24.【悪役令嬢ルート】の聖女と聖獣
◆ミリア視点6
「いたた……」
「きゃん!」
「リコス!よかった。大丈夫?ケガしてない?」
植え込みのおかげでお互い大きなケガは無かった。
けど、空には何だかヤバいものが見えるんだけど…巨大な…黒いモヤの笠雲?……あれ?何か引っ掛かる。デジャヴ的な……あれれ?
「レオン様!しっかりなさって!レオン様!」
少し離れたところにエステル様と倒れているレオン様?…たいへん!
「エステル様!お怪我は!?」
「ミリア様!…レオン様がわたくしを庇って!うう…」
どこかで頭をぶつけられたのか、レオン様の頭から血が流れています!意識も無いみたい、とにかく治療しなきゃ!
手に光を集めケガに押し当てる。流れ出す血が止まりキズはだんだんと塞がっていく…治療は問題なく終わったが、
「レオン様!目を開けて下さいまし!レオン様ぁぁ!」
泣き顔のエステル様がどんなに声をかけても、肩を叩いてみてもレオン様の意識は戻らない。いったいどうしたら…
「影ちゃん!レオン様を助けて下さいまし!」
エステル様がそう叫ぶと、影ちゃんがいつものように影からぬぅ~っと現れました。そして今度は、エステル様の体に入って行きます…何をするつもりなのでしょうか?
エステル様は両手のひらをレオン様に向け…とても耳なじみのある呪文を唱えました!これ絶対リカ案件っ!
『イタイノイタイノトンデイケ!オソラノカナタニトンデイケ!』
エステル様の手のひらから出た黒いモヤ(影ちゃんの気配がする?)がレオン様の全身を包み込んだかと思えば、一瞬で霧散! あとには…
「あれ?エステルはなぜ泣いているんだ?私はどうしてここに…」
「よがっだですわ~~~~~」
淑女にあるまじき大号泣のエステル様と『何事も無かったかのような』レオン様。
…無い?なんで?
そう、無いのですよ!流れ出した血の痕跡が!きれいさっぱり!
あんなに出血してたのに、本人ぴんぴんしてるし~~~これってまるで……そう…たしか…
「おいっ!お前たち!大丈夫か!?何があった!?」
リカルドやステファン達が駆け付ける。
大泣きのエステルに困惑のレオン。
考え込むミリア。
空の黒い雲はどんどん広がっていく…
◆リカルド視点24
『思い出した~~~~~‼』と、突然ミリアが叫んだ。何を???
「リカ!思い出した!アイツをやっつける方法!」
ミリアは空の禁術を指してそう言った。【エステルルート】の話か!皆が驚いてミリアを見ている。
「どうすればいいんだ?」
「うん!よく聞いてね。エステル様が【聖女】で、影ちゃんが【聖獣】になるんだよ!」
「「「「「は?」」」」」
「『薙ぎ払え』スチルは、あの黒いヤツと戦っているシーンだったのね!下に小さく『戦う聖女』って注釈ついてたの思い出しちゃった!」
へ~そ~なんだ~…。当のエステルは困惑してオロオロしているようだがな~
「でもわたくしが聖女になるって…いったいどうすれば…」
「影ちゃんを【聖獣】にすれば自ずとエステル様が【聖女】になるのです!」
鼻息の荒いのミリア…めちゃくちゃスチルシーンが見たいんだね。…ああ、嫌な予感がする。
「ミリア嬢は【影ちゃん】を聖獣にする方法も知っているのだな?」
ステファンの質問に大きく頷くミリア。
そう俺はあの時確かに…噴水の縁に座ってミリアの説明を聞いた。聞いたんだけどぉ~~
「はい!影ちゃん=シャドウは課金キャラ!成長させるには、課金あるのみ!ですよ」(ドヤ顔)
やっっぱりそれか~~~~~~‼嫌な予感が当たったぜ‼
けれど……時間は差し迫っている。
先ほどから笠雲の広がりが止まって、下にゆっくり降りて来ているように見えるのだ。
きっと【アレ】に対抗する術は他にないんだろう……ものすごく抵抗感があるんだけど…。
「カゲロー!」
呼ばれたのが嬉しいのか、ちょっと横揺れしながらやってきた。
リコス以上に【聖獣】という言葉が似合わないな…。
「カゲロー…見ての通り今最高に切羽詰まった状態だ。この局面を打開するには、エステルを聖女にしなければならない。その為にはお前の協力が必要だ。【聖獣】になってくれるか?」
カゲローは揺れていた体をピタリと止めて、しっかりと頷いた。
なってくれるんだ…どこかでチャリーンて音がした気がするぜ。ハハ………もう仕方ないなぁ。
『シャドウのレベルを上げる!』
ミリアに教わったセリフを言うと、目の前に操作パネルが出現した!皆も見えているようで驚いている。
パネルには三行の文字…
一行目 〔シャドウのレベル→MAXには【全財産】が必要です〕
二行目 〔【全財産】を投入しますか〕
三行目は〔YES〕 〔NO〕
「【全財産】ってなんだ~~~~!?!?」
あれか…あの没落スチルの【強制力】ってヤツかっ!? ふざけんな~~~~‼
「リカ…」
崩折れた俺をミリアが心配そうにのぞき込む…。
せっかく婚約者になってくれたけど、一緒に鉄道つくるって約束もしたけれど…
「ミリア…ごめん!プロポーズしたくせに、住むところも無くなる羽目になるなんてな。婚約は白紙に」
「リカ!わたしね。リカと一緒ならアダンの森に小屋建てて住んだって全然OKなの!なんならわたしが大工さんに弟子入りして【愛の巣】だって建てちゃうんだから!」
フンス!と腕を曲げて、無い力こぶを披露するミリア。…本当に君ってば、最高だ。
「ありがとう!ミリア!愛してる!」
人目を気にせずミリアを抱きしめると、彼女もギュッと抱きしめ返してくれた。ニヤニヤしている男連中と、『はわわわ』している女性陣+ヨハン…
「…じゃあ、運命共同体として一緒に押してくれるか?」
「もちろん!」
ミリアと〔YES〕ボタンの上で指を揃え…タップした。
「「YES‼」」≪ピコーーーン≫そして≪ジャラジャラジャラジャラーーーー・・・・・・≫
なんて切ない効果音……脳裏に羽が生えて飛んでいく札束。そして、
「エステル!?」
≪シャララ~~~~~ン≫という効果音と共に発光したエステルは、
「じょ女王様!?!?!?」
黒いレザーでハイレグボンテージの【女王様】に変身していたのだ。
レオンが慌てて自分のジャケットを着せようとしている。
ミリアは隣で『これこれ!』と興奮して言っているし、そうか…このコスプレが正規なのか…お兄ちゃん泣いちゃうよ。
因みにカゲローに見た目の変化は無かった、縦に伸びたり横に伸びたり…まるで準備運動のような?
エステルは一度【空の異形】を見つめカゲローに視線を移す。小さな声で何か言ったようだ。
カゲローはそれに大きく頷いた。そして、
『影ちゃん‼やっておしまいっ‼ですわ!』
さながらタイム〇カンシリーズ三悪人の女王様を彷彿とさせるセリフ…
『薙ぎ払え』じゃ無かったのね。ミリアは『ありがたや~』と拝んでいた…OKなんだ。
掛け声とともにカゲローは空に飛んでいった。
下降してきていた黒雲を貫き、その姿は見えなくなった……




