百花繚乱〜幸せの華は咲き乱れる1
霧島翼視点→霧島慈英視点です。
僕ね、椿先生に…お願いがあるんだ。椿先生は僕のお父さんのこと好き?嫌い? お父さんと結婚しないの?
お父さんね、隠しているけどいつも椿先生の事ばっかり考えてるんだよ。
だから僕、サンタさんにお願いしたんだ。
お父さんと椿先生が結婚してくれるように。
椿先生がお母さん、そしてお父さんと一緒に広い庭があるお家で一緒に住むんだよ。
僕ね、弟と妹がたくさん欲しいんだ♪
子供はすぐに出来ないのは知ってるよ。だから早くお父さんと結婚して。
クリスマスの朝、面会に来た翼は椿の手に指輪があるのを見つけて、ぴょんぴょん飛び跳ねると体全体を使ってこの事を喜んだ。
ー僕のお願いサンタさんが叶えてくれたんだ!
僕のお父さんの隣に椿先生がいる。流れ星を集めたみたいに綺麗な髪に青い空の色した綺麗な目。
僕もだけど幼稚園ではみんなが椿先生の事、好きになってたんだよ。
椿先生は知らないだろうけど、僕らは子供だけど椿先生が嫌な想いをしない様に椿先生の事護ってたんだよ。
初めは椿先生の奪い合いだった。誰かが怪我をすると哀しそうな顔をする先生を見て僕らも哀しかったよ。
だから僕らでどうやったら椿先生をにっこにこの笑顔に出来るのかって、相談したんだ。子供だって真剣なんだよ。だって、みんな大好き椿先生だからね。
お父さんお母さん達にも相談した子もいたんだ。
それでやっと答えが出た。それはちょっと難しかったけど、みんなで頑張れば出来るよね。作戦名は『椿先生の笑顔を護ろう』
内容はね、ゆり組のみんなが喧嘩しないで仲良く出来れば、先生も笑顔でいてくれるよねって。でもすぐに喧嘩しちゃったけどね。(僕が)
僕が先生の家でお世話になっていた時、椿先生のお姉さんから先生の事色々聞いちゃったんだ。
椿先生が一番椿先生の事を嫌ってるって。
先生の髪の色も、目の色も。
あんなに綺麗な色をしているのに、どうしてなのかな…。
蘭ちゃん(椿先生のお姉さんって言ったら、『蘭ちゃんって呼びなさい』って怒られたんだ)に言ったら、「椿に翼からも言ってやってよ」だって。
蘭ちゃんが言うには、大人がどんなに椿先生の髪の色や目の色が綺麗だと言っても、椿先生は信じてくれないんだって。
だから、僕は椿先生に言ったんだよ。
『椿先生のキラキラした髪、大好きだよ。宝石みたいに綺麗だ』
これはいつも椿先生と一緒にお風呂に入っている時に言ってるんだ。
だからこれは聞き流されそうだったけど、僕はとっておきの言葉を用意してたんだよ。
蘭ちゃんやゆりちゃんから、椿先生が亡くなったおばあちゃんにそっくりなんだって聞いてたからね。
これしかないって思って、切り札を出したんだよ。
そしたら先生が泣いちゃった。
でもお父さんったら僕の事をまた睨んでるし。全く!本当はお父さんが言わなきゃ行けない事なんだよ!
お父さんには困ったものだ。
お父さんには苦労させられたんだから。なかなか椿先生の事が好きなんだって認めないし。
あんな子供っぽいお父さんを見てたら、誰だって分かるよ。
お父さんが椿先生の事しか見てないって。
ヘタレなお父さんがやっと椿先生を捕まえたんだね!
「椿先生…ママって言っても良いのかな? それともお母さんが良いのかな?」
どっちだと思う?
