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20.卒業式と不穏な鐘の音

◆パルセノス邸 リカルド視点20


 とうとう明日で学生としての生活も終わる。卒業したら今以上に呼び出されるのだろうな…王宮に。

 嬉しそうな王様の笑顔が過ぎった。


 ミリアの件はステファンのおかげで何とか有耶無耶になったし、彼女の卒業後に結婚という流れだ。

 何故か盛り上がった母親連中が、俺&ミリアとエステル&レオンの【ダブル結婚式】を画策している。

 男連中は蚊帳の外…全くもって解せない。


「お兄様…今よろしいでしょうか」


 すこし元気がないな。そうか、一緒に学園に通うのは明日で最後だもんな。

 二年前の笑顔が昨日のことの様だ。あの時と同じくソファをポンポンすると、隣に腰かけた。


 二年前より大人の女性に近づいたなと思う。お兄ちゃん泣きそうだ。

 おそらく結婚式も泣いちゃうと思うけど、その時は俺も結婚式の主役じゃないか!どんな感情で挑めばいいんだよ!


「明日でお兄様たちと一緒に通うのも最後ですのね。…とても寂しいですわ」

 大人になったとは思うけど、やっぱり可愛い妹なんだよな。ナデナデ…あっ…


 一瞬エステルも驚いていたが、すぐに満面の笑顔で、

「お兄様に撫でていただくのは久しぶりですわ。…でも、もしかしたらこれが最後かもしれません。いっぱい撫でて下さいませ!ふふ」


 どこか吹っ切れた感のあるエステル。すこし元気になったかな。





◆パルセノス邸 エステル視点8


 明日はお兄様やレオン様のご卒業式でございます。一緒に通学出来るのも明日にて終わりとなるのです。


 お兄様はとてもお忙しい方で、最近は度々王宮へも呼び出されていらっしゃいます。何でも【鉄道】とかいう物の事で、王様直々のお呼び出しだそうですわ。

 ミリア様とご婚約された事もあり、わたくしとの時間はますます無くなってしまいました。


 でもそれは仕方ないと分かってはおりますの。わたくしも公爵家に行く時間、レオン様と過ごす時間が増えたのですもの…


 アリサからも『ブラコンは卒業』と言われ【ブラコン】とは何かを教えてもらいましたわ。


 わたくしの場合、お兄様に依存する事や憧れが強過ぎる事のようです。ミリア様に嫉妬してしまうのも、大好きなお兄様を取られてしまった…と錯覚しているのだと。

 取られたと思う事がそもそもおかしいのですわよね。お兄様はわたくしのモノではありませんもの。


 それでもやっぱり、寂しいと思ってしまうのです…。


「お兄様…今よろしいでしょうか」

 お兄様はすごく複雑な表情をされつつ、前と同じようにソファに誘ってくださいました。


「明日でお兄様たちと一緒に通うのも最後ですのね。…とても寂しいですわ」

 そう言うと、お兄様の手がわたくしの頭に置かれ…本当に…もう…何年ぶりかのナデナデですわ…ね。


 お兄様はご自身が幼少の頃からわたくしの面倒を見てくださっていて、お兄様からすればわたくしはきっと娘のようなものなのでしょうね。

 …では、いつまでもご心配をお掛けするわけには参りませんわね!


「お兄様に撫でていただくのは久しぶりですわ。…でも、もしかしたらこれが最後かもしれません。いっぱい撫でて下さいませ!ふふ」






◆聖バルゴ学園 卒業式 リカルド視点21


 本来の【聖女の祈り天まで届け】本編であれば、今日は『悪役令嬢断罪の日』なんだが、もちろんそんな事は起こらない。けれど100%安心は出来ないんだ。なにせエステルルートにはあの『薙ぎ払え』スチルが存在するのだから。


『ごめんね。あのシーンがどのタイミングなのか思い出せなくて…』とミリアもお手上げ状態。でもいつかは起こるに違いないと考えていた。

 ただ…あの【カゲロー】が?スチルみたく活躍しそうな風には、到底思えないんだがな~。




 式も滞りなく進み、今年は卒業生にステファンがいる事で来席したアンドレア国王が、挨拶をすべく壇上に現れた時だった。


『カーンカーンカーンカーン‼』


 突然、街の教会の鐘が激しく鳴り響いた。会場が大きく騒めく。

「みな、落ち着け!」

 王が声を飛ばすが、


『カーンカーンカーンカーン‼』


 鳴りやまない…いったい何が起きたんだ⁉


「報告です!市街地で複数火の手が上がっております!」

 普段めったに姿を見せない【影】が王の隣に現れる。それほど切羽詰まっているのであろう事を皆が理解した。


 王が何か指示を出すとその影は壇上から消えた。そして次にこちらに向き直って…


「我は騎士と共に市中へ向かう!ステファン!この場は任せた!」

 そう言って、王は近衛と出て行かれたのだった。





◆王宮 宰相視点2


 王宮では宰相が影からの報告を受けていた。


 少し離れた高い位置にある王宮からは、街にあがる黒煙が複数確認できた。


「王は自ら行かれたのか」

「はい。近衛を連れて行かれましたが…」


 狙いは王なのか王太子なのか、はたまたこの王宮なのか…。


 何か事を起こすであろうと警戒はしていたが、

「まさか街を燃やすとは…ヤツは国が欲しいのではないのか?」


 王と民衆に思いを馳せる。今すべき事を…

「王国騎士団と魔法師団は市街に出動!民衆の避難及び消火に全力を尽くしなさい!」

「「ハッ‼」」


 もしかしたら手薄になったこちらを狙ってくるかもしれませんが、守るべきは場所ではなく【人】です。


「使用人の皆にも伝令!ここが戦場になるやもしれません!王妃様と女達は脱出路を使う事!戦う術の無い者も退去!……さて、腕に自信のある者は残っても構いませんよ。私と共に戦いましょうか」





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