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触れる手が理解できない
今度という今度は、許せない。
さっきは私が何かしたのかなと思っていたけれど。
それを棚に上げてでも、今の状況は理解し難い。
したくないのが本音だ。
「あの」
「ひよちゃん……」
担任に抱えられた私は、再び彼の部屋に舞い戻っていた。
そして投げ込まれたのは、またもや彼の腕の中。
地面が不安定で柔らかいから、たぶんベッドの上だろう。
「俺を見捨てないで、陽依」
一瞬言葉が理解できなかった。
今何を言われたのだろう。
見捨てないでって、私を突き放したのは彼なのに。
「陽依」
「……離してくれませんか」
髪を撫でていた手が止まる。
もう片方の手の拘束も緩まったことで、私は易々とそこから抜け出せた。
私がここにいる理由なんてない。
拒絶したのは彼の方なのだから。
そして、いなければならない理由も、ない。
「なんで、こんなこと。拒絶したのは瑞季先輩の方なのに」
「……そうだね」
「訳がわかりません。どうして」
「もう俺はダメ……だよね」
諦めたような表情に胸が痛くなる。
泣きそうな彼に、こっちの方が泣きたいと言いたくなった。