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異世界ライフは美しい!  作者: 清水悠


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09【グレンの乙女心①】

なんだアイツは!!

なんだアイツは!!

なんなんだアイツはッ!!?


そう心の中で何度も叫び、苛立たしさを必死で抑え自室の扉を勢いよく閉めた

それからバンッ!!と両手でテーブルを叩き、沸々と抑えていた感情を一気に吐き出した

自分は騎士団の団長であるため、自室にたどり着くまでこの怒りは面に出さぬよう必死で押し殺した


「 なんなんだぁアイツはぁッッ 〜!!!」


ひと言ひと言に渾身の力を込める

勇者の召喚が成功した時には私も心から歓喜した

しかしあのような者がこの世界を救えるとは

到底思えなかった


「 疲れたから宴は欠席します」だと?

嬉々として扉を触りまくってただろうがッ!!

だいたいなんであの者一人だけ豪華な部屋なんだ!? 俺だって初めて入って驚いたよ!

完全にお姫様の部屋じゃないか?

丸メガネにはもったいない部屋だろう?全身黒ずくめで気味が悪い、職業は暗殺者か?

 レイブン卿もどうかしてる。あんな奴「帰りたい」と言ったときにさっさと送り返せばよかったんだッ!!


目の端にシルバー製のカップが写ると手の甲でそれを弾き飛ばした

カップは派手な音を立てて壁にぶつかりカラカラと床に転がる


女性に対してこれほどまでに怒りを覚えたのは初めてだ。

 思えば最初から癪に触る奴だった。皆が真剣に話し合ってるというのにため息ばかりついて、王の言葉もろくに聞いてない態度にイライラした

挙句に大丈夫かとこちらが心配してたら睨み返して来やがった!いやあれは驚いたよ、性格が捻じ曲がってるんじゃないか?

 そういえば「2人残るなら帰っていい?」とか言ってたか?

良いわけないだろ!ことの重大さがまるで分かってない!

その頭の中はスカスカのスポンジなのか?

これは国を揺るがす一大事なんだぞ!ふざけるなッ!!


ああ、なぜあのような者に私達の未来を託さねばならぬのだ!?

確かにあの石を輝く宝石に戻す力には驚いたが、あの者は駄目だ、人格に難がありすぎる。これならもう一人の男が残った方がマシだっただろう


ぐぬぬと力を込めたやり場のない怒りをどう処理するか

頭を抱えると、ふと顔を上げた


あぁ別に構わないのか

あいつは観光するんだったよな?

なにも共に長旅へ向かうわけではない

彼女にはずっとあの不釣り合いな部屋を楽しんでいただき

さっさとご自分の世界へご帰宅いただこう

そしてそれから私は他の勇者様の護衛を手伝うとしよう


方向性を見据えて若干ではあるが気持ちが落ち着くと、先ほど飛ばしたカップを拾い上げる。物に当たるなど私としたことがこれほどまでに取り乱すとは…

 しかし再び脳裏に忌々しい記憶が甦り固まる


騎士の相手を決めるときあいつはなんて言った?

「誰でもいーよー」だったか?

自慢じゃないが私はこの国一の剣豪だぞ?

もっと光栄に思ったらどうだ!!


「 フッ…フッ…フッ……」


腹が立ちすぎて笑いが漏れる

いいだろう、任務は任務だ

あちらがどれほど礼儀を欠いた態度を取ろうとも

私は騎士としての務めを果たすまでだ


洗面台へと向かうと冷たい水で顔を洗う。勢いで濡れてしまった髪からポタポタと雫が落ちた

 片手で滴ごと髪をかきあげると深呼吸する


さぁ、まだやるべきことがある


宴に出ないと言いだすなど想定外であったが

だからといって自分の任務が終わるわけではない

勇者付きの騎士は宴に出るよう指示もある

軽く身だしなみを整え、自室の扉に手をかけた


扉を開きながらふと思った


そういえばあいつ、サンチョがどうとか言ってたな…


しかしそんな小さな事は、扉を閉めると同時に私の頭からかき消えていった

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