第3話 空気値ゼロ
翌日。
学校に来ると、空気が妙だった。
ざわついている。
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「なあ、聞いた?」
「マジで?」
「あり得るんだ……」
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俺が席につくと、クラスメイトが小声で言った。
「昨日の佐藤、空気値ゼロになったらしい」
「……ゼロ?」
空気値は最低でも普通は10前後。
ゼロなんて聞いたことがない。
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その瞬間。
教室前方のモニターが起動した。
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【重要通知】
空気適応指数ゼロを確認。
対象者は社会的不安定因子として保護隔離されました。
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クラスが静まり返る。
だが、その感情ログはバラバラだった。
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【怖い】
【当然】
【関わりたくない】
【次は自分かもしれない】
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俺は違和感を覚えた。
「保護隔離?」
まるで犯罪者扱いじゃないか。
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教師が入ってくる。
いつもの笑顔。
「皆さん、不安になる必要はありません」
だがログは違う。
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【面倒になる前に忘れてくれ】
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教師は続けた。
「空気値は、社会を円滑に保つために必要な指標です」
「……本当に?」
気づけば俺は口を開いていた。
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「空気に合わせられない人間を消してるだけじゃないんですか?」
教室の空気が凍る。
モニターが赤く点滅する。
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【警告】
【空気不安定】
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その時だった。
突然、俺の端末画面に見たことのない表示が現れる。
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【観察者適性確認】
【空気システム外個体を検知】
【同期を開始しますか?】
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次の瞬間。
教室中のモニターが一斉にブラックアウトした。
悲鳴が上がる。
ノイズ音が響く。
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そして、暗くなった画面に。
真っ白な文字だけが浮かび上がった。
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【観察者を確認】
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教室の空気が、初めて完全に止まった。
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その中で。
白瀬ユイだけが静かにこちらを見ていた。
まるで最初から全部知っていたみたいに。




