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「お久しぶりです、ネリル・ワーグナー」
見知った人の面影があるなとは思っていたが、まさかレイモント本人だとは思わなかった。しかもこんな所で再会を果たすだなんて。きっと神様は意地悪に違いない。
可愛らしい見た目はどこへやら。すっかり凛々しい青年に成長したものの、気にしていたちょっと風変わりなアクセントは今もほんの少しだけ残っている。
その記憶に残る声が、私の心を萎縮させた。幼い頃とは違い、陰口をたたかれても黙ってやり過ごすことが出来るようになったのに。
冷たい個室に彼とふたりきり。少しだけ開いたドアの向こうに待機している人がいるはずだけど、気配を感じとるまで出来なかった。
彼は躊躇することなく真向かいに座る。私の返答なんて期待していなかったみたいだ。でもそうじゃない。彼は義理の挨拶をしたまでなのだ。その証拠に私なんか目もくれず、持参した書類に目を通してる。
沈黙の中、紙をめくる音だけが響く。
気まずい。
膝の上に組んだ手に力がこもる。
居たたまれず、今になって後悔する。こちらから声を掛けてみたら、何かが変わるかもしれない。
そっと覗きこむが、彼は真剣そのもので、話しかけてもいい雰囲気なんて一ミリもない。
それもそうよね、当たり前よ。
この状況下でこの態度は当たり前だ。第一彼は私のことなんて。
彼は書類を机に置くと、深く被っていた帽子に手を掛けた。こぼれ落ちる銀髪。慣れた仕草で前髪をかきあげ、再び帽子の中に閉じ込める。そして、私の目をじっと見つめた。
胸がズキズキと痛んだ。
彼は私の胸の痛みなど知るよしもなく、薄くも厚くもない唇をゆっくり動かす。
「これより、取り調べを行います」
「だから違うって!」
反射的に机を叩いた私は、勢いをそのままに立ち上がっていた。




