日本→転生→異世界→転移→当然日本
帝都の宿屋兼酒場。
今日は宴会が開かれているようだ。
「それでは異世界に行かれたというのは本当なのでございますか?」
メイドが尋ねる。バルスに仕えるメルであった。
「まぁほんとは勇者様とやらを召喚して魔王を倒して欲しかったらしいんだけどね。それ以上のものがあったよ」
ダークエルフは包み紙をテーブルの上に置いた。
「開けてみな」
革鎧を着た見習い冒険者、エクセラが包みを開く。中には金貨が十数枚ほど。
「うあっ!これはすげえ!!!」
「異世界への穴の向こう側は黄金郷だったよ。金銀財宝ザックザクってね」
「すいません。ちょっとその話聞かせてもらえませんか?」
隣に座っていた商人風の男が声をかけてきた。
「うあー。随分と珍しい絵画ですね」
商人は山の絵が描かれた紙を取った。金貨の包み紙である。
「これ。異世界の絵ですか?面白いなぁ。金貨五。いや十枚で譲ってもらえます?」
「ああ。いいよ」
ダークエルフはあっさり承諾した。
「なんだ富士山じゃん」
マイルズはトヨヒサルスが持ち帰った山の絵を見るなりそう言った。
「フッジサーン?」
「僕これ登ったことあるから」
「本当でございますかっ!!」
トヨヒサルスはビックリたまげる。
「なんだ。異世界で大儲けって日本と戦争をするつもりなのか」
「どうします?異世界の軍勢と共同して挟み撃ちを・・・」
「ああ。逆逆。人間の国と組んで日本攻撃しよう」
「へっ?いやしかし」
「大丈夫。日本は憲法九条があるからいくら攻撃してもこっちに反撃してこないさ!!」
帝都の王城内。会議室。
開いた異世界の穴に対する対応が話し合われていた。
「えっ?異世界に攻め入る?正気ですか?」
「魔王マイルズとの戦争も終わってないのに?」
「むしろ魔王軍とは戦わない方がいいらしい」
「そうだそうだ。下手に深く敵領に突っ込むとこの前のように大損害を被るだけだ」
「むしろ来た魔物を適当にあしらっておく方がいい」
「それは冒険者ギルドと魔術協会の都合だろ?」
「それに今回できた異世界の穴は巨大な金山という噂だ」
「穴の向こうは武器を持たない人間の国で、金貨を持った住人がそこらじゅう歩き回っているそうだ」
「じゃあ魔王軍と戦うより大儲けができるって事か?」
「そうだな私もその意見に同意する」
「そうか。あんたもそう思うか」
違和感が、あった。
十人の専門家会議の席に、十一人目が座っている。
白骨の魔導師。
「魔王マイルズだああああああああああああーーーーっ!!!!!」
「ど、どうしてここにいいいいいいいいいいいいい????!!!」
「警備の者はなにをやっているのだ???!!!」
「マイルズ様。お茶は?」
その警備の者は、黒い鎧を着た女騎士はマイルズに紅茶を持ってきた。
「僕アンデッドだから。呑んだら肋骨の辺りから漏れちゃうよ」
「き、貴様!マイルズの手先だったのか??!!」
「我々オルタナテゥヴナイツは元々魔王マイルズ様の忠臣。適当に町中で暴れる魔法学科の生徒を成敗しただけでここの警備をしてくれと勝手にお前達が頼んで来たんだろうが」
「ま、好都合でしたけど」
「でさぁ。異世界に攻め入るなら魔王軍君達攻撃しないって停戦条約結んでもいいよ」
「な、なにを世迷言を・・・・」
「君達が造った穴の向こうにあるのは日本という国だ」
「な、ニホン?」
「兵隊の数は十四万ってところだね。まぁ君達は十万人ほど集めてくれればいいよ。私が追加で二十。オークとゴブリンだがかき集めてくるからさ。それにこの戦争は絶対に負けないんだ」
「絶対に負けないだと?貴様そんな保証がどこにあるというのだっ?!!」
「憲法九条があるからだ」
キリッ、として断言する魔王マイルズ。
「ケ、ケンポウキュージョー?なんだそれは?」
「別名九条バリアーとも言われている。それがあるお蔭で、我々がどれだけ攻撃しようとも、日本人は我々に対して一切の武力行使及び反撃ができない。断じて話し合う事しかできないのだ」
「憲法九条ってSUGEEEEEEEEEEEEE!!!!!!」
「さらに此度の日本侵略作戦を成功させる秘策を伝授しよう。諸君ら人間は神聖魔術が使えるな?そして私は暗黒魔術が使える。この二つを組合わせることで勝利は揺るぎないものとなる」
「具体的にはどうするんだ?」
「戦争になればどうあがいても死者が出る。敵味方問わず、な。そこでお前達の神聖魔法の出番だ。味方の兵士をすべて生き返らせる。そして私の暗黒魔法で敵の兵士をゾンビにする。敵の兵士は減り、我が軍の兵士はどんどん増えていく。どうだ。完璧な戦略であろう?」
「凄い!流石は魔王マイルズだ!!!」
「決まったようだな」
こうして、人類諸国同盟と魔王軍による日本侵攻作戦が決定された。




