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異世界ライフは美しい!  作者: 清水悠


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57【おとり捜査?】

「 チェンジよ!チェンジ!チェンジ!!」


「 何でだ!? 私の演技に何の不満があるのだ!!」


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 フレデリックの思いついた「おとり捜査をやってみよう!」はすぐに採用され、周囲に配備されている隊員達と打ち合わせた。


 ぶっつけ本番でこんな事をしていて大丈夫なんだろうか?


 私達は、サラとターニャの二人が閉じ込められていた地下へと向かい、そこで取引相手を待つこととなった。


 フレデリックが考えたのは、私達がゴロツキグループに混ざるのではなく、私達が丸ごとゴロツキグループになるという「なりすまし作戦」だった。


 最初はそんなの無理だろう、と思ったけど、この世界の凄いところは魔法が使えるところ。

 眠らせているゴロツキ達の所へ行くと、フレデリックは一人の男の体に触れ、呪文を唱えた。


「 なっ!!」

「 ウソッ!?」

「 …… すごい。」


 あろうことか超絶美形なフレデリックが、一瞬で中年の小汚いおっちゃんへと変貌する。足下には同じ顔の人物が眠ったままになっているから、そっくりそのまま双子のようだった。


「 どうです? この姿なら取引相手に近づくことが可能です。私とグレンとリュカで、誘拐犯を演じましょう。セナ達は檻の中で捕まったふりをしてもらいます。」


 フレデリックは、檻には結界を張り安全性は保証します。と、保険屋さんみたいな事を言う。

 ってゆーかさ、その外見で、その話し方は違和感がハンパない。


「 ここまでやる必要がありますか?」


 珍しくリュカが反論する。


「 奴らの関係もよく分からないのに、相手と直接やり取りするなんて無謀にも程があります。村に入った所を捕まえるか、眠らせるかで良いのではないですか?」


 フレデリックがゴロツキの姿で、スッと椅子に座りテーブルに両肘をつく。


 …… うん、フレデリック。このポーズはイケメンだから様になるのであって、その姿だと何だか見るに耐えないわ?


「 取引相手が、たまたま村を見つけたから立ち寄っただけだ、とシラを切ったらどうしますか?」


 確かにそうだ。そもそもおとり捜査の真意はそこにあり、現行犯である動かぬ証拠が必要だ。ただ捕まえただけでは、言葉巧みに逃げられる可能性がある。リュカは納得したのか俯いてしまった。


 うーん、リュカって潔癖っぽいもんね。誘拐犯の姿になるのも演技も嫌なのだろう。


「 だったら誘拐犯はフレデリックとグレンの二人でもいいんじゃない? あとはアドリブでなんとかすればいいわ。」


 話を一旦まとめると、私とサラとターニャの三人は檻の中へと入った。檻の中に入る経験も初めてなのでちょっとワクワクする。


 リュカは変身する代わりに、また人質役で天井から吊るされる。よほど嫌な経験だったのか露骨に顔をしかめた。ただ、今回は鎖を氷でつなげたから、自分の意思で外せるようになっている。覆面は息がつらいだろうけど、少々我慢してもらおう。


 ゴロツキに変身したグレンとフレデリックは、椅子に座り細かい打ち合わせをしている。普段と変わらない話し方だったから、私はいくつかの質問を投げかけた。


「 ちょっとぉ〜、誘拐犯のつもりで答えてって言ってるのに、それじゃ全然ダメじゃない。」


 この二人はまず、村の入り口まで取引相手を出迎え、この部屋まで連れてこなければならないのに、こんなガバガバな演技では話にならない。


 ここで、冒頭のセリフへと戻る。


「 見てられない、私も誘拐犯をやるわ!あなた達二人では絶対にバレるもの!!」


 最初は危険だと猛反対されたけど、途中からはリュカの援護射撃があり、私もめでたく誘拐犯になれた。

 私が選んだゴロツキは、あの中央にいた男だ。多分だけど、この人がリーダーだと思うのよね。


「 な、何をする!?」


 私は二人に酒をふりかけ、自分にもかけた。


「 ジッとしててよ、上品な香りのするゴロツキなんておかしいでしょ? お酒でごまかすの!」


 だいたい二人は口調だけでなく、椅子を引く姿や、ため息のつき方まで優雅だ。

 これは本番まで相当な特訓が必要ね!そう思った矢先に、外にいる騎士から「村から一キロほどの距離に、怪しい一行が!」と報告があり、私達は村の入り口へと向かった。


 本当にここに来るのだろうか?