呼び方なんてどっちでもいいのに翼は真剣に悩んでいる。
「じゃあ、お母さんでいいと思うよ。ママだと翼くんが大きくなった時にまた呼び方を変えなきゃならないからね」
微笑みながらそう言うと翼はだよね〜と椿に抱きついた。
「お母さんは僕にとって自慢のお母さんだよ」
「どうして? 若いし、綺麗だもん。それに笑顔が最高!」
翼の口からポンポンと出て来る言葉に椿は頬を朱に染めた。
「でも、おかあさんの髪がこんな色でもいいの?」
「何でそんな事言うの?綺麗だよ。僕はねお母さんの髪の色って大好きなんだよ。お話の中の天使様みたいだよね。太陽に透かすとキラキラして綺麗なんだよ。お母さんはおばあちゃんの若い頃にそっくりだったって蘭ちゃんから聞いたよ。お母さんが生まれた時おばあちゃんはすっごく嬉しかったんだろうな〜」
「翼くん…。あり…あり、ありが…と…」
またお母さんを泣かせちゃったけど、口べたなお父さんに変わって僕が言ってるだけだからね。
翼の後ろでハラハラドキドキしていた父親の霧島慈英は自分の出る幕なしだとがっくり来ていた。
ようやく椿との間にあった分厚い壁が壊れて、やっとだよ。本当にやっと彼女が俺の告白に頷いてくれた。
そのための代償は大きかったけど。
あの女と浅田に誘拐された翼と椿は、恐怖の時を過ごした。
俺の愛する者達を傷つける奴らは誰であっても許さない。
初めは俺の両親が翼を誘拐したのかと思ったが、違うと分かってホッとした。そしたら椿も攫われたって聞いて、いても立ってもいられなかった。
霧島の力を使って二人を見つけた時、あの時自分に権力があった事に感謝したと同時に嫌悪感を感じた。
二人を傷つけたのは俺の会社絡みだったから。
信じていた浅田に裏切られたと知った時は腸が煮えくり返るどころじゃ済まされなかった。
あいつの臓物を腹をかっ捌いて引きずり出してやろうかと思ったくらいだ。
だが、これであの小賢しい女もその親の会社も潰せる。そう思うだけで黒い笑みを浮かべてしまった。
沢田の家には翼の親権が俺にあるし、あの家にはさして問題はない。むしろ問題があるのは…俺の両親の方だ。
「椿、これからが問題かもしれない…。俺は自分の両親を説得するから…」
眉間に皺を寄せてそう言えば椿は何を言ってるのこの人?と言わんばかりに目を丸くしている。
そんな間抜けに見えるアホ面も可愛いと思ってしまうのは俺の脳が恋愛フィルターとか言うので見てるからなのか?
「え?ちょっと待ってよ。私との見合いを勧めたのはあなたのご両親じゃないの?」
普通は俺の親が勧めるのが見合いだよな。
だが、今回のだけは絶対に親を通さなかった。
あの人達の薄汚い低俗な考えには吐く事は出来ても、付いては行けない。
むしろ、あの人達と血が繋がっている事さえも嫌悪しているくらいだからな。
「違うよ。椿との見合いを勧めて来たのは、加藤建設の社長夫婦だよ」
ほら、君のその瞳の色は俺のラッキーカラーなんだよ。
椿を抱き寄せるとくぐ持った声が俺の腕の中で振動する。
『全くいつも私を吃驚させるんだから』
そりゃどーも。
俺はいつもあんたに吃驚させられてばかりだよ。
本当は泣き虫でビビリやなクセに、子供の事になると我を忘れているんだよな。
椿、俺…絶対に君を護ってみせるよ。
そう言おうってしたのにさ。
「大丈夫よ。私はあなたも翼くんも護ってみせるから」
言われちゃうんだもんなー。
全く男前の椿の言葉に翼も苦笑いしてる。それで俺の顔見てもっと頑張れとか言うな!
「どっちが護られてるのかわからないね」
翼の言葉に思わず苦笑したのは仕方ないだろ。
そんなに頬を膨らまさないでくれよ。
子供みたいに頬をぷぅっと膨らませている椿を見てるとその頬を指でつついてしまうのは、自然な事だろ?
「全くだ…。椿…君って本当に素敵だよ」
あれから、週末になると椿が我が家に来てくれる様になった。
今日は翼も交えて結婚式の話をしていたんだが…一体何がどうなった?
