浴衣と花火とあの人と
夏休みが始まると幼稚園も一応夏休み〜。
『先生達も休みで良いですね〜』
なんてよく言われます。
でも私たち幼稚園教諭に、夏休みなんて存在しません。
まあ、仕事場には来ますよ。
ただし、交代で当番。
殆ど三日に一回は午前中には幼稚園って言うのが殆どですから。
子供達がいないって言うだけで、とっても開放的なんですけど…あたし的にはちょっと開放的にはなれないことがあるんだよね…。
飲み会?
無理無理。
ちょっと飲み会に行こうなんて思ったら、市街に行かないとね。
たまに子供に見つかっちゃうんです。
『あ!! つばきせんせい〜!!』
こんな感じで合コンや飲み会は自然とナシになって行く。
そんなことよりも、一番嫌な時期って言うのが夏!
夏と言えば…。
はい椿先生の分ねと笑顔で渡されれば、顔が引きつるしかない。
配られたプリントは慰安旅行のパンプ。
これだけは苦手なのよね…。
なんで?
そりゃあ〜もちろん毎年毎年行く先々で外国人扱いを受けて箸を使えば驚かれる。日本語を話せば驚かれる。納豆やネバネバ物を食べればこれまた驚かれる。
あたしは別にネス湖のネッシーでもなければ客寄せパンダでもないわよ!
あ…思わず一気に言ってしまった。
あたしの心はどす黒い赤だわ…。
「椿先生は今年はどうなさるんですか?」
先生達の言葉に、若干後ろ髪を引き摺る思いをしながらも、今年は行きたくないな〜と心の中でぽつりと呟く。
「うーん。まだ未定。でも行きたいって言うのはないかな」
「ですよねー。去年だって旅館でホステスと間違われていたし」
幸子先生のコメントに他の先生方も去年のことを思い出したのか、肩ふるわせて笑ってるし。
いいですよーだ。
間違った相手側にもきっちりと謝罪してもらったし…。
でもあれは…本当に思い出したくもない黒歴史だったわ。
ー 違います! 私は幼稚園教諭ですって何回言ったら分かるんですか!
ー あんたそんな派手な頭してぇ、派手な顔してんだから、佐々木さんとこが雇ったホステスだろ?
布袋様か、大黒様のようなありがたくもない体型のバーコード親父二名に両腕を掴まれて、尻まで揉んで来た時は叫んでやったわ。
ー 困るよ。君!彼らは君の雇い主だろ?ちゃんと君も自分の仕事をわきまえてくれよ。
笑顔だけど目だけで怒っている旅館の責任者に背中を押されて、バーコード親父達の宴会場に連れ込まれそうになった。
ー 椿先生!
ー 園長先生!!
あの時、義兄さんが駆けてつけてくれたから良かったものの。
もし、あのまま宴会場に連れ込まれてたらどうなってたか…。
「…ですよね? 先生? 椿先生?」
「へ? あ、ごめんなさい。ちょっと去年のことが頭を過ってた。ごめんね、幸子先生。もう一回言ってくれるかしら?」
「はい。実はこの…」
この日は本当に何も手が付けられないほど、あたしの頭の中は去年のあの騒ぎのことで一杯だった。
あの後旅館からはお詫びのシルシと言う事で、旅館の宿泊無料券と料理の大盤振る舞いをされそうになった。
ー「「いりません!!」」
ー「こちらからも謝罪を…「「お断りいたします!」」
ー「今後ともご贔屓に…「「お断りいたします」」
ー「チッ、あんな髪で幼稚園の先生ってわかるかよ」
義兄さんと二人できっちり断った。
あれ以来、もうあの旅館は二度と使わない事になったとか…って去年のことじゃん!
散々な目にあった慰安旅行が終わった後でも、騒ぎは治まらなかったし…。あの後礼の旅館の責任者とフロアー係だと言う人達が来て、謝りに来たけど爆弾をしっかりと落として行ったし。
確かあの時、ホステスを所望していた会社名って佐々木商事とか言ってたけど…佐々木なんて沢山ある名前だし、まさかね…。
「椿先生ってば、よっぽど去年のことが良かったんじゃないの?」
「馬鹿も休み休み言いなさい」
(幸子先生、あなた私に喧嘩を売ってるの?売ってるなら、買いますよ!)
