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第63話 初見玄玉



林瓶は暗室の外縁まで辿り着いた。


暗室と言っても、実のところは山壁に穿たれた口にすぎない――二丈四方ほどの洞穴で、正面には太い鉄格子が一列に並び、その鉄格子にはびっしりと禁制の符文が刻まれていた。闇の中で、暗紅色の、まるで燃え残りの熾火のような光を泛べている。洞口の大半は山壁の影に覆われ、昼であっても、おそらく陽光が差し込むことはほとんどないのだろう。鉄格子の向こうは真っ黒な奥へと続き、中に人がいるのかどうかも見えなかった。


林瓶は鉄格子の前に立ち、何も言わなかった。禁制の符文は目の前の鉄格子の上を、ごく淡い光を流しながら巡っていた。まるで燻り続ける木炭のようだった。呼吸は夜空の中でごく薄い白い息となって凝り、散り、また凝った。


鉄格子の向こうには物音ひとつない。しばらく立っていたが、口を開こうとしたその時――しゃがれた低い女の声が奥から伝わってきた。起こされたことへのわずかな苛立ちと、長年閉じ込められてきた者に特有の静けさを帯びた口調だった。


「……今日はずいぶん賑やかだね。お前で何人目だい?」


声は高くない。若くはない――林瓶が想像していたより少し低く、わずかに擦り減ったような質感を帯びていた。長いこと使われていない刀のようだった。刃はまだある。だが、その上に薄い暗色が一層かかっている。冷たくはない。だが温かくもない。


林瓶は答えた。声は大きくなかったが、暗室の静けさの中では一字一句がはっきりと聞こえた。


「自分から歩いて来たのは、一人目である」


鉄格子の向こうで一瞬、沈黙が落ちた。やがて人影が奥の影の中から歩み出て、鉄格子のそばまで来た――歩みは速くはない。だが、長年閉じ込められていた者にありがちな、探るようなにじり寄り方でもない。足取りは安定していた。


月光が雲の裂け目から一筋漏れ、鉄格子の手前半歩ほどの位置を照らした。女は月光の下には立たなかった――鉄格子の内側の影の中に立った。だがその輪郭は、闇の中でゆっくりと浮かび上がってきた。


ひどく痩せた女だった。灰色の長髪を垂らしているが、もつれてはいない――中にあってなお、最低限の手入れは保っているのだ。身につけているのは色も判然としない古びた衣で、洗いすぎて布地はすでに薄くなり、だぶついて身体に掛かっていた。手は鉄格子に置かれ、手首は細く白く、骨の節がくっきりと浮いている――枯れ痩せているのではない。骨は一本一本すべてそこにある。ただ肉が失われているだけだった。


だが、目は違った。


その双眸は――身体とはまるで同じ状態に属していなかった。身体は二十年の幽閉によって刻まれたものだ。痩せ、乾き、擦り減っている。だがその目は生きていた。澄んだ意味での生ではない――暖炉の中で最後まで燃えている一本の薪のような生だった。表面には灰がかぶっている。だが、その灰を払えば下は赤い。眼窩の奥深くに落ちくぼみながら、二十年も閉じ込められていた者のものとは思えぬほど明るかった。女が林瓶を見る時、林瓶は自分が読まれていると感じた――見られているのではない。視線は林瓶の上を一巡した。顔から襟元へ。露わになった手首へ。土のついた靴の甲へ。それから引いた。その一連の過程はおよそ二度の呼吸ほどだった。読み終えたのである。余計に一目見ることもなかった。


それから女は口を開いた。声は高くなく、底にわずかな掠れを帯びていた――長く口を利いていなかった者特有のざらつきである。音節と音節のあいだには、ごく薄い何かが挟まっていた――ためらいではない。長いこと使っていなかった表情が浮かび上がる前に、まず自分でそれを確かめたような、そんな間だった。


「……お前か」


二文字。そこにひとつ余分な間があった。その間は静かな夜風の中に一瞬とどまり、まるで頭の中でこの顔と記憶の中のある瞬間とを照らし合わせたかのようだった。余計な説明はない。「見たことがある」とも言わず、「死んでいなかったのか」とも言わない。女は林瓶を見分けたのである――しかも、その見分けたという事実は、女自身にとっても少し意外なことだった。二十年だ。もはや何事も自分を驚かせはしないと思っていた。だが今夜、それは起きた。


女はその意外さを表には出さなかった。二十年が教えたことのひとつは、決して他人に自分が何を考えているか悟らせないことだった。影の中にもたれ、口を開いた時には、口調はすでにあの気だるく平らなものへと戻っていた。からかいなのか、本気なのか判然としない調子を帯びて。


