコツ掘り続けた成果だ。


副委員長の行動もしっかり把握している。俺に甘くて外出すると20-30分ほど時間が空く。


学校はあれから1日だけ行ったみたいだ。彼女が8時に出て17時には戻ってきたので、おそらく学校からこの家の距離は遠くない。



俺はわかったことをメモ代わりにティッシュに書いて掘った穴の中に隠していた。


今日は再びの登校とのことで、俺は朝から必死にバールを振り続けていた。ラストスパートで壁の向こうがかなり硬い。できれば今日中に壊して今日出ていきたい。


持っていくものもしっかり揃えたしな。


俺は例のカセットを右ポッケに忍ばせる。


にしても硬ええ。


柱にでも当たったのか?


バールを跳ね返す硬いものに俺は汗を拭って、根性でぶつかっていく。


おら。力こそパワーだ!!!


正午まであと1時間!


一一一一一一一一一一一一一一一一一一


勝利のオレンジジュースをグラスに入れて飲む。


冷蔵庫に置いてあったやつだ。


副委員長が俺のために用意してくれたマイグラスにドバドバ入れて、喉を鳴らして飲んでいく。


ひんやりしてて気持ちいい、美味い。


この家に未練はぶっちゃ……


めっちゃくちゃある。


副委員長は地雷踏まなきゃ優しいし。


俺のこと大好きだし。


おっぱいでかいし。


思い返えせばここ1週間、彼女と一緒にゲームしたり、アーンしあったり、お互いの下着を交換して嗅いだり我ながらとても充実していて、この世界に来てからでは珍しい落ち着いた日々だった。


でも悪いな。


俺はここに留まっちゃいけないんだよな。


虹も待ってくれてるし。


何より彼女は俺を『攻略』させるつもりがない。


どうやら1ヶ月生存に加えてその『攻略』とやらもクリアには必要らしい。


俺はこの世界に定住するつもりはない。


だが俺は君のことを忘れない。そう誓い左ポッケの中のお土産ブラジャーを強く握りしめるのだった。


穴は朝からの苦労で俺の胴体がギリギリ入るほどの大きさになっていた。


地面は壁の屑がそこら中に散っている。


おっとそろそろ行かないとな。


時間は16時になっていたわ、

いつも通りならあと1時間ある。


でも突然早く帰るかもだし、早めに行こう。


俺はグラスを洗ってから穴をつたって外に出ようとする。


まずは頭を突っ込んで外の様子を見る。


裏庭のようだ。塀は….


俺がひっくり返れば通れそうだな。


俺は早速グリグリ体をもぐませる。


腰が引っかかって痛い。


俺はポッケ中身のものを先に壁の向こうに先に投げ込んだ。


再び潜り込んだその時。


玄関から開錠の音が聞こえた。


タイミングよ!


悪すぎんだろ!!まじで。


俺はせっせと引っかかったケツを潜り込ませながら急いで這って行った。


足音が玄関からリビングに向かって近づいてくる。


やばいやばい!いそげ!いそげ!


足をすっぽり抜ける。


足音がこっちに急いできたのがわかる。


俺はすんでの所で抜け出したのだった。


「ふぅー。」


シャバの空気がうまいぜ。


壁を抜けた先は塀に囲まれた日本式のよくある裏庭のようだ。


所どころに雑草が生い茂り、中央に一本の巨大な木が立っている。


俺は服のゴミを払う。


周りは住宅地だ。


ここでどっかの路地裏に行けば追い付かれないだろう。


俺は木によじ登ってそれを伝って塀を超えた。


俺は道路に降りて走りながら副委員長の一軒家の方を振り返る。


不気味なほどシーンとしていて。あまり騒いでいないようだ。


慌てないのか?それともあまりにもショックなのか?副委員長ちゃん。


俺は出し抜いてやった優越感を噛み締めて勝利品を掴みその帯で風を切りながら駆ける。


「ふははは!自由だ!俺は自由だ!!!ブラジャー(ブラボー)!」


眩しい日差しが繊維の隙間からピンク色の虹彩を地面に移す。風に揺られてまるで旗みたいにその帯はひらひら空を舞う。


最高に晴れやかな気持ちだ。


俺はしばらく走って十字道で立ち止まった。


ところでここどこだっけ。


あれ、抜け出したのはいいけど、どこに行けばいいんだ?


てか虹の家どこだ?


俺は道に迷ったのだった。


一一一一一一一一一一一一一一一一一一


マッチ売りの少女の物語を見たことがある。


貧乏でその日暮らしでマッチを売って生計を立てるらしい。


俺は公園の砂場の近くに拾った段ボールで仮の家を建てた。


まさに現代のマッチ売りの少女だな。俺は。


売るマッチはないがお土産ブラジャーを手放す気はない。売るならカセットだな。


てかさっき住宅街をウロウロしてたら警察みたいな奴らに追いかけられたんだよな。


職質まじで怖ええ。ポケットのもの出せて言われたし。


絶対なんか違うモン持ってるて勘違いしてた気がする。相手の奴ら。


まあ違くないかもしれないけど。


それはともかく

西宮錦、ステータス:21歳。家はありません。

金もありません。


あれ、ただのホームレスじゃね?俺?


てかもうペットでいいから誰か引き取って?


副委員長んち帰ろうかな。


夜飯作ってくれてるだろうし。


あー。もうどこから来たんだっけ。


俺は道がわからない。方向音痴だ。


冷たい夜風が段ボールを貫通して俺は震える。


通り過ぎたシングルマザーがやばいやつを見るような目で俺を見た。


「ねえ、あの人なんで木の箱に入ってるの?寒くないの?」


「しー、見ちゃだめ。あのおじさんは社会の粗大ゴミですよ。早く行くわよ。」


「ねぇね!ソダイゴミてなーに?」


「バイバイ!ソダイゴミのおじさん」


俺はめっちゃ傷ついた。


おじさんじゃねーよ。クソガキ!


てか口悪すぎだろあのババア。誰が粗大ゴミじゃ!


俺は腹いせに段ボールを1発殴る。


穴が空いてさらに風通しが抜群に良くなる。


俺ここに来て普通に凍死か餓死か?笑えないぞ?


ブルブル増えていると、鈴を転がすような声が響いた。


「大丈夫?おじさん、どうしたの?」


だからおじさんちゃうわ!


俺はツッコもうとしたが、力が入らず腹も減っているため、小声でゴニョゴニョ言う。


「よかったら食べて。」


食べかけの半分の残ったフライドポテトを差し出される。


焼き上げたじゃがいもいい匂いが伝わる。


「ありがとう」


21歳おじさんは感謝に暮れるのだった。







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