 人身売買の取引をするような相手と、対等に渡り合うことなど無謀にも程がある。私だって、グレンとフレデリックがいなければ、こんな事出来ないけど、何より「人身売買」という行為は絶対に許せない! 何がなんでも捕まえてやる。


 遠くから数頭の馬と、それに跨る男達がやって来るのが見える。1 … 2 …… 3 … 4 …… 5 … 6 、全部で6人。近づいて来ると、顔に入れ墨のある男がいた。彼が「ザゴバランティス」だろうか?


 最初の挨拶が肝心。でも相手との関係性が分からない。入れ墨の男は近くに来ても馬から降りなかった。もしお互いの関係性が対等かあちらの方が下なら、このタイミングで降りなければおかしい。


「 ようこそおいでくださいました。」


 私は深々と、しかし両手を広げて大げさに挨拶をした。これなら相手より下手に出てるし、おどけてるようにもとれる。いつもと態度が違ってもそれほど違和感はないだろう。


 それを見た男はニヤリと笑みを浮かべる。


「 よぉサイード。このザゴバ様がわざわざここまで来てやったんだ。うさぎの用意は出来てるんだろうな?」


 間違いない!!この男がザゴバだ!

 私はゆっくりと頭をあげ、あのゴロツキの話し方や仕草を頭の中で反芻した。


「 期待以上のうさぎをご覧に入れましょうや。」


 馬小屋へと移動しながら、私は自分の名前を頭に叩き込んだ。


「 なんだ? お前ら三人だけか?やけに少ねぇな。他の奴らはどうした?」


 私は振り向かずに馬を引きながら答える。


「 痛いところに気付きなさんな。なぁに、ついさっき仲間の一人がドジ踏んじまってねぇ。みーんなでうさぎ狩りに出払っちまった。」


「 何だと? そのうさぎが無事に戻らなかったらどう落とし前をつけるつもりだ?」


 私はそこでザゴバの方に顔を向け、口角を上げた。


「 大丈夫です。あのうさぎは今回の取引とは関係ねぇ、別の取引のうさぎですから。ザゴバ様の心配する事は何もねぇ。」


 こんな時は、少し相手をイライラさせてそこに注意を向けさせた方がいい。ゴロツキ達が「取引」と話していたくらいだから、ザゴバと男達は「仲間」では無い。だったらゴロツキ達が他と取引しても、ザゴバは文句は言えないはず。


「 ほぅ、それは聞き捨てならねぇなぁ。誰だぁ?その相手は。」


「 それは流石に言えねぇが、なぁにザゴバ様の足元にも及ばねぇ小者です。気にすることはありませんぜ?」


「 フンッ!別に気になどしてない!だが、お前もずいぶんとえらくなったもんだな!」


 いい流れね!ザゴバは従順だった取引相手が生意気になってイライラしてる。だけどゴロツキがザゴバを上得意だと言うもので、それ以上は何も言えなくなった。


「 さぁ馬はここまでだ。あとはこっちでやっときましょう。オイッ!」


 グレンに向かって手綱を渡した。

 さすがに馬小屋に馬が一頭もいないのを見られるわけにはいかない。


 ああ、グレンたら「 ハッ!」って返事をしている。さっきフレデリックも男達に「 それでは行きましょう。」ってバカ丁寧に言ってたし、これじゃバレるのも時間の問題かもしれない。


 私達は地下へと降りて、あの部屋へと向かう。

 本来ならあれだけ沢山いたゴロツキが一人もいないことを不審に思うとこだろうけど、今ザゴバが考えてることは「 これほどの人手を使って捜すうさぎはどんなうさぎなのか?」と「 それほど大事なうさぎの取引相手はどんな奴なのか?」辺りだろう。