「慈英さん、今朝父様と慈英さんからのプロボーズを受けた話をしたんですが、その…実はですね…。父様が『先に籍を入れてしまえ』と言ってきたんですが、どうしますか?」
「……」
何か随分軽く言って来る人が義父になるのか。複雑だ。
この言い方ってどう考えても『猫あげるよ。ほい!ありがと』みたいだ。
しかし、椿のお父さんの名前って何処かで聞いた事がある名前なんだが、一向に思い出せない。
だが、この義父の後押しで俺たちは式の半年前に入籍をした。(年末の出来事)この事が後に二人に好転させる機会を与えると言うことになるとは、この時の二人は知る由もない。
年末に一度実家に顔を出した俺は年明けの四日に自分の恋人(出来立てほやほやの妻だがそれはまだ両親には伝えてない)を連れて来るからと両親に宣言した。
そして今日…正月の四日目だと言うのに、溜め息しか出て来ない。
本当は俺としては椿のご両親に会いに行きたかったんだ。いつも電話でしか話してないし。
だけど椿から父様達は年末から新年にかけては行事が詰まっているのでどうしても抜けられないから無理と言うことで、 年明け早々と言っても一月四日だがな!俺は椿を連れて霧島本家にやって来た。
建物だけは無駄に大きいこの家は、昔は武家屋敷だったと亡くなった祖父から聞いていた。
魑魅魍魎化する一族を見て育てば、俺の家族が変なのも一族の考え方が固執しているのも、全てこの家の祟りかもしれないなと子供心に思った事を思い出した。
「慈英さん。ご自分の実家に行かれるのに、どうして今から敵を倒すみたいな顔をしてらっしゃるんですか?」
「ああ…行けば分かるよ」
彼処は親族と言う名の魑魅魍魎がウヨウヨいる場所だからな。
それはまだゴキブリの方が数十倍可愛いと思えるくらいだよ。そう言えばゴキブリって呟いた途端、椿が隣で真っ青な顔をしていた。彼女が大のゴキブリ嫌いだと言う事を忘れていた…。
話題を変えねば…。
「椿、俺は何があってもお前を護るから」
俺の言葉に椿は笑みで返してくれる。それだけで勇気二〇〇〇%だ。
「明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします」
「明けましておめでとうございます。早乙女椿と申します。本日このような場を用意してくださり、感謝しております」
「「「「「「「「「「「……」」」」」」」」」」」
次期総帥と言う立場の俺の挨拶には姿勢を正して返して来たやつらも、俺の前に来ると同じ様に挨拶を返して来た。だが隣にいる俺の椿の挨拶には無視を貫いた。
こいつら、良い根性してやがる。どうせ性悪な俺の両親から俺が椿を連れて実家に来る事を聞いて知っていたんだろう。
三が日以降だったら霧島本家には普段ならば、寄り付きもしない得体の知れない遠縁の親戚まで来ているってとこが胡散臭いしな。
正に魑魅魍魎だ。
見世物小屋かよ。
コイツらの狙いは分かってるさ。
大方、俺に縁談話でも持っ来たんだろう。それであわよくば俺と自分たちの娘との婚姻が結べれば良いとでも思ってたんだろう。
何て浅はかな奴らだ。俺は喉をくつくつと鳴らして笑うと、こんな奴らがのさばるためだけに、俺の兄夫婦の幸せは犠牲になったんだと思うと吐き気がしてきた。
「義兄さん、そう言えば東アジアの方の先物取り引きの件はどうなっていかな」
「あ、ああ…それなら…」
こいつら…椿の事を無視してやがる。
「慈英、皆さんに挨拶もなしとは、どう言うことだ」
失礼だぞと言っている親父にフンと鼻で笑いそうになった。
何なんだよこの公開処刑みたいな場を設けさせたのは親父達のくせに、今更何を偉そうに説教垂れてんだ。
しかも、霧島グループ現総帥である親父まで椿の事は丸ごと無視かよ。
「皆さんには既に挨拶は済ませていますよ。ただ、彼らはご自分の娘を私に紹介するのに一生懸命で私の挨拶など耳もかしませんでしたけどね。流石は兄を人身御供のように欧州へと仕事だなんだと体のいい事ばかり言ってた人達だ。兄や私の仕事も認めようとはしなかったような方達にどうして敬愛の口上など述べましょうぞ。私の妻を見ても挨拶もしないような者共には、それ相応の態度で示しますから」
俺の両親が椿との結婚に難色を示すのは頭でも分かっていた。だが、これほど開けっぴろげにやられるとは、思っても見なかったから俺の隣に立つ椿が不憫でならなかった。
俺が怒りに震えていると椿は大丈夫だと俺の手を摩った。
たったそれだけのことだが、俺にとっては鬼に金棒だ。
親父達は俺と椿を見て、眉を顰めると今まで禄な結婚をして来なかった倅が連れて来たのは、お世辞にも日本人とは思えない者を連れて来るとは…そう椿を扱き下ろした。
「あなたもどの面を下げてこの霧島本家に顔を出したのか、親の顔を見てみたいわ」
お袋達が口に手を当ててホホホ…と笑いながらも椿の両親までコケにして来た。
「どう言うつもりだ」
「慈英さん…「言わせてくれ椿。これ以上は我慢ならない」
この日ばかりは翼を連れて来なくて良かったと心から思った。
「彼女は霧島の嫁には相応しくない。それにどこの馬の骨か分かったもんじゃない人間を連れて来るなど、言語道断だ!恥を知れ恥を!」
