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第10話 夢、果てしなく

明星の山。

“明星の山を行き来する山菜荷車の護衛”。

修行忍者三人組は、いつも指名してくれる山菜名人に感謝していた。

「甲賀の忍びが、大ヘビ退治をしたんだってな。暁月の都では、大ヘビが向かってくるって、大騒ぎだったんだぞ」

道中、山菜名人が言った。

伊香忍軍が、生み出してしまった大ヘビ。

そのウワサは、暁月の都で広まっていたのである。

明星の山から向かってくる恐怖に、都人は、おびえていた。

それを、甲賀の忍びが倒した。

暁月の都を守ったのである。

「古問朗…ですよね」

比曽加は、笑いをこらえる。

「古問朗…だよね」

手巻も、笑っている。

「お前ら、言うなよ。オレは、調子にのりたくないんだ」

「でも、褒められまくってたじゃないですか」

「うんうん。褒められすぎてた」

三人組は、元気だ。

大ヘビを一撃で斬った古問朗。

伊香忍軍の忍びたち。甲賀忍者たちから、とても褒められた。

すごい。よくやった。

褒められまくった。

「オレの力だけじゃないからな」

草薙のツルギの力だ。

帝の暁乃宮一族に伝わる、三種の神器の一つ。

そのツルギは、今も、古問朗の腰にぶら下がっている。


第10話 夢、果てしなく


甲賀の里。古元家。

「古問朗。出かけてきますね…」

加茂姉さんが、出かける。

暁月の都の金持ちからの宝石護衛の任務のためだ。

伊香忍軍は、こりずに宝石をねらい続けている。

あやつる動物は、ネズミに戻したらしい。

また、大騒ぎを起こしたりしないのだろうか。

信用できない。

「いってらっしゃい。姉さん」

「いってきます…」

古問朗は、姉を見送った。


甲賀の里。忍び学習堂。

「今日は、手裏剣の授業だ」

鋼師が、教壇に立つ。

手裏剣。

修行忍者三人組が、一番苦手な武器である。

「それより…」

古問朗は、思い切って聞く。

「二刀流のやり方を教わりたい」

「二刀流か。興味があるのか」

「愛用のシノビカタナと草薙のツルギの二刀流を学びたいんだ」

草薙のツルギとシノビカタナを両手に持つ。

「良いですね」

比曽加は、クサリカマを持つ。

「ワタシも、愛用のクサリカマの訓練の方がいいですよ」

「アタシは、愛用のクナイを極めるよ」

クナイを構える手巻。

手裏剣の授業が嫌なのもあるが、自分のやりたい授業を受けたい。

「我がままな三人組だな」

教師の鋼師は、まず構え方を教えてくれる。


甲賀の里。頭領屋敷。

「大事な話がありますねえ」

甲賀の頭領、五右衛門さまに呼ばれた修行忍者三人組は、横一列に並んだ。

「帝から、古問朗に向けて密書が届きましたねえ」

「み、帝からか…?」

思わず身を引く、古問朗。

とにかく、内容を教えるから、聞けといわれる。


秘密愛人となった若者へ。

帝、暁乃宮桃太御也である。

この度は、大ヘビ退治。見事である。

勇気ある行動を称賛する。

草薙のツルギを受け取ったそうだが、自由に使っていい。

それは、花鳥后御也の所有物である。

年若い若者には、理解できないかもしれないが、花鳥后御也と別れるつもりはない。

少年よ。

花鳥后御也の、愛を許してほしい。

いずれ、知ってほしい。

愛するからこそ、愛人という形を許すことを。

余は、花鳥后御也を許す。


「…」

古問朗は、帝の直筆の書を無言で見ていた。

「…どういうことだ」

わからなかった。

「帝は、奥方を愛している。その上で、秘密愛人を認めるということですねえ」

「何だ。それ」

わからない。

帝は、花鳥后御也が好き。

他に好きな男ができたことを許す。

そんな感じだ。

古問朗には、わからない。

「秘密愛人は、続くんですか」

「果物に困らないんだね」

比曽加と手巻は、何となく把握した。

「うーむ。わからぬ」

わからない。

だが、お気に入りとなった草薙のツルギを持っていていいということは、朗報だ。


頭領屋敷を出ると、花鳥后御也がいた。

「聞いていたわ」

不機嫌な様子。

帝からの密書のことで、イラ立つ。

動きもしないで、書など送って、許すという。

勝手な帝。

でも。

「わたくしを気に入るのは、帝だけなのよね」

涙が流れた。

愛がほしかった。

この少年には、まだ愛は、はやい。

この無邪気な少年には。

「何故、泣く。奥方…?」

古問朗は、困惑している。

少年が、困っている。

この少年をこれ以上、困らせたくない。


「わたくし、暁月城に帰るわ」


決心した。

さようなら。

燃え上がるような恋心。

だけど。

わかってなかった。

この少年は、本当に子供すぎることに。


「困る。これからも、果物をたくさんくれ」


食べ物。

この少年を誘う。甘い罠。

「これからも、リンゴを食べたい」

「ワタシにもわけてくださいよ」

「果物、大好き」

少年は、仲間と一緒に盛り上がっている。


身体が崩れ落ちる。

「子供なのね。子供なのよね」

花鳥后御也は、頭をかかえ込む。

子供なうえに無邪気。

わかってなかった。

秘密愛人よ。

もう少し、男としての考え方はないの。

こんな子供心の少年を愛している。

男として。


「泣くな。奥方。美味しい果物を食べて元気を出そう」


古問朗は、花鳥后御也に手を伸ばす。

ほしかった手は。

こんなふうに、無邪気で、けがれない気持ち。

そうなのか。

燃え上がるような赤毛の少年が笑っている。

「そうね」

この赤毛に心惹かれてきた。

いつか、本気で抱きしめられたい。


暁の桃源郷。

暁月の都と甲賀の里。

甲賀忍者と宝石をねらう伊香忍軍の争い。

修行忍者三人組は、まだまだ未熟。

毎日、楽しく過ごしたい若い男の子。

恋したのは、帝の奥方。

秘密愛人。

女の夢は、果てしない。

心奪う少年は、かなりの実力者だ。

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