出来上がった村
それから二週間後。
一匹のオークが上級高位魔族の村落を訪れた。
「これは凄いな・・・まるで人間の街のようだ!」
木造建築の建物が十件ばかり建った村を訪れたオークは正直驚きを隠せなかった。
つい一ヶ月ほど前は自分達の村と変わらない、木や大きめの動物の骨を柱にした骨組みの上に乾いた植物を載せただけの簡素な家しかなかったはずである。
「いやこれは私達のアイデアじゃないんだ。造り方はツキシ・・・まぁ当人はマイルズと名乗っているが。
私が異世界から召喚したスケルトンが教えてくれたんだ」
オークと応対したトヨヒサルスは彼にそのように答えた。
「スケルトンが?」
「本当は一撃で巨大な山を吹き飛ばす凄い力を持った魔王を呼び出そうと思ったんだがどうやら失敗したようでね。まぁそれなりに役立ってくれて満足しているよ。折角だから飯でも食っていくか。肉の両面焼きよりも素晴らしい調理法でおもてなしをするよ」
「何だってっ!肉の両面焼きより素晴らしい調理法?そんなものが存在するのか?」
「ああ。こいつを見てくれ。どう思う?」
そこには並行に並べられた正方形の石が地面に突き立てられていた。
その間には小枝が積み重ねられている。
「まずこいつを使う」
トヨヒサルスは黒く輝く小石を二つ。取り出した。
「この石を枯れ葉みたいな燃えやすい物のそばでこすってやるんだ」
石をこすると、小さな火花が零れた。そして、枯れ葉にひがつき、さらに小枝に炎が燃え移る。
「今、あんた魔法を使ったのかい?」
オークは尋ねた。
「いや違う」
「じゃあこの小石が魔法の石なのか?」
「それも違う。こいつは火打石と言って、魔力のない者でも簡単に火を起こすことができる道具なんだ」
「なんだって!俺みたいな魔法が全然使えない奴でも火がつけられるようになるのかっ!そいつは凄いっ!!」
オークは驚きの声をあげる。
そんなオークにトヨヒサルスは黒い石を渡した。
「あんたにやるよ」
「いいのかい?」
「まぁこれくらいはな。大事に使ってくれよ。さて肝心の料理だが」
トヨヒサルスは木の棒に毛を毟った鳥を突き刺し、それを平行に並んだ石の上に載せた。
「ちょっとこの木の棒を石の上に乗っけたまま、左右に動かしてみてくれ」
オークは言われたとおりに動かしてみた。
「こいつは凄い!いちいち肉をひっくり返して両面焼きにしなくても、見事な丸焼きの肉が出来上がるぞっ!!」
オークは上手に焼けた肉を頬張った。
「ところであんたに頼みがあるんだが」
トヨヒサルスは木の棒の先に、四角い金属がついた奇妙な道具をオークに見せた。
「なんだいそれは?」
「これは斧だ」
「オーノー?エルフ語で確か目だったか?」
「違う。この道具はな」
トヨヒサルスはすぐそばにあった手ごろな大きさな薪に斧を振り下ろした。薪は当然ながら真っ二つになる。
「こいつは凄い!切断の魔法も使わずに木がこんなに綺麗に切れるなんて!!」
「ところで貴方達。オーク族は木を切る時どうしてるんだ?」
「もちろん素手でへし折ってるぞ?」
腕を折り曲げ逞しい筋肉を見せつけながらオークは言った。
「まぁそうだろうな。俺達上位高等魔族は今まで魔力づくで、貴方達は力づくで木を切っていた」
「そうだ。ゴブリンの木こりに至っては歯で噛み切っていたらしいぞ」
「だがこれからはこの斧を使えばずっと簡単に木が切れる」
言ってオークに斧を渡した。
「それもくれるのか?」
「ああ。だが切った木の半分を私達に分けてくれ。それと」
今度は木の棒の先に真っ直ぐな金属がついた道具を取り出した。
「これはツルハシだ」
「それも木を切る道具か?」
「いや違う」
今度はツルハシで近くにあった石を叩いた。石は簡単に砕ける。
「こいつは石や岩を砕くための道具だ。これがあれば鉱石の採掘ができる」
「鉱石の採掘?」
「つまり石を沢山持ってきて、人間の砦の様な壁を造ったり、あるいは鉄鉱石というのを加工して人間共が使うような武器や防具を造る事もできる」
「なにっ!??人間共が使う武器や防具を俺達が造る事もできるのかっ!!?」
トヨヒサルスは銅、スズ、鉄の鉱石見せた。
「もしこういった鉱石をもってきてくれたら、それに見合った武器や防具。あるいは道具を造ってやれる」
「条件は半分でいいんだよな?」
オークは確認する。
「もちろんだ。ゴブリンの連中にも協力してやらないとな」
「ゴブリン?あいつらは俺達より力も弱いし魔力や頭ならお前ら上位高等魔族(カエル(笑))の方が強いだろ?」
「いや彼らは数が多し、背丈が低いしね。だからこれを渡そうと思う」
トヨヒサルスは短い木の枝に、湾曲した金属のついた道具を見せた。
「そいつはなんだ?」
「これは鎌だ。これを使えば草を効率よく刈る事ができる。これでポーションの材料となる薬草を採ってきてもらおう」
「もちろん半分分けてやるんだな?」
「当然君達オークにも譲ってあげるさ」
トヨヒサルスはオークに笑って答える。マイルズが言うに、これは『営業スマイル』というものらしい。