怒りマークを額に張り付かせてにっこり笑って言えば、他の先生達も凍り付いた。
「それに今年はそれどころじゃなくなりそうなので、そうですよね? 園長先生(さっきから笑ってばかりいないで助けなさいよ)」
園長にそう振れば、他の先生方も食らいつくように園長に詰め寄った。
どうやら椿は知らなかったのだが、慰安旅行は他校の幼稚園と一緒に合同でやるらしく、今年は男性教諭が多い所との合コンを兼ねての慰安旅行らしいのだ。
合コン相手の方は、椿を知っているらしく殆ど椿目当てにこの話を持って来たらしいが、そう言うのは椿も毛嫌いしているので、今までもこれからも本能的に回避して来ている。
「あ…そうでしたね。椿先生には佐々木翼くんの事で、みてもらう事になっていますので、今回は不参加になっています」
園長の言葉に他の先生達は心なしかホッとしたような表情だ。
全く呆れた。そのくせ、口々に残念〜とか言ってる割には、隣の机の幸子先生の目なんて笑ってるし。ま、頑張って男捕まえて来てくださいな。
そんなことを頭の中で言いながらも、椿は月間保育概要を制作していた。
キーボードを叩きながらもふともう一人の佐々木の思い出していた。唯我独尊、人の事なんて利用してなんぼって感じの最悪人間、口を開けば罵詈雑言の羅列で、喧嘩上等だった。でも、こっちが誠意を見せれば、野生のオオカミが少しずつ人間に歩み寄るように恐る恐る近づいて来るのは、きゅんと来るな。もしかして里見がいつも言ってるギャップ萌えってこう言うことを言うんだろうな。
偉そうにしてるくせに、謝る時だけは捨てられそうになる子犬みたいな不安そうな目をしてくるのは…卑怯よね。
ああされたら、許さないわけにはいかないじゃない…。
ちらりと外を見れば今日も翼くんは元気に登園して来てる。今は古藤先生が見てくださっているから良いけど…翼くんの心の傷は思ったよりも深いわよね…。
実際、翼はみんなの前では明るく聡明だが、ふと一人になると泣きそうな顔をしている。まだこんなに幼いのに母親を失った翼の事をあの人は考えてくれているのかしら…?
保育日誌の中に朝の事も書かれていて、今朝は佐々木本人が息子の翼を送りに来て、古藤先生が佐々木から前日の翼の様子などを聞いているので、どうやらこっちの佐々木さんはあれから反省したみたいだ。息子の翼君の朝の送りだけは毎日父親がやってるし。
いい傾向だわ。
にんまりとしながらも、椿は眉間にしわを寄せた。
ただ帰りは毎日違う女の人が翼君を迎えに来てるので、みんな好き勝手に佐々木さんの愛人だとか、恋人だとかと噂している。
「じゃあ、百面相をしている椿先生は放っておいて、今年は大いに盛り上がるかも!」
「え?それって、私が一人で盛り下げてるみたいじゃない」
他の先生達の言葉に椿が軽く反応すると笑いが出た。
「ごめんごめん。だっていつも椿先生のところに群がるように男達が集まるから、ついね」
「そうそう、なのに椿先生はニコリともしないから、それで氷の彫刻とかクールギャルとか呼ばれているんですよ」
(何で、彫刻なのよ?!って言うか、26、7の女性を捕まえて、ギャル?!って何よ!!)
恥ずかしいと言うよりも、他の人達が自分の事をそんな風に思っていたなんて露にも思わずに笑顔でこれまで気の進まない飲み会に出てたって言うのに…。
ふん!
