24
帰宅後、夕飯も食べずに風呂に入って、すぐ布団にもぐりこんだ。
暗闇の中、身体を丸めて縮こまる。
真っ暗な部屋の風景がぼやけた視界に映り込んで、でも、目を閉じることはできなかった。窓の外から雨の音。
あのとき見た光景が、網膜の裏にこびりついたようになって、離れない。
散らばった翅、踏み潰されて内容物が飛び出た胴体、歪んで千切れた脚。
あれがもし宗像の仕業なら、弱みなんてものじゃない。
俺はとんでもない爆弾を握ったことになる。
そう思うのに、喜びも高揚も、なにひとつ湧いてはこなかった。
代わりに訪れたのは底冷えのする感覚と、心臓が冷たく鼓動を打ち鳴らす、とても嫌な感触だ。
「……っ」
まばたきのたびに脳裏を蘇る、大量の蝶の死骸。
そのたびに俺は、胸のうちでまだ違う、という言葉を繰り返していた。
だってまだ決めるには早すぎるし、証拠だってひとつもない。
まだわからない。確定じゃない。
(ほら、もしかしたらあの、怖い父親の仕業かもしれないし……)
その可能性はどれだけあるのだろう。
宗像がやった可能性よりそれは高いのだろうか、低いのだろうか。
冷静な比較検討を脳は放棄して、俺はただ目を見開いて、部屋の中にわだかまる暗闇を見つめている。
ブルーグレーのカーテンのむこう、かすかに雨と、ときおり車が通り過ぎる音がする。夜の音だ。
いつもなら平穏なはずのその音も、今夜ばかりは俺の胸を無性にぞわぞわさせた。
除湿機しか入っていない部屋の中は蒸し暑いくらいなのに、指先がひどく冷たい。思わず手をすり合わせる。
その夜は、ちっとも眠れなかった。