親父と叔父貴達は露骨に俺たちの結婚を頭ごなしに反対して来た。
我が親ながら本当に恥ずかしいヤツだ。叔父はただ親父から金を貰おうってしか考えてないみたいだしな。
「父さんも叔父貴も失礼だろ!」
「いいのよ。慈英さん」
「椿!「いいの。(私に任せて)」
「あんたの方は話が分かるみたいだな。そんなチャラチャラした髪と目の色で今まで男を誑かして来たんだろ」
叔父の言葉に俺はかぁっとなった。
すでに酒に飲まれている叔父は椿の隣に来ると椿の肩を撫で回しては嫌らしい目で椿の体を舐める様に見ている。
「大方あんたの親もろくでもない親なんだろ。そんなどこの者とも知れぬ女との結婚なんぞ認めるわけないだろう!」
酒に飲まれていた叔父貴はどこぞの組の者かと思わせるような巻き舌で椿を詰った。
「親父も叔父貴もいい加減にしてくれ!あんた達に言われなくても、俺たちはすでに入籍は済ませてある。幸い二人とも良い年した大人だからな。今日は俺たちは既に婚姻を済ませたって言う事を知らせに来たまでだ行くぞ、椿」
俺の投下した爆弾に怒り狂った両親は「お前のような恥さらしは勘当だ!」と騒ぎ出した。
俺はその言葉にニヤリと笑った。言質はとった。だからもう、ここには用はない。
俺は椿を連れて家に帰るつもりだったが…。
霧島の両親の不躾な言葉にも始終笑顔で躱していた椿が俺の袖を引っ張って来た。
そういや〜俺ってば椿の両親に会った事ないや。
どんな顔をしてるのかさえしらん。
そして椿は初めて自分の両親の名を明かした。
「待って慈英さん。こちらにサインをしてください」
用意周到な椿がバッグから取り出したのは椿の義兄である徳永浩之の顧問弁護士が用意した念書で、それには慈英が霧島の財産と地位を手放す代わりに、今後一切こちらに関わらないと言う内容だった。
それを霧島の両親、叔父夫妻、叔母夫妻に署名する様に促すと、彼らは嬉々としてそれに署名し、捺印まで押して来た。
彼らの頭の中には次の霧島グループの次期当主の事で頭がいっぱい。
だから、見逃していたのだ。
椿が黒く微笑んでいた事を。
「最後にご挨拶代わりですが…先ほどから話題に上っていた私の両親ですが…」
ジョルジュ=ヴァン=フェルギールナ=マハガニールドルトットです。
サルヴェルージェ国侯爵ですが、日本ではマハガニールリゾートで有名ですよね。まあ、皆様には関係のない事ですがね。
俺の両親の方を見て軽く目で黙礼すると、俺も知らなかった切り札を出して来た。
それは、彼女の肩に手を置いていた叔父の手を払いのけるのと、俺たちを黙らせるのに十分過ぎる言葉だ。
親父もお袋ももちろん俺もだが、俺の親戚連中も皆、バカみたいに口をパッカーンと開けていた。
「「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」」」
「つ、椿、き、聞いてないぞ〜!!って言うか、お前の親の事を聞かなかった俺も悪いが…。お祖母が元王女って本当なのか?」
「ええ。私がそのソフィア王女そっくりだと言う事も事実です」
椿の家が欧州でも有名な貴族の出身で、ルーツを辿れば王族とも繋がる。
祖母のソフィアが王女だったのは、事実。
「ええ。早乙女と言う名字は母方の祖母の名です。私達もこう言う家柄ですから、家柄や名声目当てで近づいて来られたらこちらも迷惑です。何より私の両親もいつも言ってましたから、『どこの馬の骨とも分からない者に娘はやらない』と。幸い慈英さんはご両親から目出たくも勘当された身ですし、そうとなれば慈英さんには婿に入ってもらい、父ジョルジュの後継者となってになってもらいます。では皆様ごきげんよう」
椿の言葉に俺の両親も親族達も口をつぐんだ。自分たちが椿の事を詰った言葉が特大ブーメランで自分たちに返って来たのだ。
「ま、待ってくれ…と、取り消す…。勘当は取り消す」
親父の言葉に俺は何寝言を言ってんだと眉を上げた。
「遠慮する。それに俺はすでに霧島は名乗ってない。それと言い忘れたが、霧島グループの株は俺たちで買い占められたから、あんた達は首を洗っておくんだな。俺は仕えない奴らに金をやるような精神は持ってないんでね」
「全く椿、君にはいつも驚かされるよ」
「人生ってねロシアンルーレットみたいなものよ」
ほら、これみたいにねと言って椿が慈英に差し出して来たのは義父から送られて来た大きな箱だ。
中身は何かと言うとキラキラと黒光りを発するチョコレートが様々な形で並んでいる。
「選んで♪」
翼と二人してにこにこと何か企んでいるような顔で俺に勧めて来る。
まあ、チョコレートだし害はないだろうと甘く考えていた俺は数分後、自分の判断を呪う事になる。
「じゃあ、これな」
食べてみてと言われて選んだ粒チョコレートを口に放り込むと砂糖を一年分口にしたような甘いと言うよりも毒々しい味が口の中いっぱいに広がる。
「※◆△〜!!!」
思わず吐きそうになったが、二人の手前そんな事は出来ない。手元にあるコーヒーを一気に煽った。
これってロシアンルーレットって言うか?
