鍋1
闇鍋とは、それぞれ自分以外には不明な材料を複数人で持ち寄り、暗中で調理して食べる鍋料理。
「ミヅキ~腹減ったなぁ~」
アラン隊長が部隊練習を終えて賑やかになるお腹をさすってやって来た...。
「あなたは...ミヅキさんはあなたの奥さんではありませんよ!自分の食事は自分で用意しなさい」
セバスさんが注意すると...
「ミヅキの飯を食ったら他では物取りなくてなぁ...美味いからなぁ...」
チラッとミヅキを見ると
「えへっ...そうかな?」
ミヅキが嬉しそうに照れている...
「しょうがないなぁ~アラン隊長は...」
ミヅキが何か無いかなと収納をあさっていると、アラン隊長がしめしめと笑っていた。
「ミヅキさん...アランを甘やかしてはいけません」
「そうだぞ、ミヅキ!作るんなら俺にくれ」
ベイカーも頷くと
「あなたもですよ!」
セバスがアランとベイカーに呆れている。
「たまはミヅキさんに作ってあげてはどうですか?」
「俺たちがか?」
二人が顔を見合わせると...
「確か...米って石鹸で洗うんだよな?」
アランがベイカーに聞くと
「ああ...多分そうだろ。あとあれだろ?水に味噌入れれば味噌汁だったよな!」
「おお!俺達でも作れそうだな!」
二人が食材を買いに行こうとすると...
「待ちなさい!私が悪かった...」
セバスが二人を止める。
「このままだとミヅキさんがお腹を壊します...」
「そ、そうだね...セバスさん大丈夫だよ、私作るの好きだから」
ミヅキが笑って答えると
「しかし...たまには楽をさせてあげたいですね...」
セバスが悩むと
「あっ!なら鍋にしよう!あれなら食材を入れて煮込めば終わりで凄い簡単です!」
「それはいいですね、では食材はあなた達が用意しなさい」
アランとベイカーが頷くと
「何を用意すればいいんだ?」
「そうだなぁ...何鍋にしよう...」
「俺は肉がいいなぁ!」
ベイカーが肉を推す。
「肉も良いが魚もいいんじゃないか?」
アランの腹がさらに鳴ると
「野菜も入れないといけませんよ」
セバスさんが二人に注意する。
「うーん...なら...闇鍋にしよう!」
「「「闇鍋?」」」
「なんか...毒々しいなぁ...食べられるのか?」
「もちろんだよ!闇鍋って言ってもみんなが好きな食材を持ち寄って暗闇のなかで食べる鍋の事なんだよ」
「へー面白そうだな!」
「じゃあ私が鍋のスープ用意しておくからみんなは好きな食材を見つけてきてね、闇鍋のルールとして箸を付けた物はどんな苦手な食材でも食べなきゃいけないんだよ!」
「なるほど...」
「それと食べられない物は入れちゃ駄目!」
「了解」
「面白いから部下達も呼んでいいか?」
アランが聞くと
「うん!沢山人数いる方が面白い食材が集まりそうだね!大きな鍋を用意しておくよ!」
【ミヅキ!俺も食べていいか!】
話を聞いてたシルバが参加したいと言うと
【僕も食べる!】
【キャン!】
【では、私も何か取ってこよう...】
【·····】
【頑張って美味しいの取ってきてね】
ミヅキが笑うと...
【俺が取ってきたのは是非ミヅキに食べて欲しいな…】
シルバがミヅキに頬擦りすると
【楽しみにしてるね!取れるように頑張るよ】
シルバ達はあっという間に外へと飛び出して行った…
ミヅキはドラゴン亭やリバーシの里のみんなにも声をかけてポルクスさんとテリーさんと鍋の用意を始める。
「色んな食材が集まりそうだから…シンプルな味付けがいいかな…なるべく食材がわからない方が面白いから…味噌味にしようか?」
「そうだな、味噌ならなんでも合いそうだ!」
「なら俺は牛乳を入れるかな…」
ポルクスが牛乳を用意すると…
「なら俺は焼き鳥だ!これが一番好きだからな!」
ベースのスープを作ると早速食材を入れていく
「ミヅキさーん!面白そうな事をしてると聞いて来ましたよー」
マルコさんが何か食材を持っている。
「私達も入れて下さい!」
エリーやマリーさん達も食材を手にやってくると
「もちろんだよ!じゃ鍋に食材入れて下さいね」
マルコさん達を皮切りに次々と話を聞きつけた人達が食材を手にやってきた。
「ただいまー!」
ベイカーさんが巨大な肉の塊を抱えて帰って来ると…
「コレを入れりゃいいのか?」
そのまま入れようとするので
「小さく切って入れるよ!こっちで切って!」
肉を降ろさせて切ると、包丁がスルッと入っていく。
「凄い柔らかいお肉だね!美味しそう!」
ミヅキは切っては鍋に入れ切っては鍋に入れていると
「ミノタウロスの上位種がいたんだ!高級食材だぞ!」
ベイカーさんが舌なめずりすると
「ベイカーさん…取ってきた食材が食べられるんじゃ無くて…手に取ったのが食べられるんだよ?」
「あっ…じゃあ…もし掴めなかったら食べられないのか?」
「そうなるね…」
「いや…大丈夫だ!こんなにあるんだぜ一個くらい食べられるだろう」
「そ、そうだといいね」
ベイカーさんの肉を入れ終えると
「ミヅキ!コレを頼む!」
アラン隊長がドンッ!と大きな魚をとってきた。
「これは…ナマズ…かな?」
「川で一番でかそうなの捕まえて来たぞ!」
アラン隊長が胸をはると
「それって…川の主じゃ…ま、まぁいいか」
ミヅキが顔を引き攣らせると…
「切って入れればいいか?」
アラン隊長がまだ動いてるナマズにトドメをさそうとするのを止めると
「待って!泥抜きしたいから真水に付けておいて!最後に入れようね」
ナマズ用に水槽を作るとそこに入れてもらう、アラン隊長のナマズを置いておくと、シルバ達が帰って来た!