「な!? 私は男の人に興味はないですから。私の恋人は仕事ですしですから、もう飲み会には誘わないでください。私自身いつもお断りしていたので悪いなとは思っていたんですけど、本当に男の方は威圧的で苦手なので困っていた所なんです」
今まで椿が飲み会に欠席しようものなら、必死になって気の乗らない椿を拝み倒して椿に飲み会に強引に誘っていたって言うのに。
人が行かないと決めた途端、ころりと手のひらを返したような言い草だ。
だけど、彼女達には悪気がないのはあたしも解ってる。だから私も笑って誤摩化せられる。
そう思ってた。
ヒクヒクと顔を引き攣らせつつ、明日の支度をし始めた。
周りを見ればもう誰もいない。
そりゃそうだ。
今日は職員会議だけじゃなく、夏休みに数日だけある預かり保育の日でもある。
そしてこの日の当番は椿だけ。夏休みともなると、預かり保育に来る子供達は多くてもせいぜい数人程度だ。
なので、一番閑そうな先生(予定のなさそうな)と言うと椿も入れて若い先生達しかいない。
そろそろ子供達を園庭から園舎に入るように呼ぶと、子供達は嬉しそうに笑いながら入って来るのを見て、さっきまでの引き攣り笑いとは違う優しい自然な笑顔が出て来る。
子供だけは私を外見から判断しない。
「…せい…」
「え?」
気がつくと子供達を迎えに来た保護者が椿に声をかけて来た。
「椿先生…大丈夫ですか?」
「え?」
「さっきから先生のこと呼んでたんですけど…何かお悩みでも?」
「え…ええ…ちょっと」
「まあ、先生も適齢期ですものね」
(へ?! なんでそんな風にとるのよ!)
「ママ〜てきれいきってなに?」
「お年頃ってことよ」
ちょっと! 勉君に何を教えてんのよ!
「ふーん」
子供達も何となく雰囲気で分かったのだろう。
目で笑っているよ。
この耳年増なお子ちゃまたちめ!
「そう言えば、佐々木君ってまたお残り保育なんですか?」
「え? ええ」
「それって、先生方にも負担がかかるんじゃないんですか?やっぱりあの子には転園を…」
「国見さん、それは子供達の前ですのでその話題は避けていただけませんでしょうか」
いつもなら、この国見さんと言う人はうわさ話が大好きですぐに人の事に首を突っ込みたがる困った人なのだが、
「え、ええ。わかりました…」
あれ?今日に限って彼女はしつこく…食いついて…こない?
どうしたんだろう?と彼女の顔を見れば、国見さんの目は椿を見ていない。
彼女の視線の先を辿って行けば、椿の頭上を遥かに越えるところに向かっていた。
「早乙女先生、すみません。佐々木ですが」
ああ…そうか、彼女初めて佐々木さんを目にしたんだ。いつもだったら日替わり弁当みたいに毎日違う女性がやってきて翼くんと一緒に帰っちゃうからね〜。
モデルと見まがうほどの容姿を持っている佐々木さんを見れば、殆どの主婦達はこうなるよね。
すごいわ…国見さん、顔がまっ赤だわ。
「さ、佐々木さん?」
「国見さん、こちらは佐々木さんです」
「こんにちわ。国見さんとおっしゃるのですか。佐々木翼の父です。いつもお世話になっています」
「こ、こちらこそ、いつもうちの勉がお世話になっています」
うわぁ国見さんの声が1オクターブも上がってるよ。
でも国見さんの言葉に佐々木さんはマダムキラーのスマイルで誤摩化すと、翼を呼んで下さいと声をかけて来た。
ぽおっとなった母親に痺れを切らした勉くんは、お腹が空いたとぐずり始めると母親に嗜まれるも、勉くんの大きな声は止まるところを知らない。
それを見た椿は、心の中で勉君に親指を立ててGJと囁いていた。
「わかったわかった。勉の好きなおやつを食べてかえろうね」
「やった!!つばきせんせい〜さようなら」
「はい。さようなら。勉君、国見さんもまた明日」
ようやく騒いでいた親子が帰って行った後は、台風がさった静けさのようにしんと静まり返った。
なーんかこの静けさってちょっとキツいんだけど…。
呼吸するのも五月蝿いくらいだよ。
「すみません…早乙女先生…」