違うだろ…。
俺の目には全部外れにしか見えないんだがな…。
「いつ、何が起こるかわからないって意味よ。たまに外れもあるけどね。慈英さんが選んだのはチェリー味ので私もそれは遠慮しているものよ。私が好きなのはこれ…」
そう言って椿が摘んだのは四角い粒チョコレート。
その中はキャラメルだった。どうせなら、俺がそれを食べたかった…。
今更口直しをしたくても、まだ口の中にはあの甘ったるいチェリー味がしつこく残っている。
ロシアンルーレットって言うよりも椿みたいだって事だろ。
俺の実家でメガトン級の爆弾を落とした椿と俺は、今椿のフランスの実家にいる。
あれから霧島グループは椿の実家であるマハガニール財閥の傘下に入った。
俺は義父であるジョルジュの側で次期当主としての教育を受けている毎日だ。
秋も深まった頃、慈英と椿は霧島グループとは関係のない真田商事の所有するホテルで式を挙げた。
そこには世界を股にかけて活躍するクラッシック界の巨匠ルッソ=バルトーや椿の姉で『ティンク』とに、世界の名立たる名家の面子が揃っていた。
幸せな新郎新婦に惜しみない拍手が注がれる。
そこには霧島家の人間は一人もいない。
椿は天職だった幼稚園教員の仕事をあっさりと辞めると慈英の妻として、夫を支えた。
翼の三つ目の願いは両親の結婚して次の年に叶えられる事になる。
「お父さん! 僕に弟か妹ができるんでしょ!!」
「そうだよ。翼」
生まれて来たのは弟で翼は喜びのあまり泣き出した。
その後、立て続けに生まれたのは男ばかり四人で翼は母親の椿に妹が欲しいと懇願し、父親が任せろとばかりに励んだのか、次の年には見事妹が誕生した。
「翼、帝、聖、豪、賢、優、凛 ご飯ですよ〜」
「「「「「「はーい」」」」」」
十六才の翼を筆頭に十才、九才、七才、五才の双子と三才の妹。子供の数は全部で六人。喧嘩も絶えないが両親はいつも笑顔で子供達を見守っている。
それから十三年後、翼が慈英との養子縁組を解消すると義理の従姉妹で人気モデルの凛と結婚するのは、また別のお話。
ー了ー
大どんでん返しでしたが、男前の椿の切り札は自分の血族でした。
椿パパナイス〜です。
「慈英くん。君も覚悟しておいた方がいいよ」
「はい?」
いきなり義兄である臣さんに呼び出された俺は一体何の事やらさっぱりだ。
「椿の家族って趣味が高尚でね…まあ、君なら大丈夫だと思うけど、一般市民だった俺はちょっとどころか驚いたよ」
「はあ…」
見渡す限りの緑の平原に今、俺は馬に乗っている。
「慈英くん、行くぞ!そっちに逃げたぞ!」
義父の声に馬を走らせると俺は日本では体験出来ないようなことを今体験している。
茂みに逃げた狐を銃で仕留めると今日の主役である俺と椿にマハガニール…(長ったらしいからマハガニールだけでいいや)の一族が集まって祝杯を挙げてくれた。
日本で挙式を挙げた後、サルヴェルージェ国でまた盛大に式を挙げた。
この時、俺は国王から椿が叔母のソフィアにそっくりだと言う証拠を見せられ、椿の堂々とした風格が上に立つものから来る事だったのだと言うことを知った。
国王には男が生まれたら自分の娘と結婚させたいと、生まれる前からいきなり婚約予約をさせられてしまった。
椿は本人同士が恋に堕ちればそれでいいのよ。部外者は黙ってなさいとぴしゃりと大伯父である国王に意見してた。
次男の帝が三才年上の王女と婚約するのは別の話。




