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【完結・BL】転校生に学年トップを奪われたから弱みを握ろうと友達のフリして近付いたらとんでもない修羅場が待っていた  作者: ルー
【前編 / 04】 『時よ止まれ』

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  帰宅後、夕飯も食べずに風呂に入って、すぐ布団にもぐりこんだ。


 暗闇の中、身体を丸めて縮こまる。

 真っ暗な部屋の風景がぼやけた視界に映り込んで、でも、目を閉じることはできなかった。窓の外から雨の音。


 あのとき見た光景が、網膜の裏にこびりついたようになって、離れない。


 散らばった翅、踏み潰されて内容物が飛び出た胴体、歪んで千切れた脚。


 あれがもし宗像の仕業なら、弱みなんてものじゃない。

 俺はとんでもない爆弾を握ったことになる。


 そう思うのに、喜びも高揚も、なにひとつ湧いてはこなかった。

 代わりに訪れたのは底冷えのする感覚と、心臓が冷たく鼓動を打ち鳴らす、とても嫌な感触だ。


「……っ」


 まばたきのたびに脳裏を蘇る、大量の蝶の死骸。


 そのたびに俺は、胸のうちでまだ違う、という言葉を繰り返していた。

 だってまだ決めるには早すぎるし、証拠だってひとつもない。


 まだわからない。確定じゃない。


(ほら、もしかしたらあの、怖い父親の仕業かもしれないし……)


 その可能性はどれだけあるのだろう。

 宗像がやった可能性よりそれは高いのだろうか、低いのだろうか。

 冷静な比較検討を脳は放棄して、俺はただ目を見開いて、部屋の中にわだかまる暗闇を見つめている。


 ブルーグレーのカーテンのむこう、かすかに雨と、ときおり車が通り過ぎる音がする。夜の音だ。

 いつもなら平穏なはずのその音も、今夜ばかりは俺の胸を無性にぞわぞわさせた。


 除湿機しか入っていない部屋の中は蒸し暑いくらいなのに、指先がひどく冷たい。思わず手をすり合わせる。


 その夜は、ちっとも眠れなかった。

 

 

 

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