「……お前はなかなかしぶとい命だね」


林瓶は鉄格子の外に立っていた。「まだ生きている」という話題には乗らなかった。女が何を指しているのかは分かっていた――初日、林瓶が落ちる直前のあの一瞬、女は林瓶を一目見ていたのだ。


林瓶は直接それに応じず、ただ鉄格子の外に立ったまま、女の名を呼んだ。


玄玉(シュエンユー)先輩」


玄玉は鉄格子の内側の影にもたれ、視線を林瓶の顔に一瞬とどめ、それから胸元へ移した。紫の令旗の一角が衣の合わせ目から覗いていた――深紫の布地、その縁の銀糸が禁制の暗紅色の余光の中でひらりと光った。玄玉はそれを見た。だが問わなかった。


「言ってみな」玄玉の声はあの散漫な調子へ戻っていた。急ぐことのない者が、たまたま通りかかった相手と世間話でもするかのようだった。「外門弟子が、伝功長老(でんこうちょうろう)の旗を持ち、内務の札を持ち、執法隊の情報まで知っている――そこまで手間をかけて私の前まで来たのだ、何を聞きたい?」


林瓶は回りくどいことを言わなかった。


「玄霜」


玄玉の表情は変わらなかった。だが口調がわずかに一拍遅れた。


「……今のかい?」


「うむ」


「どうした」


林瓶は話した。きわめて抑えて、ただ自分の知る事実だけを述べた――幼い頃に玄祈使(げんきし)の位を継いだこと。化霊丹をずっと服していること。去年はいっとき好転し、笑うことも話すこともできたこと。その後また衰え始めたこと。今では林瓶のことを覚えていないこと。詩も、かつて口にした言葉も、覚えていないことを。


玄玉は聞き終えても、すぐには口を開かなかった。考える時、わずかに頭を垂れ、視線を鉄格子の前の地面に落としていた。ぼんやりしているのではない――計算しているのである。数息の後、顔を上げ、口調をまたあの気だるいものへ戻した。


「よし、分かった。お前が私を訪ねてきたのは、あの子のことを聞くためだけかい?」


この一言は探りだった。林瓶にはそれが分かった――この男がただ情報を引き出しに来ただけなのか、確かめたかったのだ。もしそうなら、適当に二言三言くれて追い返せばよい。


林瓶は一瞬沈黙した。玄玉はこの話題に少しも熱を見せない――二十年も閉じ込められているのだ、外の後継者に情などあるはずもない。玄霜のことだけを言っても、玄玉は動かない。


林瓶は道を変えた。声は高くない。だが一字一句、確かな足場を踏むように置かれた。


「あなたはここに二十年いる。功法の件を、あなたは耐えて書かぬ――書き終えれば利用価値がなくなるからである。そのことは知っている」


玄玉の目がわずかに動いた。その動きはごく軽いものだった。目を伏せなかった――視線は林瓶の顔に落ち着き、そのまま止まった。


林瓶は玄玉を見たまま、玄霜のことをそれ以上追わなかった。この道では通じぬと知っていたからである。玄玉は同情や共感ゆえに口を開くような人間ではない。林瓶は鉄格子の前から半歩進み、声を強めはしなかったが、言葉の重みは変わった。


「外へ出たいか」


玄玉の眼差しが変わった。


先ほどまでの「付き合いで二言三言話してやる」という散漫な姿勢が引っ込み、玄玉は鉄格子の内側の影にもたれたまま、数息沈黙した。それから問い返した――口調は先ほどほど気だるくはなかった。


「お前に何ができる」


二人は鉄格子を隔てて数息見つめ合った。林瓶は大言壮語をしなかった。きわめて率直に言った。


「今のところ、直接あなたを出す術はない。だが、もし宗門の側で手を回し、あなたを暗室からもう少し条件のよい場所へ移せるなら――協力してくれるか」


玄玉はすぐには答えなかった。これまで長く生きてきて、どんな言葉も聞いてきた。だが、ひとつのことに気づいていた。この男は、できもしないことを吹聴しない。「何ができるか」と「今はまだ何ができないか」を分けて語っている。


しばらく林瓶を見てから口を開いた。声は急がず、緩まず――信じたのではない。条件を交渉しているのである。


「お前がそれを成す前に――まずひとつ、私のためにやることがある」


林瓶は待った。


丹霞峰(たんかほう)の、顧という姓の女――顧青烟(グ・セイエン)。知っているかい」


林瓶は、何度か会ったことがあると答えた。顧青烟――丹霞峰の長老であり、薬を受け取りに行った時、丹房で顔を合わせたことがある。


「その女を訪ねろ。そして一言伝えるんだ――」玄玉の声はゆっくりになり、一字一句がまるでひどく深いところから掬い上げられるようだった。「焼火道人(やきびどうじん)が訊ねに来させた――あの品は、まだあるかと」


