49【魔法封じの村】
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私は甲冑の男を見上げた。
「 ねぇ、私ってここから逃げられるのかしら?」
「 ガハハッ!いーや、お前は絶対に逃げられねぇ!」
気持ちの悪いニタニタ顔だ。せめてヒゲと髪くらい整えたらいいのに。
「 ふぅん、そうなんだ。じゃあどうせ逃げられないならこの手を離してよ? 大丈夫、暴れたりしないから。」
私がそう微笑んでも、甲冑の男は私の両肩をガッチリつかんで離さない。まぁそうね、そう簡単に信用はしないか。
「 ねぇここのリーダーは誰なの? この人にこの手を離せって言ってよ。」
私がテーブルの男たちに向かってそう言うと、中央にいる男が、飲みかけの酒を一気に飲み干した。
「 おもしれぇ、泣きも喚きもしねえとわな。おいッ!いいぜ!離してやれ !!」
私は自由の身になると、テーブルに近づき空いている椅子に座った。テーブル上にある酒瓶を持ち上げ、中央の男に向かって眉を上げる。
「 気が利くぜ!分かってるじゃねぇか。」
私は男たちに酒を注ぎ終えると、新しい酒瓶のコルクを外す。
「 …… それで? 私はどこに売られるのかしら?」
「 へへ、自分の立場が分かってるようだな!まぁ大丈夫だ!あのかたはお前を宝物のように扱ってくれるさ。」
「 本当かしら?」
私は首をかしげ、隣にいる男の腕を私の肩にまわす。男にもたれかかりながらなみなみと酒を注ぐ。
「 私、優しい男性じゃないと嫌よ?」
隣の男はヘラヘラしながら酒を煽る。よほど女性慣れしていないのか嬉しそうだ。
「 へへ …… 大丈夫でさ!ザゴバ様は女に甘めぇからなぁ。いてぇ事はしねぇよ。」
すると中央の男が大きな声を上げた。
「 オイッ!余計なこと言うんじゃねぇぞ!!」
「 あら、お相手の殿方の名前も知らないなんて、かえって失礼よ? で、どうなの?そのザゴバ様はステキな人かしら?」
人買いにステキも何もあったもんじゃない。きっとロクデナシの馬鹿野郎よね?
「 ウルセェッ!!…… まぁいい、お前も飲め!!」
「 私も? でも私は酔っぱらうと暴れちゃうかも!…… っていうか、デロンデロンでザゴバ様にお会いして怒られない??」
「 大丈夫さぁ!取引は月の中日と決まってるからな、まだ3日もある。デロンデロンで暴れてみろよ!」
そう言った男は、また中央にいる男に小突かれている。
…… なるほどね。
今の会話からある程度のことは分かった。てことは、サラ達はまだこの村のどこかにいる可能性が高い。私は自分の手首の腕輪を眺めた。これはこの村に入った時に付けられたのだ。
「 ねー、これは何なの?? アクセサリーにしてはあんまりセンスが良いとは思えないけど?」
中央にいる男は黙って私を眺めていたが、私が酒をおいしそうに飲むのを見ると、気分を良くしたのか口を開いた。
「 いい飲みっぷりだな!その酒は度数が高えからな、すぐ足にきちまうぜ? …… その腕輪は魔法を使えなくする道具だ。まぁそれを付けなくても、この村では魔法なんざ使えんがな!」
「 あら!どうして?」
「 村全体に魔法を使えなくする魔法がかけられてるんさ!」
「 そんなの事出来るの? 魔法って色んなことできるのね〜。」
私は感心したそぶりを見せた。というかこれは演技ではなく本音である。
「 俺たちだって魔法の理屈なんて分かっちゃいねぇよ!すげえのはザゴバ様だ!」
…… ザゴバ様ね。
「 そこの壁にいる人は両腕に付いてるわね〜!彼はどうして吊るされてるの??」
私は、天井から下がる鎖につながれた騎士を指差した。と言っても、逆さになっているわけではない。両腕を頭より高く上げ吊るされ、手だけじゃなく足も枷で拘束されている。
男たちの一人は、あぁ、と忌々しそうに吊るされた騎士を睨んだ。
「 そいつはなぁ、腕輪をはめたのに魔法を使いやがった。なかなか強え奴のようだ。まぁそれでも、三つ付けたらさすがに大人しくなっちまったがな!おいッ!静かにしやがれってんだ!!」
吊るされた騎士は自分の話をされてガチャガチャと暴れ出す。両方の腕輪だけでなく首輪まで付いている、これでは抵抗出来ないだろう。
加えて耳は聞こえるようだが、顔は革製のマスクで覆われ、かなりがんじがらめに拘束されている。
リュカ、もう少しだから我慢して。
「 私はもともと魔法が使えないから、こんなの付けても意味ないけど、村全体が魔法使えなかったら、あなた達まで不便でしょう?」
「 おっ!ねえちゃんも魔法ダメなのかい?」
……… も?
「 そっ!全然素質がないんだって。失礼しちゃうわよねぇ?」
そう言って、空になったカップにお酒を注ぎ、隣の男に乾杯する。
「 でも別にいいの。魔法なんか使えなくても、私はこうして清く正しく生きてるもの!!」
そう笑顔で言うと、男たちはゲラゲラと笑い、それぞれに野次を飛ばした。
「 おい聞いたか!? 清く正しくだとよ!」
「 俺たちだってそうだ!」
「 ちげえねぇ!!」
「 お前のどこが清いんだ!? 汚え顔してるくせに!!」
「 うるせぇ!俺たちだって誰一人魔法なんか使えねぇ!」
「 そうだそうだ!魔法使いなんかクソ食らえだ!」
「 スト───ップ ッ!!!」
私は立ち上がって、皆を制した。
「 今なんて言った?そこの …… 違うあなたじゃなくて!…… そっちの …… そうそう!あなたよ!」
私は目を輝かせて尋ねる。端にいる頭の悪そうな男が自分を指差して「俺か?」とキョロキョロする。
「 えぇ、あなたよ、あなた。なに? 俺たちは?全員?魔法を───?? 」
男は言葉をつないでくれた。
「 使えない?」
私は笑顔をほころばせ「正解!」と男の肩を揉んだ。なんだかよく分からず男も「 へへ 」と笑っている。
「 なぁんだ!それじゃあ私とおんなじじゃん!もう、私はそれが聞きたかったのよねー!!」
上機嫌で男達の肩を叩いてクルクルと回る私を、彼らはポカンと眺めてる。
「 ウフフフフ〜!先に謝っとくわね!私 …… ベロンベロンに酔っ払っちゃった!!」
さぁ、攻撃開始。
私は男に渾身の一撃を与えた。




