第6話 特別なお客人
あのときの彼女と肩を並べて戦ってみたいという僅かな願いは同じ高校、同じクラスという数奇な運命に導かれて強くなっていた。
「目的は見えてきたようだね」
「決着もつけてやる。仲間に絶対してやる」
「その意気だ少年。私は当人じゃないし、やり方は自分で考えるんだよ」
五十鈴はポンポンと悠里の頭を撫でて嫋やかに微笑んで諭すように言った。やり方までせがんでは我儘が過ぎるというものだ。
存外、彼女に撫でられるのも悪くない。フッと鼻息を漏らすと客の視線を釘付けにしていたことに恥ずかしさで頬を赤に染めた。
「それはそうと」
ぷるぷると震え始めた悠里から手を離して、五十鈴がエプロンのポケットから一枚のカードを取る。
「少年君の新しいライセンスだよ」
「いつの間に撮ってたんですかこれ」
「顔写真は二週間くらい前。フォトショップでちょちょいと切り取った奴を貼り付けただけさ」
236用のライセンス。元々サバイバルゲームや236は18歳以上にならなければプレイすることはできかった。
だが競技人口の拡大や世界的な波及、そして遊戯銃に内蔵されたプロセッサーの威力制御で安全管理が徹底された。
誰でも参加ができる安心安全なスポーツとして変化を遂げたが、悪用防止で全日本エアソフト連盟の認証を受け、ライセンスを発行する決まりになっている。
これが無ければ236への参加はできないし、BB弾の一発でさえ買えない。
五十鈴のドヤ顔に半ば呆れながら苦笑いを浮かべていた。
「さて、そろそろ仕事に戻らないとお客様に怒られてしまうね」
「そうだ……仕事中でした。すいません」
話に夢中になりすぎて仕事中であることが抜けていた。
「バイト初日にタダ働きは……少年も良い度胸だね」
「なんですかその何か企んでるほくそ笑みは」
「そんな不真面目な君にはちょっとばかり特別な仕事を与えよう」
ふへへと不気味な含み笑いで五十鈴が歩み寄ってくる。
息を飲んでいると揉みしだくような指が扉の方を差した。
「あのお客様を中へご案内したまえ。君のよく知る人物だと思うけど、遠目で監視されているのは流石に気分が良くないからね」
「ぬおっ! り、リコ?!」
入口で張り付く勢いでこちらを凝視するラプアの姿。その顔は冷静沈着な普段とは違い剣呑で、悠里は昨夜の失態に気づく。
「あ、あの。リコにバイトのこと良い忘れてました」
「君が100悪いね」
「どうしましょう……とりあえず、自家製コーヒーゼリーを一つ。後で払います」
「君達の兄妹愛には感心するよ」
やれやれと肩を竦めた五十鈴は満更でもなさそうに悠里の尻拭いを買って出た。
「ど、どう? バイトの制服着た兄は、カッコいい?」
「学校もバイトも嫌いだぁっ!」
珍しく幼子のように拗ねてしまった。そして横で微笑んでる五十鈴には少しばかり手伝ってほしいと思う悠里であった。
その後、ラプアからバイト終わりまで説教を受けたのはもはや語るまでもないだろう。




