隠された約束は守る予定
時計の針は無情にも進んでいた。
その間喚いていたのは私だけ。
彼は『ごめん』以外の言葉を発しなかった。
もちろん、理由なんてわからないままだ。
「いい加減に……っ」
「春日井、そこら辺にしとけ」
今まで何処に行っていたのか、姿が見えなかった担任が私の言葉を遮った。
呆れたように私と彼を交互に見た後、大きなため息をついてベッドの片隅に腰を下ろした。
「俺が話す。それでいいか、香椎」
「……話さなくていい」
「ふぅん。じゃ、春日井は諦めるってことか」
「それは……っ」
今の今まで忘れていたけれど、彼らの関係って何だろうか。
どう見ても、先生と生徒だけの関係には見えない。
もっと深く繋がっているような気がする。
「春日井を手放したくないんだったら、覚悟を決めるしかないだろ?」
名字も違うし、顔立ちも似ていない。
だから、家族ということはないと思う。
彼がどんな家族構成を持っているのか知らないけれど。
少なくとも血の繋がった兄弟とか親子ではない、はず。
「……陽依が決めて」
「え?」
「こいつの話を聞くか、聞かないか」
その代わり約束してほしい。
そう彼は言った。
でも思い直したのか、中身を言わないまますぐに引き下げられた。
何を約束して欲しかったのか、知らない。
でも、あのことであってほしいと思った。