林瓶はその名を記憶した。焼火道人。どこかで聞いたことがあるような気がした。


「もし返事をしたなら、その返答を持って私に会いに来い」


説明はない。背景もない。説明する必要もない――林瓶が本当に顧青烟に接触できると証明すれば、玄玉はその先の話を続ける。それが値だった。


林瓶は余計なことを問わなかった。問うても無駄だと知っていたからである。


「よい」


身を翻して立ち去ろうとした。


数歩進んだところで、玄玉の声が暗室の中から響いた。口調はまたあの気だるいものへ戻っていたが、言葉の中身は気だるくなかった。


「次に来る時は、左の道を回って来な。さっきお前が通った道には、ひとつ符文が刻み切れていないところがある――今回は踏まなかったが、次もそうとは限らない」


林瓶は一瞬足を止めた。だが振り返らなかった。


それから再び歩き出し、来た道を戻っていった。


鎮獄峰(ちんごくほう)の裏山の山道を抜けた時、夜風が正面から吹きつけてきた。入っていった時より少し冷えており、顔に当たって、額に滲んでいた汗をひと筋乾かした。雲はやや散り、月光が山道の上に淡い輪郭を落としていた。灰白色で、薄く降りた霜のようだった。


林瓶の脳裏にはいくつかの光景が繰り返し浮かんでいた。暗室の中の、あの痩せた背。鉄格子に手を置き、骨の節がくっきりと浮いていたこと。玄玉が「お前か」と言った時の口調――そして、口にした焼火道人という名――その名を顧青烟は知っている。


林瓶は住まいの方へ向かって歩いた。足取りは速くない。左肩の古傷が、日が落ちてからじわじわと疼いていた。最も難しい部分はまだ始まってもいない――顧青烟に口を開かせる方法を考えねばならないのだ。


暗室の中では、玄玉がひとり座っていた。


足音はすでに遠ざかっていた。山道の小石が転がる音も、もうしない。風が鉄格子の隙間から吹き込み、夜の冷気を運んでくる。玄玉はそれに慣れていた――もう二十年近い。暗室の中では、季節ごとに風がどの方角から吹いてくるかまで、玄玉は知っている。


鉄格子の外は再び静かになった。


玄玉の頭の中では、思考が巡っていた。


執法長老(しつぽうちょうろう)の掌下にいた者が死んでいなかった。あの時、玄玉は自分の目であの掌風が落ちるのを見たのだ――ちらりと見やった時、人影がひとつ倒れるのが見え、死人だと思った。だが林瓶は死んでいなかった。今、その男は玄玉の前に立ち、伝功の旗、内務の札、執法の情報を持っている――ひとりの外門弟子が、三方のものを揃え、丙字暗室まで辿り着き、こう言ったのだ。玄霜、と。この男はいったい何者なのか。


しかも、ひとりの玄祈使のために来た。


玄祈使を救う――玄玉の胸の内で、何かがひとつ止まった。その言葉は頭の中に一瞬とどまり、まるで石が井戸へ落ちていきながら底に届かず、中空にぶら下がっているかのようだった。玄祈使を救う。この言葉そのものに、どこから来るのか分からぬ奇妙な重みがあった。玄玉にはそれが何なのか言い表せなかった。玄玉はその言葉を脇へ置き、それ以上考えなかった。今考えるべきことではない。


あの男は玄霜の状態を語った。笑える。話せる。詩を書くこともできる。だがその後、衰え始め、今では林瓶のことを覚えていない――名さえ満足に呼べなくなっている。玄玉は聞きながら、ずっと心の中で計算していた。この進み具合なら、功法はまもなく成る。


現任の玄祈使が完全に掌握されれば、もはや玄玉は不要となる。玄玉が二十年耐えてきたあの件も――いったん別の者から得られるようになれば、玄玉には価値がなくなる。価値のない囚人。その意味するところを、玄玉は知っていた。


顔を上げ、鉄格子の外を一度見やった。あの方角にはもう誰もいない。ただ、月光の届かぬ地面にごく淡い足跡がひとつ残っているだけで、その縁はすでに曖昧になり始めていた。


玄玉がこの男の前に押し出されたのは、情勢に追い詰められたからである――林瓶を信じたからではない。他に道がなかったのだ。


風がまた吹き込み、肩にかかる髪の先を揺らした。玄玉は闇の中でしばらくじっと座っていた。やがて頭を垂れ、膝に掛けていた古い衣を引き寄せて整え、次に鉄格子の外から足音が聞こえてくるのを待った。


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