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異世界殺菌をする町医者  作者: 虹色水晶
異世界から日本に戻れば斬新な小説。なぜ誰も書かないのだろう?
22/31

魔性の者、一枚岩でなく

 その日。

 トヨヒサルスは自分達と交易のある種族達を呼んである物を見せた。

 茶色い円形の金属。白っぽい円形の金属。収穫前の麦の色をした円形の金属。


「それはなんだ。ミスタートヨヒサルス」


 ブレインイーターが尋ねた。


「これはお金だ」


 トヨヒサルスは金属の正体を教える。


「お金?」


「お金だと?」


「OH・KA・NE?」


「ゴブリン族。ここでは人間の言葉で話せ」


「おいおい。人間の街に近い建物が増えてきからといってそこまでこだわる必要はないだろう?」


 オークはゴブリン族を弁護する。


「まぁ連中の活動には色々と学ぶべきことが多くてな。その一つがこのお金だ。現在この街は周辺各地の種族、魚人や獣人。ダークエルフも含めて雑多な種族の交易市場となっている。だが現在取引は物々交換が主流だ。そこで」


 改めて三枚の貨幣を見せた。


「このお金の出番となる。茶色いのは銅貨。これが一番価値がない。だが普段の買い物。食事をする時に支払いをするのはこいつを使うと便利なんだ。次にこの白いの。これが銀貨だ。少しだけ高価な物を買うときに使う。最後に金貨。べらぼうに高い者を買うときに使う。これらを組み合わせたり、枚数調整すると買い物がずっと便利になる」


「なるほど。つまりエルフが金貨。人間が銀貨。ゴブリンが銅貨という事だな」


 ブレインイーター族の理解は流石にはやかった。


「キキキッギイギギギーーー!!!!」


「俺達はそんなに価値がないのかっ!と、抗議しているぞ?」


 と、オークが通訳。


「いやだってお前らの脳味噌不味いし」


 ブレインイーター族の価値基準は主食である脳味噌判断であった。


「今度この街に鋳造所を造ろうと思うんだ」


 トヨヒサルスは説明を続ける。もちろん彼自身のアイデアではなく、彼が仕える魔王マイルズの発案である。


「鋳造所?」


「お金を作る場所だ。君たちが貨幣に使う金属を持ってきたら加工賃一割で貨幣を鋳造しよう。デザインは」


 トントン。と王冠を被った髭の人間の顔が刻まれたコインを叩く。


「この人間の国のコインと一緒にする」


「なんで人間の国と同じ金なんだ?俺達の国の金なんだから俺達のオリジナルでいいだろ?」


「いや。我々の土地で採れた余った品物を人間の国に売りつけようと思っているんだ。せっかくだからお金も統一した方が商売に便利じゃないかと思ってね」


 各種族の了承は意外なほど素直に取れた。

 しかし。

 ブレインイーター族の居住区。

 金属製の家。


「今度コイン。というものを使って食料である脳。もとい人間やエルフの奴隷を扱うことになった」


「コイン?」


「これだ」


 トヨヒサルスとの交渉に当たっていたブレインイーター族がコインを見せた。


「円形に加工した金の塊か」


「そこで私に素晴らしいアイデアがある」


「なんだ」


「この金の塊に銀。及び銅を混ぜる。表面に金の光沢が残るレベルで。そうすれば大量の金のコインが手に入るので、他種族との取引で有利に立てる」


「素晴らしいアイデアだな。すぐに実行しよう」

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