【ミヅキ!コレを!】
シルバが虹色に輝く羽根の鳥を差し出す…
【綺麗な鳥だね】
ミヅキが受け取ると
「ミヅキさん!ちょ、ちょっと見せて下さい!」
マルコさんが食いついてきた…
「マルコさん知ってるの?」
「こ、これは七色鳥…王宮料理で使われる食材ですよ…」
【こいつの肉は結構美味いからな!】
シルバがヨダレを垂らす。
【へー!シルバありがとう!食べられるといいな!】
ミヅキがポルクスさんに捌くのを頼むと…
【ミヅキ~僕はコレ~】
シンクは透明な魚をミヅキに渡す。
【なにこれ!透き通ってる!】
ミヅキが興味深げに観察していると
「そ、それは!スカイフィッシュ!」
マルコさんが七色鳥の羽根を抱きながら戻ってきた…
「これも珍しいんですか?」
ミヅキが聞くと
「はい!滅多に捕まえられませんからね!水と同化して人の目には写りませんから!」
マルコさんがまじまじと見ると…
【えーそうなの?上から見るとキラキラ光ってるから見つけやすいんだけどなぁ…】
シンクが首を傾げると
「これも食べられますよね?」
マルコさんに確認する。
「もちろん!大変美味だと聞いています、食べた事はありませんが…」
マルコさんがゴクッと喉を鳴らした。
【キャン!】
コハクは何かの実を咥えている、ミヅキが受け取ると…
「こ、これは!」
また?…ミヅキが苦笑すると…
「これも珍しいんですか?」
マルコさんに差し出す…マルコさんは受け取ると
「凄い固い皮に守られたココの実です!これを食べると寿命が一年のびると言われていますよ!」
「へー」
コンコンと実を叩くと確かに固そうだった…
「どうやって割ろうかな…」
ミヅキが悩んでいると…
「ミヅキ、貸してみろ!こっちで割っといてやる」
ベイカーが受け取ると、アラン隊長や部隊兵達がワラワラと集まってきて誰が割れるか実を叩き始めた…
【コハクありがとうね!割れたら鍋に入れるからね】
ミヅキがコハクにお礼を言って頭を撫でると…
【私はこれだ…】
プルシアはでっかいキノコのような物をとってきた…
【で、でっかい松茸だー!】
ミヅキはキノコを凝視すると、形はどう見ても松茸のようだった…
「マルコさん!これ!これも凄いんじゃ!」
ミヅキがキノコを見せると
「す…」
マルコさんが固まる…
「す?」
「素晴らしい…何年物の死茸でしょう…こんな大きさのは初めて見ました…」
【山の崖に生えていた…人では行けないような場所だからな…】
プルシアが答えると
「確か…人が近寄れない臭い匂いがする近くにしか生えないと聞きます…だからこれをとるのは命懸けなんですよ…それで死茸と言う名前だと…」
「なんか…不味そうな名前だなぁ…」
「いえ!こちらも大変美味しいですよ!こんな大きいのは食べた事ありませんが…」
シルバ達の食材もどんどん切って鍋に入れていくと…
「あっ!ああ…高級食材が…この鍋はいくらになるんだろう…」
マルコさんが悔しそうに混ざっていく食材を眺めていた…
【……】
プルプル!
ムーが身体を揺らすと…何か液体を出した、ミヅキが器を用意して受け取ると…液体はドロっとしていて黄金色に輝いていた…
「ちょ、ちょっと舐めてもいいですか?」
マルコさんが液体を指で触り舐めると…
「あ、甘い…」
ホッと顔が綻ぶ…
「これは黄金蜂の蜜…」
「蜂蜜かぁ~ムーありがとうね」
ミヅキがお礼を言うと
「これまた貴重な…ミヅキさんの従魔達は優秀ですね…」
マルコさんが羨ましそうにシルバ達を見つめていた…。