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幕間:高校生は語る

美鈴のお話です


別になんて事ない日だった。いつも通り学校に行って、友達と進路とか恋の話をして、気になってる先輩に話しかけてみたりして、部活でちょっと喧嘩したり…本当にウチのいつもの日常だった。家に帰ってきてお風呂で『明日謝ろう』って決めて、ママとパパと弟と夕飯を食べて宿題をして寝ようとしたら。


最初の爆音で目が覚めて、窓から外を覗いたら辺りが炎で包まれていて、下を見るとお隣のおばちゃんがよく分からない黒い獣に貪られていた。その時の事は多分忘れられないんだと思う…おばちゃんが事切れる瞬間に目が合ったの。目から生気が無くなっていくのがまだ焼き付いてる。


弟とパパを起こして家から出た瞬間、目と鼻の先で爆発が起こり道と一緒にウチ達も瓦礫で埋められ身動きが取れなくなってしまい、しっかり手を握っていた弟の手を離してしまった。幸い微かに声が聴こえるだけの隙間がありずっと声をかけ続けれた。


何時間かした後、後ろから瓦礫を退かすような音が聞こえた。「あぁ、助かったんだ」とパパと涙ながらに抱き合ったその瞬間、それは淡い夢だと思い知らされた。パパの後ろには真っ黒で口元が赤く染まっていた狼がいた。パパの肩を叩くその前に狼が飛びかかってきて、ウチは後頭部を瓦礫に叩きつけられ、意識を失った。


そこから何時間、何日意識を失ってたのか分からなかったけど眩しい光が見えて起きたのは覚えてる。それと同時に襲ってきたのは紛れもなく『現実』だった。


赤かった。自分も、周りも、びっちゃりと赤い何かでビショビショだった。覆いかぶさっていたパパは何故か軽く、後ろに回していたはずのウチの手は動いているのに、パパの背中の感触だけ、穴に手を入れてるみたいに感じない。助けてくれたであろう自衛隊の人は、青ざめた顔で吐くのを我慢しているようだった。


背中が無かった。ウチをあの狼がから庇った時にズタズタに噛みちぎられて、引っ掻かれて、ぽっかりと穴が空いていた。


発狂しそうな自分と受け入れられない自分が同時に襲って来て、それを忘れ去るように、抑え込むようにウチの本能は現実を無視して弟の安否へ逃げた。


痛みも全部忘れてパパだったものを退かし、声が聞こえていた方へ走ろうとした瞬間、ウチの意識は完全にシャットダウンした。



次に目が覚めたのはベッドの上だった。身体は動かず、両足と右腕にはギプスがつけられていた。どうやら両足とも骨が折れていたらしい。しばらく放心してたけど、徐々に周りが見えてきてまた発狂しそうになる。けど、本能か許さなかった。


とにかく現実から目を背けるように、来る日も来る日も弟とママの心配だけを考えた。でも、それすらも許されなかった。医者から聞かされたのはただひたすらに現実だった。


ママは行方不明、捜索中だが生存は絶望的。弟は生きてはいるが意識が一向に戻らなく、魔力過剰中毒症と後に言われる謎の症状のせいでもう目覚める確率は0に等しい、と言われた。


そこで、ウチの理性は弾け飛んだ。


あとから聞いた話だと、暴れるウチを止めるのに随分手間取ったらしい。曰く、その時点でウチはアルカナに覚醒していたらしく並の麻酔も効かなかったようで、最終的に大型の獣などに使う麻酔を打ち込んで止めた、と聞いた。



そこから魂が抜けたようにずっと窓から外を見続けた。何日も何日も、いっその事もう死んでやろうかなんて考えたりもした。パパの事も思い出したけどもう涙すら出なかった。


そしてあっという間に退院した。帰る場所もないのに、生きる理由も無いに等しいウチはただ途方に暮れるしかなった。でも、ふと目に入った、大鷲山医療会が魔力過剰中毒症の特効薬を開発したのとギルドが討伐隊を募り始めたニュースが目に入った。


弟が助かるなら、まだ生きていたいと思えた。いや、生きなきゃいけないと思った。そこから、残っていた貯金とママとパパの保険金で、弟の延命治療ともっと設備のいい病院へ移すのに大半使い果たし、残った僅かなお金で斧を買った。3ヶ月くらいは休む事も忘れて遮二無二に、ただひたすらに異獣を狩って狩って狩り続けた。自分を勘定に入れず怪我なんて無視してとにかく突き進んだ。


そして、国営図書館で異獣の討伐に来た時にウチは彼方と出会った。最初はなんだか頼りなさそうな印象で、声をかけたのもいざとなったら囮にして手柄を独り占め出来るかも、って最悪な理由だった。そこまで追い詰められててこんな酷い考えを持ってしまうほどウチは極限まで追い詰められていた。


彼方はそんなウチを助けて、逃がしてくれた。あんな恐ろしい化け物に一人で立ち向かっていった。逃げてる最中、涙が止まらなかった。あんな邪な事を考えてしまった自分の情けなさと力になれない自分の非力さがどうしようもなく惨めで悔しくて申し訳なくて、ひたすら涙が出続けた。



彼方が無事って分かった後、会いに行こうか正直迷っていた。でもどうしようもなく心配でそれ以上に感謝を伝えたかった。自己嫌悪に押し潰されそうになりながら会いに行ったら、彼方はむしろこちらに謝ってきた。そこまで背負わなくていいのに、ウチなんかにそんな言葉かけなくていいのに。


多分そこでウチは彼方のことが好きで堪らなくなったんだと思う。


その後彼方から『塔』の攻略に誘われ、その報酬のお金と16階層での報奨金とユリウス代表のクランでの契約金でようやく特効薬を買う事ができ、弟は1年ぶりに目を覚ました。今はギルド管轄の病院でリハビリに精を出している。



ウチは彼方に助けられた。だから、ウチも助けたい。大好きな人を守りたい。もしかしたらウチに振り向いてくれる事は無いのかもしれないけど、それでもウチは好きな人の為に、一緒に並んで歩く為に、背中を任せて貰えるように、今日も恋をするのだ。



Name:羽曳野美鈴

Lv:52

出身:異邦の旅人

称号:最初の覚醒者 (取得経験値を1.5倍、リキャストタイムを10%減らす)

job:重戦士

subjob:占い師

HP:1200

MP:800

STR:1400

STM:1100

TEC:850

AGI:1050

VIT:1200

LUC:900



才能(アビリティ)


魔力操作(マナ・コントロール)Lv.5

↳変換強化X…消費MP50に対して全ステータスを100上昇させる

↳魔力自動回復Ⅲ…MPを30秒ごとに50回復する

↳消費量効率化Ⅱ

↳身体強化EX

↳極限全開強化…HPが0になった時、1度だけ全ステータスを3倍にして復活する。

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