「え? あ、いえ、いいんです。これも仕事ですから」
そう、これも仕事。
他の子供達は知らないけど、翼君は日中は毎日ここで過ごしている。
父親の仕事が忙しい時はそのまま椿が家に連れて行くのが日課だ。今まではサービス残業だったけど、事情が事情ってことで園長が佐々木さん本人と話し合い、椿の残業手当は佐々木のポケットマネーから出ている。
「早乙女先生…「こんにちわ。翼くんをお呼びいたしますね」
話しかけて来た佐々木の言葉を遮ると椿は翼を呼んだ。
「翼君、お父さんが来て下さったわよ」
「おとうさん!」
嬉しそうに父親に抱きつく翼君を見て、椿は胸がチクリと痛んだ。
もし、私にも…。
いつか自分にも大切な人が出来るんだろうか…。そんな事を考える度に椿の頭の中には黒椿が現れ、夢見る椿に現実を叩き付ける。
ーあんたが幸せな結婚なんて出来るわけないじゃん。相手だって、あんたの中身なんて見てないんだよ。
違う!!私を見てくれる人は絶対にいるわよ!!
ーあんただって去年のこと忘れたわけじゃないでしょうが。夢見るのも大概にしなよ。
いつだって黒椿が言っている事は事実だ。就活の時も慰安旅行の時も、痴漢にあった時も、いつだって私が悪いみたいに言われて来た。
二人の後ろ姿はこれまでも何度も見てきたのに…。
あれ?どうしてこっちに来るんだろう?
翼君が急いで椿の方へと走って来た。
「椿せんせ〜、一緒に帰ろう〜」
無邪気な翼君の声に椿も華が綻ぶような笑みを見せると、佐々木の顔が途端に赤くなった。
「お父さん? お顔がまっ赤だよ? お熱でもあるの?」
「あ? い、いや…夕日が顔に当たって赤く見えてるだけだよ」
「あーあ。今日は椿先生と一緒にお風呂入れないんだな〜」
「「へ?」」
つ、翼君? 何故、今そこでそれを言う?
思わず首がゼンマイ仕掛けの人形のように小刻みに動いた。
翼君の顔を見るとうれしそうな笑顔をしている。
コイツ…もしかして、確信犯?
「そ、そうだ…ね。でも、明日は一緒にお風呂に入りましょうね」
ここは普通に会話しないと。
異常なほどのこの胸の高鳴りはなに?
もしかして、私って何かの病気なのかしら?
そう言えば呼吸も辛いし、顔も赤いような気がする。
「先生、一緒に帰ろ?」
そんなに泣きそうな顔をしなくても、いつもは迎えに来てくれないお父さんが来てくれたんだし、自分のお父さんに甘えた方が良いのに…なんで私に聞くのかな?
「翼君、先生ね鍵を職員室に返して来るから…「いっしょにかえろ」
珍しいくらいに強い翼君の言葉に、佐々木さんも椿も目を見開いていた。
「…早乙女先生、翼もこう言っていますから、お礼と言ってはなんですが、お食事でもどうですか?」
「……お断「先生…僕と一緒にご飯食べよ」
椿が断りの言葉を紡ぐ前に、日頃表現が乏しい翼がぴょんぴょんその場で飛び跳ね、先生とお食事嬉しいなと喜ばれては、断る訳にも行かずに少し待っててくださいと告げると、職員室の扉を施錠して警備室へと向かった。
お待たせしましたと佐々木親子が待つコインパーキングまで走って行けば、慣れたように佐々木は助手席のドアを開けると椿を乗せた。
どこに行くんだろうかと不安になりながらも、前を向いていると横から佐々木が既に場所を決めたらしく、すぐにどこかに電話をかけはじめた。
二三分もしないうちに電話も終わり、そろそろ行きましょうかと言われても椿自身、まな板の鯉よろしくここからだしてはくれないんですよねと思わず運転席に座ってる佐々木を睨んた。
「あ、あの…」
どこ行くのよ。
もしこんなところを園の子供達に見られでもしたら、一時間後には全保護者達にまた何を言われるか…。
ズキリと痛む胃を手で押さえながらも、椿は小さくため息を吐いた。
「少し幼稚園から離れた場所の方が先生的にもいいでしょう…よし、翼 今日は飛鳥の所に行くか?」
「あすかちゃんのとこ?」
翼の言葉にそうだと笑いながらハンドルを握る佐々木に、疑問を感じながらも椿は自分の胸にツキンと来る痛みを感じていた。
飛鳥って?