 廊下の奥から女の子の泣き声が聞こえる。ターニャの演技が予想外に素晴らしい。サラ…… 女優は向いてないわね。

 男達は二人の女の子を見て感嘆の声をあげた。


「 こりゃあ凄え!町娘という話だったがこの身なりは格がちがう!!」


「 貴族の娘だ。」


「 貴族だって!? 護衛がいただろう?」


「 そいつも間抜けな奴だったもんでね。一緒に連れてきちまった。」


 ザゴバは信じられないといった表情で私を見返す。私の視線の先には「間抜け」と聞いて暴れるリュカがいた。


「 ラグドールの騎士じゃねぇか!!こりゃ一体どうゆう事だ!?」


「 今回は特別だ。幸運にもいろんな条件が重なっちまってこうなった。俺たちもまさかここまで上手くいくとは ……。」


 どうやって捕まえたかなんて私も分からない。慌てて言い訳するけど、ザゴバは私の話などまるで耳に入っていない。


「 おい、ちょっと待ちやがれ …… ラグドールの騎士で、プラチナブロンドの髪 …… まさかとは思うが ……?」


 ザゴバは、部下たちが止めるのも聞かずリュカのお面を剥ぎ取る。ちょっと興奮状態で気持ちが悪い。


「 やっぱりかッ!!ローゼンタールの長男様じゃねぇか!! …… おいおいどうしたこんな所でこんな無様なお姿でよぉ!!」


 リュカが顔を背けると、ザゴバはリュカのアゴをつかみ正面へと向ける。その笑みは心の底から軽蔑に値するほど不快だった。リュカもその剣幕に涙目になっている。


「 お前はいつも俺様を汚らしい目で見てただろう? ありゃあ悲しかったぜ〜?」


 そう言ってリュカの頬をベロリと舐め上げた。リュカはワナワナと震え出す。


 あ、ヤバイ!リュカは今にも爆発しそうだ。もうこれ位で逮捕して良さそうだと思うけど、グレンやフレデリックはまだ動かない。もっと確実な証言が必要なのだろうか? 仕方がないので私は慌てて間に入った。


「 ザゴバ様!!コイツは売り物ではねぇですよ!?」


 ありゃ? 私も変な言葉遣いになっちゃった。


「 うるせぇッ!!俺はコイツにもコイツの家にも恨みがある。コイツは俺が買う!他の取引相手に渡そったってそうはいかねぇぞッ!!」


 やだ目が血走ってる。っていうかリュカも取引の対象になるってどうゆうこと!? えーちょっとかなりキモいんだけど。


 ザゴバは短剣を私の目の前にチラつかせると、部下へと合図をして、袋をテーブルへと投げつけた。


「 それだけありゃあ十分だろう? 言い値の十倍ありゃ文句は言わせねぇ!!女二人とコイツは俺様が買わせてもらう!!」


 ハイ、取引の現場を押さえましたー。私は短剣の刃部を指さして笑顔になる。


「 ザゴバ様? ついでにこの短剣もいただいて良いですか?」


 この後のことを考えると、武器は取りあげた方が良いわよね?


「 チッ、いいだろう、それくらいくれてやる。…… 取引成立だ。」


 ザゴバは柄の部分をくるりと回した。


「 コイツは斬れ味がすごいぜ〜? 試してみるといい。」


 へー、そんなに凄い斬れ味なんだ。


「 おい!そうと決まればこんな所に用はねぇ!女を出せ!……さぁて、ローゼンタールのご長男様はどうするかな。…… オイ、魔法封じの腕輪を何でつけてない??」


 ザゴバがそう訝しんだ瞬間、グレンが剣を抜く。それを合図にリュカが鎖を外した。

 同時にゴォンと大きな音がして、地下への通路を塞ぐように壁ができた。


「 これで退路は絶ちました。あなた達を人身売買の現行犯で捕縛します。」


 おお、フレデリック、そんな姿でもスタイリッシュね。


「 な!? なんでここで魔法が使える!?…… 何もんだぁ?お前らは ……。」


 ザゴバもその手下達も剣を抜く。

 グレンはカッと目を見開いた。


「 私か?よくぞ聞いてくれた、私の名はアルマジロだ!!」


 はー?? 何言ってんのグレン?

 するとフレデリックも聞かれてないのに名を名乗る。彼はちょっと恥ずかしそうだ。


「 わ、私の名もアルマジロです。」


 ザゴバは最後に私を見る。


「 ザイール、お前嵌めやがったな!!」


 もぉー、こうなったら私もみんなに合わせるしかないじゃない。


「 ごめんなさいね〜、ザイールじゃないの。私の名前もア・ル・マ・ジ・ロ!!」


 あっ、ちょっと楽しい。ザゴバの額や首筋にピキピキと青筋が走った。


 あらぁ、おじ様血圧大丈夫ー??


「 ふ、ふざけるなぁぁぁッ !!!!」


 ザゴバが剣を振り上げた。

いつも読んでいただきありがとうございます!


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