< 13 この世界に就任した神 十二柱目 07 >
娘に【治癒魔法】を教えました。
娘の夫の怪我を治させる為に。
私のサポートが必要でしたが、無事に娘の夫の怪我を治す事が出来ました。
その後、娘は、村人たちに【治癒魔法】を教える様になりました。
ですが、なかなか上手くいっていません。
娘の魔力が少ないので、効果がよく分からず、理解してもらえていない様ですね。
娘は落胆しています。
私も落胆します。
【治癒魔法】の噂を聞いた村長さんが、娘の元を訪れました。
二人の男の人たちを連れています。
「この者たちに【治癒魔法】を教えてほしい。」と、頼んでいます。
娘は、「上手くいくか分かりませんが…。」と、一言断りながらも、引き受けました。
娘が二人の男の人たちに【治癒魔法】を教えました。
「実際に使ってみないと分からないが、使えそうな気がする。」と、男の人たちは言っています。
「港に待機して、怪我人が出たら使ってみよう。」と、言っています。
どうやら二人は漁師さんの様です。
彼らなら上手に使えそうな気がします。
この世界最強の魔術師は、漁師さんたちですからね。(苦笑)
彼らに【治癒魔法】を上手に使ってもらいたい様な、そうでない様な、そんなモヤモヤした気持ちを抱きながら、見守る事にしました。
その日の夕方。
港に帰って来た漁師さんの中に、怪我人が何人か居ました。
彼らは、港に待機していたあの二人の元に連れて行かれました。
【治癒魔法】が使われます。
怪我が治りました。
驚いています。
漁師さんたちに【治癒魔法】の有用性が理解された様です。
早速、【治癒魔法】を教っています。
この世界の漁師さんたちは優秀ですね。
もう、この世界最強の魔術師は、漁師さんたちでいい気がします。
私の心の中のモヤモヤは消えそうにありませんが。(苦笑)
心の中のモヤモヤと言えば、もう一つ。
娘の娘は、よく笑顔を見せてくれます。
娘に名前を呼ばれるだけでも笑顔になります。
良い笑顔です。
娘の娘の笑顔に、娘も笑顔です。
私も笑顔です。
私は、娘の笑顔をガッツリと補給します。
…モヤモヤの話でしたね。
私は娘と娘の娘の笑顔を補給して、いつも元気をもらっています。
ですが、私が娘と娘の娘を笑顔にしてあげている事ってありましたっけ?
笑顔を守った事は有りましたが、笑顔にしてあげた事は無かった様な気がします。
私が娘の名を呼んであげたら、娘は笑顔になるのでしょうか?
大人と子供では違いますかね?
うーん。良く分かりません。
モヤモヤします。
そもそも、神は人の名を口にしませんし。
神が人の名を口にする事は良くない事だと言われているからです。
だから、モヤモヤしたところで、どうする事も出来ないのですけどね。
でも、モヤモヤします。
うーむ。
気分転換に別の場所に行く事にします。
【治癒魔法】の件は、漁師さんたちに任せておけば良いでしょうし。
そもそも、その漁師さんたちが、心のモヤモヤの原因でしたね。
私は、考えるのを止めて、行く場所を考えます。
南西の森の村と北の森の村の交流が、その後どうなったのか見に行きましょう。
そうしましょう。
私は、娘と娘の娘の笑顔をガッツリ補給してから、南西の森に向かいました。
南西の森の村に来ました。
以前よりも活気が有る様な感じがします。
革製品が多く見られる様になった気もしますね。
北の森の村との交流によって、得られた物なのでしょう。
人の移動している様子を見る為に、道らしき物を辿ってみる事にします。
道らしき物を辿って来たら、ほぼ中間の位置に村が出来ていました。
周りには何も無い場所です。
交易の休息や補給の為に作られた村なのでしょう。
思っていたよりも交易路としての態勢が整っている様子に驚きます。
しかし、それほど重要な交易品ってありましたっけ?
魚の干物と熊の毛皮くらいしか、思い当たる物がないのですが。
気になったので、村の様子を観察してみる事にします。
主要な交易品を見付けました。
塩でした。
そうですね、塩が有りましたね。
何も無い場所に村が出来るのも納得です。
南西の森の村と北の森の村の交流は、今後も続くことでしょう。
この村の様子を見て安心しました。
しかし、不安も有ります。
人力で荷車を引いていたからです。
川の近くでは水運での交流が当たり前になりましたが、陸の移動は、未だに徒歩です。
馬が居ればいいのですが、この星には居ませんしね。
猪では、無理でしょうし。
私に神力が普通に有れば、何とか出来るのですけどね。
うん。神力の少ない私には、どうしようもありませんね。
後任の方に期待しましょう。
今は、南西の森の村と北の森の村の交流が盤石な物になった事を喜びましょう。
私は交流が盤石な物になった事を喜びながら、あの村に帰りました。
< ??? >
魔法について調べました。
あちらこちらで、いくつかの魔法が生まれ、広まった様です。
生まれた魔法は、あちらこちらで、人の役に立つ様に使われています。
私は魔法が使われているのを観察しながら、魔法を習得します。
時々、困っている人の手助けをしたりして、魔法を使う練習をします。
いつか、神さまのお役に立てる様に。
いつか、神さまに喜んでいただける様に。
いつか、神さまに気付いてもらえる様に。
十分に魔法を使える様になりました。
神さまのお役に立てる実感が有ります。
神さまの気配を探します。
神さまのお役に立つ為に。
しかし、神さまらしき気配を感じませんでした。
意外です。
魔法は、神さまがこの星の人たちに与えた物だと思っていたのですが、違ったのでしょうか?
となると、魔法は人が生み出したのでしょうか?
私は、人の可能性に驚きます。
新たに【治癒魔法】が生まれました。
神さまらしき気配は感じません。
やはり、魔法は人が生み出した物の様です。
人の可能性に、改めて驚きます。
世界に漂う感謝の気持ちが多くなった気がします。
【治癒魔法】が使われる様になった為でしょう。
世界に漂う感謝の気持ちを集めて、私の力として蓄えます。
今の私は、今までで一番力を蓄えました。
さらに、蓄えた力を使う”魔法”と言う手段も手に入れました。
今までで一番、神さまのお役に立てる実感が有ります。
神さまの気配を探します。
神さまのお役に立つ為に。
しかし、神さまらしき気配を感じません。
随分と長く、神さまらしき気配を感じていません。
どういう事なのでしょうか?
この星は、神さまに見捨てられてしまったのでしょうか?
不安になります。
しかし、私に出来る事はあまり多くはありません。
力を蓄えましょう。
魔法を使う練習をしましょう。
いつか、神さまのお役に立てる様に。
いつか、神さまに喜んでいただける様に。
いつか、神さまに気付いてもらえる様に。