女の人だよね…。
なんだ奥さんの他にも彼女がいるんじゃない。
離婚したとか聞いたけど、翼君もその人のことを知ってるみたいだし、もうあたしは用なしってことよね。
弟の職場ですと笑みを浮かべながらこっちに目をやる佐々木に、「べ、別に気になってなんかないんだから」椿は耳まで真っ赤にすると明後日の方向を向いた。
着いたところは、一見普通の民家に見えた。
「ここ…ですか?」
「はいそうですよ」
確かに飛鳥と書いてあるけどさ…。ここって…明美先生と幸子先生が今夜の合コンに使うとか言っていたお店と似てるけど、違うわよね…どうか違ってくれ〜!!
「奥の方が座敷となっています。少々足下が暗いのでお気をつけ下さい」女将に案内され、椿達は奥の座敷へと進んだ。
『ぎゃははは!!!』
突然、後ろの方から大音量の笑い声と共にフンゴフンゴと引きつり笑いまでも聞こえて来る。
「「「……」」」
この特徴ある笑い声って…。
明美先生の笑い声にそっくりなんですけどぉ。
翼くんも明美先生みたいな笑い声だねなんて言ってるし、佐々木さんは同リアクションとって良いのか分からずに顔引き攣ってるよ。
『なぁんだ。今日は椿ちゃん来れないの?』
『残念でした坂口さん。椿は残業でーす。ね、幸子』
『そうそう。金にもならないサービス残業。まったく、一人だけいつもいい子ちゃんしてるし』
ムスッとした幸子先生の声が聞こえて来た。あーあ相手もどうしてそんな来もしない女の事を聞くかな〜。普通は聞かないでしょうにと心の中で突っ込む椿に「幸子先生たちも大人げないな〜」と子供の声がした。
別に聞き耳を立てている訳じゃないけど。なんでか足がここから動かないんだよ。
一体あの子達は私のことをどんな風に思って接して来たんだろうって。
『椿ちゃんは、そういや〜日本人だって聞いたけど、どこから見ても外国人だよな』
男の声に賛同するように機嫌が良い二人は店の迷惑も考えずに大声で笑い出した。
『でも椿先生って、あーんな髪しているのに、ほんとによく幼稚園で働けるよね〜』
『やっぱ、コネでしょコネ!! 園長を誑し込んだとか!!理事長の愛人とかさ!』
『あ〜!!言えてる〜!!』
『『ギャハハ!!(フンゴフンゴ)』』
それを聞いた途端、椿の中の何かがプツンと切れた。
「せんせ?」
くいくいと袖を引っ張って来る翼に気がついた椿は、慌てて笑顔を作ると翼の手をとって佐々木が待つ奥の部屋へと歩いて行った。
迷われましたか?と佐々木と店員に心配されたが、笑顔で首を横に振ると案内された席へ座った。
「椿先生、どこか痛いの?」
「え?」
慌てて翼を見ると椿に自分のハンカチを差し出して来た。
どうやら自分は泣いていたらしい。
「す、すみません…コンタクトレンズにゴミが入ったみたいで…ちょっとご不浄に行ってきますので食べ物が来たら先に召し上がってください。すぐに戻りますので」
一息に言葉を口にすると椿は鞄を持って化粧室へと向かった。
もの凄く時期外れですみません(汗)




